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21 橋本さん
「いや驚いたよ。公敬君まさか優吾と付き合うなんてな。なんかあったんだろ? 愚痴か?」
「………… 」
何から話したらいいのだろう。俺は考えながら昨日あったことを橋本さんに話した。
「俺、優吾さんの恋人だと思ってたんだけど……実は優吾さんの事、何にも知らなくて。優吾さんがひとりっ子だってことも知らなかったし、何の仕事をしてるのかも俺は知らない。俺から連絡するのも気が引けちゃって出来ねえし。こんなんで付き合ってるって言えるのかな」
橋本さんは俺の話をにこにこしながら黙って聞いてくれている。晋哉に話した時は優吾さんを男だとわからないような言い方をしていたから半分は作り話な気持ちで喋っていたけど、橋本さんには本当のことを、今の俺の気持ちを包み隠さず話している事に気が付いて、段々恥ずかしくなってしまった。
「……うん、公敬君やっぱり可愛いね。そういうのは俺が教えてあげてもいいのかもしれないけどさ、自分で聞いたらいいと思うよ。別にあいつ、君に隠してるわけじゃないしね。それに人に言えないような仕事してるわけじゃないし、そんなの気軽に聞いちゃいなよ。あいつ忙しいからさ、そこまで気がまわんないのかも。そういうとこあるからなぁ優吾は。ちょっと気が利かないとこあんだよごめんな」
何で橋本さんが謝るんだろう……とぼんやり思う。でも話が聞けてよかった。もう少し自信持っていいんだよな。
「そうだよね。うん、ありがとう。ちょっとスッキリした。なんかスッキリしたら腹減ってきた」
「はは……スッキリちょっとだけかよ? でも公敬君笑うともっと可愛いね。遠慮せずいっぱい食べな」
橋本さんに話せたことが嬉しくて、ちょっとだけど自信もついて食欲も戻った俺は勧められるままたくさん食べた。
「今日はありがとうございました」
すっかり満腹になり、食事も終えて俺と橋本さんは店を出る。身も心も満足した俺はあんなに落ち込んでたのがバカバカしく思うくらい回復していた。
「そんなかしこまっちゃって。ゲンキンなやつだな」
橋本さんは笑いながらそう言うと、ポケットから車のキーを取り出し顔の前でプラプラさせた。
「もうちょっと優吾との話も聞きたいし、ちょっとドライブがてら走らない? 送ってあげるよ」
俺はそれを聞いて嬉しく思ってしまった。だってこれから電車で帰るの億劫だし、それに優吾さんのこともっと聞いてもらいたかったから。俺の知らない優吾さんのことももっと聞けるかと思って、迷うことなく頷いた。
「あ……あれ? でもお酒……」
「ん? 飲んでないよ。最初っから車で来たしあれはノンアルコール」
「そっか、ならお願いします! 俺ももうちょっと話したかったから嬉しい。ありがとう」
橋本さんと俺は、少し離れた駐車場に向かって歩き始めた。
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