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20 再会

「優吾のことだろう?」  俺がなかなか切り出せないでいると、橋本さんの方から話してくれた。 「喧嘩でもした? しつこく言い寄られて迷惑してる?」 「………… 」  聞きながら楽しそうな橋本さんに少しイラっとするのをグッと堪える。言い寄られるも何ももう付き合ってるし……うん、俺たちは付き合ってるはずなんだ。 「あのさ、優吾さんて兄妹とかいる?」 「ん? いないよ、あいつひとりっ子だろ。何で?」 「………… 」  橋本さんは俺と優吾さんの関係を知らないのかな。親友らしい間柄に見えたけど、そういう話はしないのかな。でも正直に話してもこの人なら大丈夫な気がしたから、俺は素直に話してみた。 「言い寄られて迷惑っていうか、もう優吾さんに告白されて俺たち付き合ってるんだけどね」 「ウッソ! マジで? いいの? あんな奴で! まさかのお付き合い! いやぁ、優吾やったなおい! そっか、良かった良かった!」  急に橋本さんが大きな声を出すもんだからびっくりした。  やっぱり知らなかったんだ……  でも晋哉みたいな反応じゃなくて良かった。ちょっと橋本さんの言葉に疑問もあったけど、でもなんだか喜んでくれてるっていうのが嬉しくて、祝福されてるような気がして泣けてきてしまった。 「え? 公敬君どうした?……泣いてる?」 「あ……ちょっと……ごめんなさい。色々思い出しちゃって」  そうだよ。晋哉にもこうやって「良かったな」って言ってもらいたかったんだ。あんな風に友達を終わらせてしまうなんて嫌だった。 「公敬君、大丈夫?……会って話すか?」 「うん」  橋本さんが優しかったから、俺は迷わず甘えてしまった。わかる人に話を聞いてもらいたかった。不安な気持ちを和らげてもらいたかったから。  俺は婆ちゃんに置き手紙をし、橋本さんに言われるまま家を出る。待ち合わせの場所は初めて一緒に食事をしたあのお店。橋本さんが予約を入れてくれたらしく、先に俺が到着したけど名前を言ったらすぐに案内された。  一番奥の個室。あの時と同じ部屋。  あの時優吾さんと二人きりになって迫られて、告白をされてキスをしたんだ。  好きだと認めて、自分からキスをした。思い出し恥ずかしくなる。一人先に来てしまって手持ち無沙汰になり、俺は意味もなくメニューを捲った。 「お! 早かったね。ごめんね、待たせちゃった?」  程なくして橋本さんが元気に部屋に入って来た。あの時と全然変わらない優しそうな笑顔。仕事だったのか、スーツ姿だった。そういえばあの時見た優吾さんもスーツ姿だったな。 「わざわざごめん。ありがとう」  橋本さんはそんなの気にすんなって笑い飛ばしてくれる。この笑顔にちょっとだけ救われたような気がした。  初めて食事をした時のように橋本さんが料理を注文してくれる。勿論、俺の食べたいものもちゃんと聞いてくれたけど、俺は食事なんてする気分じゃなかったから適当でいいと言い、橋本さんに全部任せた。

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