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32 愛してる
ジンジンする尻の穴と腰の鈍痛。自分を支えていた両腕も疲れてぶるぶると震えている。優吾さんが離れていったのにまだ侵入されているような異物感。声を出しすぎて喉も渇いた……
「俺……イってないのにな」
優吾さんは俺の中で気持ち良さそうだった。最中背中を撫でてくれたり、時折髪を強く掴まれて痛かったけど、背中にキスをしてくれたり、しきりに「気持ちいい」と呟いていた。
優吾さんが俺で気持ちよくなってくれたのなら良かった。
うん……良かった。
念願叶って良かったじゃん俺。好きな人に抱いてもらえたんだ。どんな形であれ、幸せなことだよな。
好きな人と初めてのセックス。愛されてるって実感できる愛のある行為の筈なのに、何で俺は不安しか湧かないのだろう。
何でこんなに悲しいんだろう。
何で自分で自分に「幸せだ」って言い聞かせているんだろう……
「うぅ…… 」
俺は堪らなくなってベッドに潜った。どんどん出てきてしまう涙を必死に手で拭う。ぞんざいに扱われ悔しいし悲しいはずなのに、やっぱり優吾さんのことは大好きだし、セックス出来たことは嬉しいって思ってしまう。
悔しい……
泣いてるところなんか見られたくない。シャワーの音が聞こえるから、きっと優吾さんはシャワーを浴びに行ったんだ。
優吾さんが戻る前には泣きやまないと。笑顔を見せられるようにしておかないと。なんでもないふりをしておかないと……そう思っていたら突然布団を捲りあげられ、驚いて息が止まった。シャワーを浴びに行ってるとばかり思ってた優吾さんが、不思議そうな顔をしてそこに立っている。俺の姿を見た途端、慌てたようにベッドに飛び込んできた優吾さんに俺は力強く抱きしめられた。
「公敬君、泣いてたの? なんだよ! 隠れて泣くなよ! お仕置きだって言ったけど……ごめんな。大丈夫か? 痛いところは?……熱い濡れタオル持ってきたから、とりあえず体を拭かせて。少しベッドで休んだら一緒にお風呂入ろう。ほら、お尻も切れてない? ちゃんと解れてたから大丈夫だとは思うけど……痛いところは? 何か飲むかい?」
優吾さんは俺の頬を両手で優しく包み込みながら、顔を近づけ機関銃のように喋りまくる。「ごめんな」「好きだよ」「愛してる」の言葉とキスの銃弾を顔面に浴びながら、最初は唖然としてしまったけど段々と優吾さんが俺を労ってくれてるのだとわかった。そうしたらホッとしてまた涙が止まらなくなってしまった。
「優吾さんもう怒ってない? 俺のこと好き?……俺のこと嫌じゃない?」
ちゃんと確認しないと不安だった。
体は繋がったのに、あまりにも想像と違ってこんなに悲しい気持ちのままじゃ嫌だったから。馬鹿みたいに泣きじゃくりながら、不安な気持ちが口から溢れる。
「嫌なわけないだろ、大好きだよ。もう怒ってなんかない。ごめんな……俺は嫉妬心や独占欲が強いんだ。それだけ君のことを愛してるんだ。信じてくれる?」
俺の返事を待つ前に、優吾さんは優しいキスをしてくれた。
泣き疲れたのと安心したからか、体の不調に我に返る。丁寧に体を拭かれ、俺はここぞとばかりに優吾さんに甘えてみた。
「お尻痛い。腰痛い。身体中痛いよ。エッチって大変なんだね。でも俺優吾さんとエッチできて幸せだよ。あ、喉乾いた。何か飲みたい」
甲斐甲斐しく俺の体を拭いてくれてる優吾さんに、俺は文句を言ってみたり甘えてみたり。それでも優吾さんは笑いながら俺のためにミネラルウォーターも持ってきてくれた。しばらくの間二人でベッドで横になり、俺は優吾さんに抱きしめてもらう。そして腰が痛いと言う俺を嫌そうな顔ひとつせずに抱きかかえてバスルームまで連れて行ってくれた。
あまりに優吾さんが優しいから、酷く扱われた先ほどのセックスのことなんてすっかり忘れて、今日改めて優吾さんの特別になれたことを喜んだ。
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