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第57話(つむぎ)

家を決めるために 不動産屋さんに通って 案外すぐに家は決まった 学校に行きやすくて、 就職先まだ決まってないけどとりあえずアクセスいい所、 自分でも家賃を払えるところ 家賃払うためにあたらしく バイトも探さなきゃなー いっぱいおもらししてお金貯めたって言っても 収入がなきゃ結局また道端で野垂れるし でも、ここを出ていくのがちょっと現実的になって寂しくなる そしてあの言葉以降 祈織さんは一切おれに触ってこないし 触らせてくれない おれももうバイトに行ってなくて 祈織さんは有給消化と 会社にもほぼ行ってない だから学校から帰ると祈織さんが常にいて ぐでえ、とテレビを見ていたり パソコンを見ていたり アマプラしてたりしてると たまにどこかにふらっと行ったりはしてるけど 『祈織さん、ただいま』 「おかえり、つむ」 『ただいま、今日家決めてきたよ』 「あー、そうなんだ。いつでてくの?」 『詳しい日にちはまだ決めてないけど、再来週あたり』 「そっかー、寂しくなるね」 『祈織さん寂しいの?』 「そりゃそうでしょ。また1人になるんだから」 『そ、そうなんだ』 と、ちょっとうれしくなる 「なに、つむ?嬉しそうな顔してる」 『そんな事ないけど、』 「そう?」 そんな事言ってくれるなら おれずっと祈織さんと一緒にいたい、と 思っちゃうけど それじゃダメだ、と頭を振った 「んんん、」 と、祈織さんはソファに寝て クッションに抱きついていた 『祈織さん?』 「ぐずってんだけど?なんで甘やかさないの?」 『あ、うん。甘やかす』 と、どうすればいいかわかんないけど とりあえず祈織さんを膝枕して よしよし、と頭を撫でてあげると 俺の腰に抱きつき ぐりぐりと頭を擦り付けてくる うわぁ、祈織さんかわいい甘えてくるう あれ以来、 祈織さんとえっちな事してないけど そのかわり、こういうふうに 祈織さんはたまに甘えてきてくれて おれはそれだけでめちゃくちゃ幸せだった ……まぁ、 祈織さんに抱きつかれてぐりぐりされると幸せすぎておれ勃っちゃうんだけど 「つむ、行かないで。おれ寂しいから」 『えっと……おれ、出てくよ』 「なんで、」 『えっと、それは』 「嘘だよ、つむ。ふろ入ってくる」 と、祈織さんは起き上がって お風呂に向かおうと立ち上がった そんなこと言われたら、 おれ、この家 出たく無くなっちゃうじゃん… と、お風呂に行ったと思った祈織さんは 何故か台所でストップした 水でも飲むのかなって思ったのに 冷蔵庫とか色々バタバタと見始めた 『なに?何か捜し物?』 「料理しようかなって」 『え、なんで、こんな時間に?つか祈織さんが料理!?』 時刻は夜の10時過ぎ もうおれは夕飯だって食べてきたし そもそも 祈織さんが料理とか 「お前失礼だよね。おれだって料理くらいするじゃん」 『そ、そうだっけ』 お米炊いたりとかの事かな? 「それにおれ、夕方くらいまで寝てたんだよね、今日」 と、材料を色んなところから引っ張り出す祈織さん そっかー、祈織さん最近ニートだから 昼夜逆転生活してるんだよね 好きな時に寝て好きな時に起きて… 「つむはお風呂入ってていいよ。おれ一人で作れるし」 『えっと、何作るの?』 「お楽しみ」 と、祈織さんはカレールーを持ちながら言っていた 多分カレー作ってくれんだと思うけど… 祈織さんが、本当に料理出来んのかな… キッチン、ぐちゃぐちゃにならないといいけど ◇◇ お風呂からでると 祈織さんはまだキッチンに立っていた 『お風呂いただきましたー』 「んー、」 『祈織さん、おれなんか手伝おうか』 「やだ、あっちいってろ。お楽しみなんだから」 『えっと、うん』 と、頷くけど 30分くらいおれ風呂入ってたのにまだ何にも炒めたりしてないし人参とかじゃがいも、 冷蔵庫から出てきた姿のままだけど…… 大丈夫かな、とチラチラ様子を伺っていた時だ 「おれ、料理とか基本なんもできないんだけどさ」 『そうなの?』 「これだけは作れるから」 と、祈織さんは作業をしながら話してくれる 『おれが出てくから、つくってくれんの?』 と、聞くと祈織さんはしばらく黙って 「んんっ、ぐすっ、つむぅ、」 と、涙に潤んだ声が聞こえて 思わず顔を上げた 『祈織さん?』 目が赤い、 うるうるしてる 「…つむ、」 ぐすっ、とまた鼻を啜りながらいう 祈織さん、寂しいの、おれがいなくなるの 甘やかさなきゃ、と立ち上がった時だ 「玉ねぎ切ると涙出るのって…っぐす、んん、迷信じゃないんだね、っ」 と、いう祈織さんの手元は 玉ねぎを切っていて 祈織さんは ぐすぐすと涙を流していた 「玉ねぎ切ると本当に泣けるんだ、」 おれ、祈織さん泣いてんの初めて見た 『おれ、玉ねぎ切ってそんな泣いてる人初めて見た』 「んんっ、ぐす、そうなの?」 と、いう祈織さんの泣き顔 どえろいし どストライクなんだけど とりあえず玉ねぎグッジョブ 『えっと、玉ねぎおれ切ろうか?』 「だめ、おれが、やるの、」 と、祈織さんは泣きながら言った 「でも、涙だけ、拭いて。おれの」 と、言われて すぐにティッシュを持って祈織さんの所に駆け寄り 祈織さんの頬に伝う涙を拭く 祈織さん、泣いてる 玉ねぎのせいだけど 「…つむ、ありがとう」 『うん、』 と、少しだけ赤くなった目でおれのことをみた 「あとは大丈夫だから座ってて」 『えっと、うん』 と、祈織さんは あの後も泣きながら玉ねぎをどうにか切っていて 端っこは手が怖いからって多めに避けて どうにか玉ねぎを終えていた おれも心配だけど 祈織さんに言われたとおり ソファで待っていたら いつの間にか 寝てしまった

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