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第24話(しずく)
「今日の人新規の人なんだよね」
と、例のごとく
車でお客様の説明を受けていた
「んで、指名」
『え?新規の人が俺を?なんで?』
「紹介だからかな、宮城様の」
『ああ、お兄ちゃん』
「そうそう、で、基本の2時間コースでオプション無し。新規の人は基本コースだけだから。最初は」
『そうなんだ』
なんか指名って緊張しちゃうな、
しかも初めての人だし
「結構若い子だったよ。多分おれより若い。お前とそんな変わんねえんじゃねえの?」
『ええ?そうなの?』
歳近い人に、おもらし見られるのって
なんか宮城様みたいに甘やかしてくれる人より恥ずかしい気がする、
子供扱いしてないというか…
「シチュエーション、呼び方は特に希望なし、まぁもしかしたらちょっと体験して見たいってだけかもな。もしくは自分がゲイなのか確かめたいくらいな感じ」
『えええ、そんな』
だったらもうちょっとライトな所から行って欲しいもんだな
「しずく、まもなく着くけど今おしっこは?」
『え、あー、…びっくりするぐらいしたくない』
朝、
オレンジジュースとコーヒー飲んじゃったから家出る直前に漏らしかけて
パンツ汚しちゃって変えてきたんだよ…
「えええ、どうすんの」
と、祈織さんはすぐさまコンビニに入った
そして、車で待っていると
缶コーヒーに
紙パックのレモンティ
ペットボトルの緑茶
水
と、色々買ってきてくれた
「のんで」
『全然?』
「飲めるだけ」
と、言われて飲みやすそうな
レモンティーからストローを刺す
俺が飲んでいるあいだ
祈織さんは電子タバコを吸いながら待っていた
『ねえ、全部飲んだらお腹ちゃぷちゃぷになる』
「家から直接来たからやべえお茶とか薬とか持ってねえんだよ、今」
いや、やべえお茶とか薬とかあんまり飲みたくないけど
「お腹痛くならないだけ飲みな。余ったら別に俺も飲むし」
『祈織さん待ってる間おしっこしたくなっちゃうよ』
「いや、俺は普通にトイレ行くし」
『ふうん』
「おむつつんであるし、一応」
『えええ、じゃあ俺が仕事してるあいだトイレ行かないで待ってて』
「なんで、俺に漏らしてほしいの?」
『まあ、その気持ちはある』
「変態かよ。ドMのくせに」
『どえむじゃないよ!』
「俺のちんぽで突かれていってたじゃん」
『……覚えてるの!』
「覚えてるけど」
『なんで!寝ぼけてたんじゃないの?』
「いや、いったらさすがに起きるだろ」
うっそだー、祈織さん
今回のことしか覚えてないくせに!
『まあいいや』
「なんか気に食わね」
と、祈織さんはおれが飲まなかった水を開けて1口飲んでボトルホルダーに置いた
なんだよ、飲まないじゃん
そして、ホテルに着いてから
祈織さんは思い出したようにいう
「あ、今日の人の名前、諏訪さんな」
『しゅわさん』
「すわ」
『すあしゃん』
「すわさん」
『ふわさん』
「お前ばかなの」
『馬鹿じゃなくてむずかしいの、しゅわさん』
「諏訪さんな。噛むなよ」
『んんん、頑張る』
ホテルの部屋に入ると
何度か苗字を呼んでみるけどイマイチ上手く発音出来なかった
おれはこの苗字が苦手だった
さ行が苦手なのかな?
さ行が、挟んでるから難しいのかな
友人にも、同じ苗字の人がいる
だから、おれはその友人の名前を滅多に呼ばない
そして
ついに
ピンポンと、チャイムがなり
どん人かな
名前うまく言えるかなってドキドキしながら
ドアを開け開ける
『こんにちは!レイニーカンパニーのしずくです。えっと、しゅわさゃ、……あさぎ!?』
「おお。やっぱりお前か」
と、ドアを開けたら現れたのは
おれが最も発音出来ない名前の人
諏訪浅葱、
おれの、
大学の友人だった
「入るけどいい?」
『え、なんで?』
「いや、こっちのセリフだけど」
とりあえずすわる?とソファに並んで座って
『なんか飲む?お茶かコーヒーとか』
「入れてくれんの?じゃあコーヒー」
と、言われて
とりあえずコーヒーをいれてだしたけど
あさぎ相手なら出さなくてよかったんじゃないかと今更気付く
『なんなの?』
「いや、知り合いがさ、あー、宮城さんだけど。わかるよね」
『うん、その人の紹介でしょ、お前』
「まあ、そうだけどね」
『それで、』
「まぁ宮城さんとは俺が個人的にやってるベンチャー企業の関連の知り合いなんだけどさ」
『あー、うん、そうなんだ』
「いや、俺らゲイじゃん?だから話が合ってさ」
『……そうなんだ、』
「それで聞いたんだよな、なんかイロモノの風俗にハマってるって」
『…まぁ、そうだよね?』
「それで、風俗かよって思ったんだけどまぁ概要はお前の方が詳しいと思うけどさ…接触とかはなしっていうし。なにより、おもらしって」
と、言われて
顔が熱くなったら
友人に、
人伝いとはいえ
おもらしをしている事がバレてしまった
「それでさ、お前この前学校でほぼ漏らしたじゃん」
『いや!あれ漏らしてねえし!』
こんな仕事してるから
学校であんなことになって
迷惑かけることになったんだって
怒られるかも
そろ、っと友人くんの顔を見る
『…それで、』
怒りにきたの?
わざわざ、
おれのこと、指名してまで
「それでさ、この前のお前見て…悪くねえなって思ったんだよね」
『………は?』
「ほぼ漏らしてるお前みて、悪くねえなって。だから俺もそのおもらし専門風俗ってのに興味が湧いてさ…だから紹介してもらって会員専用ページ見せてもらったらさ、お前がいたから」
『いやいやいやいや、その流れで指名すんのっておかしいでしょ!いや、ふつう、他の子にしない?おれら友達じゃん。友達漏らしてるところとか普通みたくねえじゃん!』
「いや、俺はお前が漏らしてる所、見てみたい」
『……やだ!絶対漏らさないからな!』
漏らすわけない、
なんで、
友人の目の前で漏らさなきゃいけないんだ
今日の給料が貰えなかったとしても
ぜったい漏らさないって誓った
そうだ、そんな羞恥ぷれいできるんわけない
ふんっと腕を組んでそっぽを向いた
きゅ、と少しだけ
膀胱の辺りに違和感を感じたのは
気付かないふりをした
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