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第45話(祈織)

昨日は急遽休みにしてしまったから 早めに出社していた つむはもう大体熱は下がったが ちょっとだけ微熱が残っていたのと まだ眠いらしいから今日は学校を休むけど もう大丈夫という事だったから 今日はつむをおいて出社した 「あ、シバくんおはよう。今日早いね」 「ヤナギさんおはようございます。昨日急にお休みもらったので」 「体調悪かったの?大丈夫?」 「あ、俺じゃなくて今一緒に住んでんのがちょっと体調崩しちゃっただけです。あいつももう大丈夫なんですけど」 「あー、そうなんだ。しずくくんだよね。大変だったねー」 「いやいや、急にお休みもらってすみませんでした」 「ううん。いいよー。シバくん休み足りてないし休みたかったらまた言ってね」 「ありがとうございます」 「っていうかなんだかんだシバくんも社長と似てるよね」 「何がですか?」 「いや、社長も滅多に休まないのにシバくんが体調崩したらすぐ休んだからさ。シバくんむかし結構体弱かったじゃん」 「そうでしたっけ?」 「季節の変わり目とかよく体調崩してたじゃん。最近はそんなことなかったけどね」 たしかに、 この前久々に熱出した時 久々だったからぶっ倒れたけど 「あ、じゃあオレこれから送迎だからまたね」 「はい、また」 と、ヤナギさんと別れ仕事に向かう そういえば、おれが熱出した時、 いつもあいつ居たな 昨日は真似して つむぎの看病してみたけど まぁ、うまくできたかはわかんないけど さっさと昨日の分の仕事しよ、と 考えるのはやめて 昨日溜めていたぶんの仕事に入った ◇◆ がくっ、と首が後ろに倒れて目を覚ます やべ、寝てた ゆっくり目を開けると 「うわ」 「んだよ、その反応」 と、逆さまの視界に映ったのは 逆さまのあいつの姿で なんで誰も起こしてくんねえんだ、と 周りを見回しても他に誰も居なくて 時間的にみんな昼休憩に行ってるとわかった 起き上がって ぐう、と伸びをして 首をぐきぐき鳴らす 変な寝方したから疲れた つかなんでねちゃったんだ 「昨日休んだって?体調悪いのか?大丈夫?」 「いや、ヤナギさんにも言ったけど。おれじゃないから。うちの子が熱出しただけ」 「そうだったのか。大丈夫か?」 「へいき。もう大体元気になってたし」 「そうか」 と、溜息を吐いた 「心配しすぎ」 「心配もすんだろ。お前この前体調崩してフラフラになってたじゃん」 「……久しぶりだったからわかんなかったんだよ、」 「無理すんなよ。お前あんまり休まねえから」 「いいじゃん。今元気だし」 「元気ならいいんだけどよ」 飯食いに行こうかな、と 立ち上がった そういえば、 「なぁ、」 「なんだ?」 「お前、休んでたの?」 「は?」 「おれが、体調崩した時。会社休んでたの?」 「なんだ、今更。そりゃ休むだろ」 「なんで?」 「なんでも何も心配だろ」 「そうなの?」 「そうだろ。だからお前も昨日休んだんだろ」 いや、おれは お前の真似しただけだけど 心配っていったら心配だけど あいつも子供じゃないし 別に熱出たくらい自分で対処もできるだろうし おれだって、 別に熱出ても自分でどうにかできる、多分 まぁ、よく考えたら 体調崩した時に1人でいた事ってあんまりないかも 「おれって、愛されてんの?」 「今更かよ」 まぁ、ペットとしてだろうけど 「シバ、これから飯?」 「うん」 「食いいくか?ナポリタン」 「あー、クリームソーダのとこ?」 「あぁ、そうだな」 「いく、食う、クリームソーダ」 「クリームソーダは飲み物だろ」 アイスは食うじゃん、と思いつつ 携帯だけポケットに突っ込んだ 久しぶりにナポリタンも食いたい 「お前も今から飯なの?」 「いや、俺は帰ろうと思ってたんだがな。ヤナギからお前が寝てるって聞いたから」 「仕事中に寝て悪かったな」 「本当だよ、仕事中に寝んな」 「だって」 「まあいいや、行くか」 と、2人で歩き始めた 昔から2人で歩く事は多かった、 前は俺よりだいぶ大きく感じた身長も 今はそんな変わらない、 単純に俺の身長が伸びたからだけど 1時間後に戻ろうと エレベーターに乗って 携帯で時計を確認する すると 「あ、」 と、前から声が聞こえて なんだ、と顔をあげる すると ちゅ、とおでこに触れた 柔らかい感触 「は、」 なんだ、いきなり 文句を言おうとする俺の 両頬に手が添えられる そして、目の前で ニヤリと笑い ちゅ、ちゅ、ちゅ と、更に 瞼、 頬 鼻の頭にキスを落とされる 「な、なんだよいきなり」 触れるだけのキスなのに きゅん、と腹の奥が 疼く感覚 「べつに、誰もいなかったから」 「や、めろよ、こんな所で」 すぐに手が離れていき 唇にキスをくれない チン、と音をさせ エレベーターは1階に到着してドアが開いた おれをおいて スタスタと先に降りていくあいつ 「なぁ、」 「シバ、閉まるぞ」 と、言われ 一歩踏み出すけど 腹の奥がじくじくする 歩きにくい、 自分の中心に熱が集まっていくのがわかる ちょっと触れただけなのに、 ぴくぴく、と下でスーツの布地を押し上げ始めた 「なぁ、」 「シバ、先に食欲満たしに行くか?」 「ちがう、」 「じゃあこっちな」 と、あいつは ナポリタンの喫茶店とちがう方面に向かって歩き出した わざとじゃん、 あのキスしたら おれが甘やかされたくなるのわかってて わざとしたんじゃん 「お前ほんとタチ悪いな」 「お互い様だろ」 と、1歩前を歩く男の背中を ジャケットを脱いで前を隠しながら追った

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