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第15話(しずく)
「茶碗と箸、好きなやつ選んで」
と、食器売り場で祈織さんは言った
『ええ、じゃあー、』
と、濃い青いお茶碗を選ぶ
祈織さんのお茶碗の色は白いやつだったし
ちょうどいいと思った
『祈織さんって白好きなの?』
「いや別に。俺のじゃねえし」
『は?祈織さんのじゃない?なんで?』
「前の家の、使ってないやつ持ってきた」
『へえ、』
前の家の、使ってないやつ?
なにそれ、
実家とかから使ってないやつ持ってきたって事なのかな
『ねえ、祈織さんのお茶碗も買お』
「え、別にいらない」
『なんで?買おうよ、ちゃんとご飯食べるように。何色が好き?』
「ええ、なんでもいいよ。お前選んで」
『なんでもいいの?じゃああ、』
どれにしようかな、
『これは?』
と、白に水彩画みたいな色で柄が描かれた物を選ぶ
「なんでもいいって」
『じゃあこれにしよ』
と、お茶碗、
それに箸とかをカゴに入れ
あとマグカップももってレジに向かった
「よし、枕」
と、祈織さんは気合を入れて寝具のフロアに向かう
『枕、持ってるじゃん。買い替え?』
「いい加減やめようかなって」
『え?』
なにが?抱き枕使うこと?
大人なのに抱きついて寝ること?
と、思ったのに
祈織さんは結局抱き枕コーナーを見ていて
抱き枕、やめる気ないじゃん
単純に買い替えだろうか
ふかふか、と見本品を触りまくって
『どれにすんの?』
「これかこれ」
と、2択に絞ったらしい
柔らかめが好きなのか
柔らかいモチモチ触感のやつ
形が真ん中の凹んだ楕円形みたいなやつと
蛇みたいにニョロニョロしてる奴
今祈織さんが使ってるのは
4連の串団子みたいなやつだ
「んんん、」
こんなに真剣に迷う祈織さん、
初めて見た
「よし。こっちにしよ」
と、楕円形の方を選び札を持って
会計を済ませると
そのまま商品は郵送じゃなくて持ち帰りを選ぶ
「帰ろ、しずく」
『祈織さん抱き枕じゃないと寝れないの?』
「……いや、別に」
と、俺から目を逸らしながらいう
『俺の事、抱き枕にしてもいいのに』
「…たまにならしてやるよ」
と、どうやらしてくれるらしい事を意外に思いつつ車の後部座席に枕を積み込み
家に向かう
出発が遅かったから
もう外は暗くなっていて
祈織さんのお休みが終わってしまうな、と思うけど、せっかくのお休みにお出かけできて満足だ
祈織さんは俺の方を見てなくて
真っ直ぐ前を見て運転してたけど
なんていうか、
今日の祈織さんの横顔
いつもより寂しそうに感じた
あんなに、枕買って喜んでいたのにな
この人はちょっと不思議すぎて
気になって仕方がなかった
『祈織さんって何歳なの?』
「今更かよ」
『いいじゃん、気になって』
「…29だけど」
そうなんだ
俺よりは上だと思ってはいたけど
『へえ、祈織さんって年齢不詳だよね』
「まあ…そんな見た目変わってねえし、ここ5年くらい。身長は伸びたけど」
『そうなの?俺ぐらいの時何センチだった?』
「180手前くらい?そんな覚えてねえけど」
『ふうん、俺も伸びるかな』
「伸びねえんじゃない」
『なんで!』
まぁ、そんな低い方ではないけど…
成人男性の平均くらいだし
祈織さんが漏らしてたのって、何年前なんだろ
この、今の見た目の祈織さんが
おもらしするなんて
想像できないけど
ものすごくえろそう
『この前ね』
「なに、」
『あの、ガタイいいおっさんが変なお茶飲ませた時』
「うん、」
『おれ、帰りの車の中で我慢できなくなっちゃって、しょうがないからおむつ履いてしたんだよね』
「なんのカミングアウトだよ」
『いや、なんとなく』
「おっさん、なんか言ってた?」
『よく覚えてねえけど、なんか頑張ったな的な』
「あいつ変態だから、褒めるんだよ、漏らすと」
『ふうん』
変態なんだ、あのおっさん
まぁ、そうだろうな
と、そこまで考えて
漏らした直前におっさんとした会話を思い出した
『祈織さんって、ネコなの?』
「…は、?」
『いや、おっさんがなんかそんなようなこと言ってたような。犬なのにネコって』
「…もう、犬じゃねえし。ネコでもねえよ」
『そうなんだ、』
じゃああのおっさん適当言ってたんだな
俺の事からかっただけか、と納得して
視線を前に戻した
だいたい、あんなかっこいいちんこ持ってる祈織さんが、ネコのはずないのだ
いや、もしそうだとしたら
俺の童貞貰って欲しいくらいには
最近祈織さんの色気にベタ惚れだけれども
祈織さん、見た目えっちだし、と
横の祈織さんをみると
真剣に運転する横顔に
きゅ、と閉じられた薄い唇が目に入る
そして、
その唇が薄く開き
ふぅ、と小さく息を漏らした
「しずく、だめだ」
『え、?』
「道、混んでる。しばらく進めなそうだけど。おしっこ大丈夫?もしちょっとでも行きたかったらそこのコンビニ寄るけど」
『あ、だ、大丈夫。店出る前行ってきたし。飲み物飲んでないから』
「そう」
と、再び運転に集中をしていて
動かない車に飽きたのか片手でハンドルを持って
もう片方の手でシャツのボタンをひとつ開けた
『あ、あつい?』
「んー、ちょっとだけ」
と、言うけど
ボタンを開けたせいでしっとりとした首筋が露になり
おれの体温まで上昇させる
あれ、この人、えろすぎない?
