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第36話(祈織)

「げ、」 「おいシバ。俺に会う度にその反応やめろ」 「だって」 「ちょうど良かった。今日飯行こうぜ」 「なんで」 「別に理由なんてねえぞ」 と、終わったら迎えに行く、と言い残し 勝手に決めてどっかに行ってしまった 自分勝手なやつ 適当なところで あいつが来る前に帰ろうと思っていたのに 送迎終わりの所で捕まって 飯を食いに連れてかれるから なんか高いもの食わせてもらおう、と諦め 大人しく着いて行った 「何食いたい?」 「高いもの」 「んだよ、そのリクエスト。なに?寿司と肉どっちがいい」 「寿司」 実際寿司なんて、べつに 高くなくていい あのお皿入れるとガチャガチャができるチェーン店も楽しいし気楽だし 食べ物にはそんなにこだわりは無い まぁおいしいもの食べたらちゃんとおいしいとも思うけど 「回ってるのと回ってないのどっちがいい」 「回ってないの」 と、気楽じゃない方をリクエストすると すんなりそっちのほうに連れていってくれる 「シバ、あのガキの事どうしたの?」 「どう?べつにどうも何もしてないけど」 「好きって言われたんだろ」 「うん、だから?」 「だからって事ないだろ、どうすんの?付き合うの?」 「付き合うって、何すんの?」 「そりゃ、デートしたりエロい事したり」 なんだよ、そんなの 「おれ、べつにお前と付き合ってなかったけどエロい事してたじゃん」 「……そういうこと言うなって」 「男同士なんだし、付き合ってどうすればいいのかもわかんない。今だって普通に飯食いに行ったり買い物行ったりもするし、まぁ、溜まればえろいことだってする」 「してんの、えろいこと」 「まぁ、半分くらい抱いたけど」 「なんだよ、半分って」 「…今の論点そこじゃないだろ。付き合わなくてもできるじゃん、そんな事…それで男同士だから結婚するわけでもねえし。同棲っていうのであれば、今だって一緒に住んでる」 「シバ。じゃあ付き合うってなんだと思う?」 「なんだよ、それ」 知らない 知らないから、紬のことだって 確信的な言葉は避けてるのに、 「普通は付き合ってなきゃ、えろいことはしちゃいけねえんだよ」 「なんだよ、今更。お前がそういう風におれのこと育てたんだろ」 「……そんなつもりねえのにな」 なんだよ、それ お前がおれに全部教えたんだろ、えろいこと キスの仕方も フェラの仕方もされて頭が真っ白になるのも 乳首の快感も 後ろの気持ちよさも 「じゃあおれもうお前とえろいことしない」 と、視線を逸らして窓の方に向いた 「着いたら起こして」 と、窓に寄りかかって目を閉じた しかし、 直ぐに2,3分で車が止まり 「着いた?」 と、目を開けると 真っ暗な注射で 回らないお寿司の駐車場じゃない事だけはわかる 「なに、どこ」 「シバ、来い」 と、引きずられるように助手席から下ろされ 「なに、」 と、腕を引かれ連れてかれると 人がいない受付で部屋を選ぶから ここがラブホテルということだけはわかった 「なんだよ、いきなり」 と、俺の事を無視して 適当に部屋を選んで 俺の腕を引きながら部屋に向かう 「なぁ、痛い、放せって。なんだよ、寿司、食いに行くんじゃないの?おれもう寿司の気分なんだけど。なぁ、無視すんなって」 しかし、おれを無視したまま部屋に入り 投げるようにおれの体をベッドに押し倒す 「痛ってえ!なんだよ!おいっんむっ、んん!」 文句を言いたいのに 無理やり唇で唇を塞がれて 息ができなくて ドンドンと胸を叩いて 突き放そうとしても その手を捕らえられてより深く口付けてくる なんだよ、もうやだっと 涙が滲んでしまう 「んんんっ、ゃ、んん、ゃ、…だ、」 と、息継ぎのタイミングで拒否をするのに やめてくれなくて 滲んだ涙が流れてしまう、 くそ、泣きたくなんかないのに 「…っはぁ、」 と、ため息と一緒にようやく唇が離れた そこでようやく息ができて はぁはぁ、とみっともなく息が切れてしまった 見下ろされてるのが 気に食わない、 す、と伸びてきた手を避けようとするけど その手は親指でおれの涙を拭った 「祈織、」 おれの名前を呼ぶな、お前が 「な、んだよ、なんなんだよ」 「お前は俺から離れらんねえよ」 と、さっきと違う 乱暴じゃないキスがまたおれの唇を塞ぎ ちゅ、ちゅ、と更に 頬や瞼、そして鼻や耳 首筋に温もりが降り注ぐ おれの知ってるやつだ、 おれを甘やかすキスだろ、これ 「や、だ…なぁ、んっ、やだ、」 「嫌じゃねえだろ?」 首筋を舐められ、 ワイシャツのボタンが開けられていき 服が脱がされる 優しく胸を撫でられ さわさわと掠るだけだった指が ゆっくりと乳首を撫でる これからいっぱい気持ちよくしてくれる事を知っている体は その焦れったすぎる感覚に ぞわぞわが止まらない 「んっっ、んん、ぐす、っ、やだって、いってんじゃん、なぁ…」 情けなく 涙声になってしまう こんな情けないところ 見せたくないのに 「嫌じゃねえだろ?」 そういうと、 ちゅ、と1度軽く俺の乳首にキスし ジュルジュル、と大きな音を立てて乳首を吸われる 口の中で にゅるにゅるする舌が俺の乳首の周りを舐め 擦られて潰されて吸われる 「ひっ、ぁっああ」 それだけで背筋がビクビクしてしまって 腰が浮いてしまう 「ほら、気持ちいいだろ?」 と、反対側の乳首は指で コリコリとひっきりなしに擦られ 上手く息も出来なくて 喉がヒクッとなった 「や、っはぁっっ、んんん、」 「シバ、気持ちいいか?」 と、顔を上げて聞いてくるから むかついて首をぶんぶんと横に振る 「気持ちよくねえの?」 と、また乳首を咥えられ カリ、と歯を立てられる 「ひぅっ、んんっ」 情けない声が、漏れてしまう 嫌なのに、 気持ちよすぎて 頭がおかしくなる こいつに触られると おれは思考回路が回らなくなって どんどん馬鹿になってしまう 「やめ、やだ、…やめろ、っ、」 「好きだろ?お前、」 「すきじゃ、ないっっん、ん、んんっ」 ちゅぱちゅぱ音を立てられて吸われて 舌でグリグリと押しつぶされると 腰がビクビクビクッと痙攣をした 「やっ、ぁっぁあ」 目の前が真っ白になってしまう そして全身を襲う脱力感 「シバ、えらいなあ。乳首だけで上手にイけたな」 と、俺の頬を撫でてくる手 「おれ……すっげえ、すき。もっとやって、」 「当たり前だろ」

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