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27 優吾さんの部屋
地下の駐車場から直接エレベーターに乗り込むと、そのままぐんぐんと上がって行く。どこまで上るんだろう? と思っていると、チンと言ってエレベーターは止まった。
「凄え……高い」
俺は階数の表示を見て思わず言葉を零す。優吾さんはそんな俺の肩を優しく抱き寄せ廊下を進んだ。ホテルのような綺麗な絨毯敷きの廊下。足元がふわふわする。前に優吾さんと泊まったあのホテルを思い出し、余計にドキドキしてしまった。
「ここね」
そう言って優吾さんは一番奥の部屋のドアを開けると、俺にスリッパを出してくれた。俺は緊張しながら出されたスリッパを履き、優吾さんの後をついて部屋に入る。リビングのドアを開けた瞬間想像以上の光景が目の前に広がっていて、もう溜息しか出なかった。
壁一面の大きな窓から見える景色。俺でもわかる高価なソファや照明器具。シンプルに纏まったお洒落なインテリア。
ヤバい……かっこいい。
「忙しくって片付けてる余裕無くってさ。散らかってて悪いね」
優吾さんは照れ臭そうにそう言うけど、これのどこが散らかってると言うのだろう。綺麗に片付けた俺の部屋より全然綺麗なんですけど……強いて言えばキッチンに食べ終わった食器とグラスが少しだけ洗われずに置かれているくらい。でもこんなの散らかっているうちに入らない。そしてその出されたままの食器とグラスを見て、それが一人分だと分かりホッとしている自分がいた。
「適当なところに座っててよ。何飲む? ジュースでいいよね」
そんなこと言われたってどこに座ったらいいのわからない。
あのソファ、座っていいの? 俺が座っちゃったら汚れない? 大丈夫? 落ち着きなく部屋をうろつく俺、挙動不審すぎる。外の景色が凄くて思わず窓に手をつきそうになり慌てて下がると優吾さんが背後から抱きしめてくれた。
「どうしたの? 落ち着かない?」
「……優吾さんってさ、もしかして超お金持ち?」
振り返り、真面目に聞いてしまった。言ってから、しまった! どストレート過ぎた! って焦ったけど、優吾さんは吹き出して笑ってくれたからホッとした。
「ううん、超お金持ちじゃないよ。でもちょっと人より余裕はあるかな」
優吾さんは俺を背後からハグしたまま頬にチュッとしてくれた。人よりちょっと余裕って……そういうの金持ちって言うんだよ。
「他にも色々聞きたいんだろ? 何から話そうか?」
優吾さんに引っ張られ二人並んでソファに座る。ずっと抱き寄せられて密着しているから嬉しくてしょうがない。こうして優吾さんの家までお邪魔させてもらえたし、久しぶりに会えて嬉しいし、もうそんなの結構どうでもよくなってるのも事実だった。
「んと、仕事はね……不動産関係。両親は健在。兄弟は無し、ひとりっ子だよ。この部屋で一人暮らし。父親がいくつか事業をやっていて、そのうちの一つを任されてる。あ、でも任されてるって言っても今は親父の言いなりでやらされてるって感じだけどな。あと血液型はAB型。高校と大学ではアーチェリーをやってました。そんなに上手じゃあなかったけどね。犬より猫派。うどんより蕎麦。好き嫌いはないです。はっきりものを言える子がタイプ。好きな子には甘えるより甘やかしてあげたい……かな」
優吾さんはペラペラと矢継ぎ早にそう言うと、これで満足か? と笑った。あんまりにも早口で、正直途中からちょっとわからなかった。
「で、公敬君は俺に言わなきゃいけない事、あるでしょ。早く話して」
急に優吾さんの笑顔が消える。怖い顔をして俺の顎をクイっと掴み、強引に優吾さんの方を向かされた。
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