そんなこと考えたのがいけなかった
祈織さんの一挙一動に
おれの下半身が
むず、むず、と疼き
ちょっとだけ、
勃っちゃった…
スウェットなんて履いているから
テントを張る中心部分は誤魔化しようが無くて
祈織さんが運転して前を見てなかったらきっとバレてしまっているだろう
恥ずかしいから
さりげなく手を中心に持っていって隠す
はやく家ついてくれないかな、トイレとかで抜いちゃいたい
それよりなにより、祈織さんと2人っきりで家にいる時より距離の近いこの空間がいまのおれにはつらすぎる
車は辛うじてのろのろと進んでいるが
進んだり、止まったり
進んだと思ったら信号で止まっちゃったりを繰り返していた
むずむずする、思いっきり擦りたい
扱きたい。早く家に帰りたい
かす、とバレないような少しだけ
先っぽを掠めてどうにかやり過ごす
けど、どんどん辛くなっていって
少しずつ刺激を強めてしまうもんだから
さっきまでは半勃ちくらいだったのに
今はもう完勃ち、フル勃起になっていた
ちょっとだけ、だけ、ちょっとだけ擦っちゃおうか、と祈織さんにバレていないか
確認しそろ、と手を伸ばした時だ
ぱし、とその手を捕まえられてしまう
「なに、おしっこ?」
と、信号で止まったタイミングで祈織さんがこっちを見た
そして、見られてしまった
てを掴まれてるせいで
隠せなかったおれの中心を
『おしっこじゃ、ないです…』
「なんで勃ってんの?」
『えっと、あので …興奮しちゃって』
「いや、意味わかんね」
と、言ったけどすぐに信号が青になったから祈織さんは前を向いて運転に戻る
『ごめんなさい…』
と、勝手に祈織さんに興奮してごめんなさいの意味を込めて謝った
相変わらず車は進まなくて
逃げられないこの空間がつらい
運悪く完全に車は止まってしまった
早くおさまれ、おれの小宇宙
と、馬鹿なことを考えていても収まらなくて
ふるふる、とテントを張った俺の中心は車のエンジンの振動に合わせて震えていた
「……進まねえ」
と、ポツリと祈織さんが漏らす
『そ、そうですね、』
祈織さんも、こんな勃起やろうと密室で2人っきりなんて嫌だろうな、と思いつつ遠くを見ていたときだ
さわ、と祈織さんの手が
俺の昂りの頂点を撫でる
『え!』
「うるさ」
『だ、な、なんで』
「気になんだろ。そんなフル勃起されてたら」
『そ、それは、』
祈織さんは完全に暇を持て余していたようだ
前を向いたまま
くるくると手を動かして
スウェット越しに俺の物を撫でる
そしてそのままぎゅ、とつかみ
上下に擦られる
『っ!ひっ、ぁっ、っ』
まさか、祈織さんにこんなことしてもらえるなんて
思っても見なかったおれは
歓喜と、待ち望んでいた刺激に
ふるふる、と震えて小さく声を漏らしてしまう
『い、いおりさん、』
「気持ちいいの?」
ぐりぐりと、先っぽを擦られると
パンツの中で
じわ、と先走りが零れて
パンツが湿ったのがわかる
もっと、と、思うのに
祈織さんは運転しているから俺のを弄るのが疎かで、それが焦らされているみたいで辛くてもっと刺激が欲しくて
ずる、とスウェットを下ろすと
先っぽのところがじわりと濡れたパンツが顔を出す
本当は直接触って欲しかったけど
嫌かもしれない
ちょっとだけ遠慮をして
そのまま腰を揺らし祈織さんの手に擦り付ける
『っ、はぁ、っん、』
気持ちいい、祈織さんのさんの手に
おれのが、
ちょっとだけのつもりだったのに
腰が止められなくなって
シートベルトをしているからそんなに激しくは動けないけど
祈織さんの手ごと
自分の手で握りこんで
ゴシゴシと擦る
パンツの中で
くちゅくちゅと音が鳴っている
先走りの汁が、いっぱいでていて
履いたままのパンツも
先っぽか出ている汁でシミを大きくし
ちょっと糸を引くくらいトロトロしてきてしまう
『きもち、ぁ、ぁ、あっいお、りさんっ、きもち、い』
すると、今までされるがままだった祈織さんの手が意志を持って動き出し
しゅりしゅりと先っぽを親指で擦って
ぐ、と先っぽの穴に爪を立てた
すると、ぞくぞくぞくっとした物が背中から腰を走って
『ひゃぁ、っ、あっあっそれ!それ、だめぇっぁあっあっんんん』
急な強い刺激におれは耐えられなくて
ビクッと、背筋を反らせ
どぴゅどひゅ、とパンツの中に
白い液体を吐き出してしまった
でちゃった、
気持ちいい、イッちゃった
強烈な刺激に
頭が真っ白になり
ビクビクと身体が震えてしまう
「つむぎ、…いっちゃったね」
と、祈織さんはふわりと笑った
あれ、俺の、名前
その言葉を聞いたせいか
ぴゅくっとまだ残っていた精液が少量だけ飛び出した
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