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30 自分で

 初めてのセックスは俺が思っていたのと違っていた──  そりゃ俺は男だし、可愛い女の子なんかじゃない。それでも甘くて蕩けるような幸せな気持ちで結ばれるものだと思っていた。    それなのに、何で俺は布団に潜って隠れるように泣いてるんだろうな……  ケツ痛えし惨めだし、泣くほど恥ずかしい思いをしたってのに、それでもやっぱり優吾さんとエッチできて嬉しいって思ってる自分が本当おかしいしおめでたい。  しょうがないじゃん、好きなんだもん……  バスルームから出て来た優吾さんに俺はすぐに押し倒された。  そのまま始まるのかと思ってドキドキしてたら「自分で解せ」と命令された。俺が受ける側で、前もって自分で出来るようにしろと言われていたから出来なくもないけど、こういうのは好きな相手に見せるものじゃないだろ? 図々しいかもしれないけど、俺は初めてだし、優吾さんがリードしてくれて俺のことを大事大事に愛撫してくれるものだと思ってた。  ……夢見すぎ? こういうのって幸せな気持ちでするもんじゃないの? 「無理、意地悪言わないで」    優吾さんにそう言ってみたけど、睨まれておしまい。「お仕置きだって言ったじゃん」って言うけど、何も初めての時じゃなくていいじゃんか。 「自分でしてたようにやって見せて。いつもどうやって解してたの?」  言いながら優吾さんは優しく俺の着ているものを脱がせてくる。言ってることは酷いのに、脱がせ方や俺に触れる指先がとても優しい。肌に触れる優吾さんの指先や、頬に触れる優吾さんの吐息がこそばゆくて気持ちがよかった。 「ほら……公敬君のエッチな姿、俺に見せてよ」  耳元で言われ、ゾクっとする。こうなったらもう腹をくくるしかないと俺は自分で下着を脱いだ。 「……見ないで」  俺はヘッドボードに寄りかかり、足をM字に広げる。優吾さんに手渡されたローションを少し手に取り、恐る恐る指をアナルに沈めた。優吾さんはそんな俺を瞬きもせずにじっと見ていて、その目線が俺の手元にあるのがわかって恥ずかしさで消えたくなった。 「そうか、前も一緒に弄るんだね。可愛い……ほら、俺の方見て誘ってみろ」  優吾さんの目が怖い。でも見つめられて、こんなこと言われていやらしい事をしている自分に興奮していくのがわかる。誘ってみろと言われても、どうやったらいいのかわからない。俺は恥ずかしかったけど、もう少しだけ足を大きく開き腰を突き出すようにして、優吾さんにそこがよく見えるように姿勢を変えた。 「見られて興奮してくる? お尻と前、どっちが気持ちいの?……ん、まだわからないか。ほら、いいんだよ? もっと気持ち良くなっても」 「んっ……はぁ、優吾さん……優吾さん……」  段々優吾さんが近付いてくる。俺から目を逸らさずに四つん這いでジリジリとこちらに近付いてくる優吾さんに、俺は早く触れて欲しくて名前を呼んだ。 「優吾さん……イっちゃう……ねぇ、触って……俺に触ってよ」  優吾さんは俺にキスできそうなくらい顔を近付け、ニヤリと意地悪く笑った。 「まだイっちゃだめ。どこに何をして欲しいのかちゃんと言えよ。言えるだろ? ふふ……公敬君てばハァハァしちゃって可愛い。凄いね、ガマン汁いっぱい出てる。そんなに気持ちいの? 俺は何にもしてないのに」  俺の頬をべろっと舐め、優吾さんは今度は俺の下半身に顔を近づける。フッと優吾さんの息がアナルに触れた。至近距離で恥ずかしいところを見られてることに、俺は羞恥心が爆発しそうだった。 「やだ! ねえ、優吾さんやっ……見ないでよ……やだよ……」 「やだじゃねぇだろ? ほら、どうして欲しいんだよ言ってみろよ」  さっきから自分で指を挿れてるけど、前に優吾さんが弄ってくれたような気持ち良さは感じない。前を扱いてるから気持ちいいんであって、俺の指じゃダメなんだ。

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