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10 放課後
放課後晋哉に呼び止められた。
「たまには一緒に帰ろう。どこか寄り道しようぜ」
きっと俺のこと気遣ってくれているのだろう。いつもなら何人かで賑やかに帰っていく晋哉がわざわざ俺に声をかけてくれる。今日は一人になりたかったけど、こうやって友達が心配してくれていると思うと嬉しく思った。
「なあ、もしかして! もしかしなくても! 公敬とどっか寄って帰るの初めてじゃね?」
「まあ俺はバイトの時が多いし……」
晋哉は楽しそうにそう言うけど、俺なんかと一緒にいたってつまらないだろうなって考えてしまう。こんなのと友達になったばっかりに、面倒くさいって思ってるかもしれないな……なんて、どうしたって悪い方に考える。友達になってくれたのは嬉しかったけど、どうにもひねくれて物事を考える俺はあまり素直になれなかった。
「またそれ! つまんなそうな顔。公敬いっつもつまんなそうだよね。一応俺、お前のこと心配してんのよ? 友達なんだからさ。ほら、どっか寄れば気晴らしになるかなって」
俺の顔を覗き込み、ニカっと笑って晋哉がそう言う。「友達」という言葉がこそばゆい。照れ臭くなってしまって晋哉から顔を反らしながら「ありがとう」とお礼を言った。
「喉乾いたし、腹減ってね? そこのファーストフードでなんか食おうぜ」
晋哉に腕を引っ張られ店内に入る。この有無を言わさず強引な感じは嫌いじゃない。俺はオレンジジュースとポテトだけ頼むと、ガヤガヤと騒がしい店内の一番奥の席を確保した。
「あれ? それしか食わねえの?」
後からきた晋哉に座りざまポテトを一本つまみ食いされる。そう言う晋哉のトレーにはポテトのLサイズとバーガーが二個も乗っていた。
「俺部活もやってないのに放課後腹減ってしょうがない。太りそうで心配」
そんな事を言いながらも、また俺のポテトに手を伸ばすから、笑いながらその手を叩いた。
なんかいいな、こういうの……
俺は学校が終われば真っ直ぐ家に帰るかバイトだった。それに優吾さんから連絡が来ないかと、頭の中はそればっかり。元々人見知りの所も手伝って、同級生なんて子どもっぽくてどうせ話も合わない、無理に友達付き合いすることもない、なんて思っていた。一匹狼を気取ってたけど、やっぱりこうやって友達だと言い、構ってもらえたり心配されるのは心地良かった。
「……ありがとな。晋哉のおかげでちょっと気が紛れた」
オレンジジュースをひと口啜り、ちゃんと顔を見て礼を言う。
「だろ? 公敬だってそんな風にいい顔できるんだから、いつも笑ってればいいんだよ」
「意味わかんない……」
晋哉は素直なのか、こういう恥ずかしい事をさらっと言う。俺には絶対真似できないや。
「でもよー、こんな愛想なしのお前に年上の彼女って……どうやって出会えたんだよ。彼女の仕事がなんだか知らねえって凹んでるみたいだったけどさ、気にする事ねえって。付き合ったばっかなんだろ?」
二つ目のバーガーの包みをガサガサと雑に開きながら、晋哉は俺に軽く言う。図星を指されて胸がちくっとしたけど気にする事ないと言ってもらえて、俺は少し気持ちが軽くなった。
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