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2 サプライズ

 まだ俺が高校生だから……  だから優吾さんとはキスしかしていない。  俺のことを大事にしたい、もう少し大人になってからでもいい、焦ることはない、これから先は長いんだから……って、焦れて迫ってしまった俺に優吾さんは優しくそう言ったんだ。  あの時は本当に自分が恥ずかしかった。いつも軽いキスだけであしらわれて、からかわれてるんじゃないかってそんな風にも思っていた。全然そんな気ないのに無理に俺と付き合ってるんじゃないかって、そう思ってたけど違った。  大切にされてたんだ。  そうわかってからは、焦ることはなくなった。  ゆっくり二人の時間を育んでいけばいいんだって、そう思っていた。 「公敬君は進路はどうするの?」  突然優吾さんに言われ、口に入れたデザートのシャーベットを慌てて飲み込む。 「あ……俺、就職しようかと思って。その、早くあの家を出たいし。高校行かせてもらっただけありがたいかな。流石に進学したいとは言えないや……」 「そっか。そうだよね」  俺は物心ついた時から父親に育てられていた。普段は優しかったけど酒が入ると人が変わったように暴力的になる。所謂アルコール依存症ってやつだ。父親は俺より体は小さかったけど、大人の力に敵うわけもなく、しょっ中俺は怪我をしていた。そんな俺を見かねて祖父母が俺を引き取ってくれた。その間父親は更生施設へ、祖父はすぐに他界した。今は父親はどうしているかわからない。祖父の葬式にも来なかったんだ。聞いてはいないけど、きっと祖父母とは縁を切ったんだろう。  そんなだから、優しくて俺によくしてくれる祖母には何も不満はないけど、一刻も早く自立したいと思うようになった。自立が今俺にできる最初の恩返しだと思うから。 「そろそろ食べ終わったかな?」 「ん?」  頬杖をついて何かを言いたげに俺を見つめる優吾さん。ジッと見つめられるといまだにドキドキしてしまう。何だろう? 優吾さんも何だかそわそわしているように見えて落ち着かなかった。 「実はさ、部屋とってあるんだ。明日は休みだろ? もう少し俺に付き合ってよ」 「………… 」  驚いて言葉がでなかった。だっていつも子供扱いして早くに家に帰そうとするじゃん。家の人が心配するからって言ってさ。 「え? 泊まるの?……このホテルに? マジで?」 「はは、そうだよ? そんなに驚くようなことじゃないだろ。それに公敬君に大事な話もあるんだ……」  いや、普通に驚くだろ。  優吾さんの真面目な顔。  だからそんな風に見つめられたらドキドキしちゃうんだってば。泊まりでずっと夜も一緒にいるなんて初めての事。緊張しない方がおかしい。 「それじゃ、行こうか」  大事な話って何だろう。凄く気になったけど、そんな事を気付かれないように俺は平静を装って優吾さんの後をついて行った。

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