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22 ドライブ

「あ、ちょっと待ってな……はいどうぞ」  橋本さんは助手席にあった鞄などの荷物を無造作に後ろの座席に投げ、シートをぽんと軽く叩いた。 「お邪魔しまぁす」  車に乗るのにお邪魔しますってなんか変だよな……って思ったけど橋本さんが笑ってくれたから、まあいいか。  優吾さんもそうだけど、やっぱり車を運転できるのって「大人」だなって思う。俺ももうすぐ免許取れるけどさ、車を買うのはもっとずっと先なんだろうな。 「車、かっこいいね」  橋本さんはまっすぐ前を見て運転している。俺の言葉に橋本さんは「優吾のには負けるけどな」と言ってクスッと笑った。俺は車のことはよくわからないけど、優吾さんのも橋本さんのもどちらもカッコいいと褒めた。でも優吾さんの車と違う仄かなタバコの匂い。  何故だかちょっと緊張した。  しばらく走り、気がついたら山道。辺りは暗く対向車も無い。夢中でお喋りしてたけど、ちょっとドライブにしては景色が寂し過ぎじゃない?  ──どこまで行くのかな? 「ところでドライブってどこまで行くの? どっかあてがあるの?」  俺と優吾さんがあれからどんなデートをしていたのか話していたけど、周りの景色を見て正直不安になってきたから思わず聞いた。それなのに橋本さんは黙ったまま何も言ってくれない。さっきまで俺の話を聞きながら楽しそうに相槌打ったり茶化したりしてたくせに。 「何だよ橋本さん、なんか言ってよ……ねぇ、どこ行くの?」 「………… 」  相変わらず黙りこくってる橋本さんに不安を煽られる。どうしよう……と焦り、窓の外と橋本さんの顔を交互に見てると突然ププッと橋本さんが噴き出した。 「公敬君焦り過ぎ! そんなキョロキョロすんなって……面白いなぁ。ほら、着いたよ」  車が停まる。からかわれてたとわかって安心したけど、何だよ俺、馬鹿にされてんじゃん、ムカつく。 「橋本さんの意地悪!」  そう言って促されるまま車を降りた。こっちにおいでと少し先から橋本さんが手招きしている。辺りは暗くちょっと心細かったので小走りでそこに向かうと、目の前に飛び込んできた景色に思わず息を飲んだ。 「何これ凄え……」  少し開けたこの場所から見下ろせる景色。キラキラと広がる夜景がすごく綺麗でさっきまでの不安な気持ちはすっかりどこかに行ってしまった。 「凄いでしょ! 穴場スポット。ここ優吾に教えてもらったんだよ。デートにオススメだって……」 「へぇ! そうなんだ、優吾さんこういうのもよく知ってるんだね。流石! かっこいいな」  俺はすっかり舞い上がっていて、この時橋本さんに腰に手を回されてることに全く気が付いていなかった。

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