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17 話ができる友達

「マジかー! 何だそれ! 公敬の彼女、めちゃくちゃ積極的じゃん! 何? お前から告ったんじゃねえのかよ。タジタジだな! 意外すぎて笑える!」  俺の話を聞いていた晋哉が興奮してテーブルを叩いてる。物凄くうるさい…… 「お前ちょっとうるさいよ。あと笑うな」  晋哉が恋バナしろって言うから。馴れ初めを聞きたいって言うから話したのに。  でもこうやって話ができる友達がいてよかった。晋哉は相手は女だと思い込んで聞いてくれてるから、俺はボロを出さないように気をつけて優吾さんとの出会いを思い返しながら沢山話した。  俺の初恋。  一目惚れだと言った優吾さんの真剣な顔……あの時のドキドキが蘇ってくる。  初めて好きになった人。優しくてカッコよくて、自慢したいくらい素敵な恋人。本当のことは言えないけど、俺はこんないい男と付き合ってるんだ! って誰かに言ってみたかったんだ。 「最初のデートでいきなりキスとかどんだけだよ。それなのにエッチしたのがつい最近って……お前よく耐えたな。俺ならきっとキスした次の日にはもうやりたくてしょうがねえよ」  さっきとは打って変わり、声のトーンをだいぶ落としてコソコソと俺に言う。  エッチって言ったって、俺が優吾さんに一方的にイかされただけだけどな。これ言ったらまたうるさそうだから黙っておくことにした。それに「イカされただけ」なんて何だかカッコ悪いし。 「もうさ、四六時中彼女のこと考えてんだろ? しょうがねえよな、付き合いたてってこういうもんだよな。俺も恋人欲しいな」  あれ? そういや晋哉って彼女いたんじゃなかったっけ? そう思い俺は首を傾げる。以前教室で晋哉の取り巻きが「晋哉は今日はデートだから」とか言ってたのを思い出し不思議に思った。でもこれだけ彼女が欲しいと言ってるのだから、きっと別れたんだろう。 「付き合いたてって言っても、もう付き合って半年くらい経つし。まぁあんまり頻繁に会ってないけどさ……」 「だから、あんまり会ってないからじゃねえの? そんなの付き合いたて同然だろう? 俺なら好きなら毎日でも会いてえもん!」  毎日でも……  そっか、卒業したら一緒に住むから毎日会えるんだ。今はこんなでも、同棲したらずっと一緒だ。   嬉しい。  そう思ったらどうしようもなくにやけてしまった。 「何その顔……にやけちゃってキモっ」 「うるさい」  キモっ、なんて言われてしまったけど、晋哉のお陰で本当に落ち込んでた気持ちがどっかに行った。乗り気じゃなかったけど寄り道して良かった。 「話聞いてくれたお礼に今度なんか奢るよ」  調子よくそんな事を言ってしまうくらい俺は機嫌が良かったし、まさかこの後またどん底な気分を味わうなんて思ってもいなかった。  俺にしては珍しく夢中でお喋りをして、十分満足して晋哉と店を出た。もう帰るか、まだ何処かに寄って遊んで行くか、店の前で二人で話していると、俺の視界に優吾さんの姿が飛び込んできた。  道の向こう。  ここから五十メートル程先、信号待ちをしている人の群れの中に優吾さんの姿があった。

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