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43 ピロートーク

 優吾さんとベッドの中で少し微睡む。  優吾さんもちゃんと俺の中でイった後、「最高だった」とか「愛してるよ」とか、歯の浮くような擽ったいセリフを囁きながら俺のことをぎゅっと包み込むようにして抱きしめてくれた。俺がどんなに可愛かったか、どんなに艶っぽかったか、など、先程の情事を延々と振り返るから恥ずかしさで溶けそうだった。そんな俺の反応を面白がってか優吾さんは更に優しく俺を甘やかす。優吾さんの「愛してる」を体全体で感じることができ、嬉しくて胸が一杯だった。  俺が処女よろしく夢見ていたようなピロートーク。大きなベッドで裸で体を寄せ合って、優吾さんに優しく頬や腰を撫でられながら俺は幸せを噛みしめた。  これから優吾さんと風呂入って蕎麦も作って食うんだっけ? あまりの心地よさに何もかも面倒くさくなってしまった。なんならこのまま優吾さんの腕の中で寝てしまいたいくらい。めちゃめちゃ自分が腑抜けになっているのがわかる。  もう優吾さんがいれば何にもいらない、なんて本気で思ってしまうほど…… 「公敬君、これからどうする? 引っ越し蕎麦、食べるなら俺が作ってくるからここで休んでな」  優吾さんは俺を気遣ってそう言ってくれたけど、前回と違って全然動けるし優吾さんにやらせるのも悪い気がして「大丈夫」と伝えた。「じゃあ一緒に作るか!」と嬉しそうな優吾さんと一緒に、面倒臭い気持ちをおさえてキッチンへ向かった。  二人してパンツ姿でキッチンに立つ。でもなんだかんだ言って結局優吾さんは俺に任せてソファでのんびりしていた。一緒に、なんて言ってたけど、まあこうなる事は想定してたし、俺の手料理第一弾だと思ったら逆に自分一人で作った方がいいと思え俺は俄然張り切って蕎麦を作った。手料理と言ってもただ蕎麦を茹でるだけなのだけど、包丁の持ち方から婆ちゃんに教わった超初心者な身としては、これだって立派な料理だ。と胸を張った。優吾さん喜んでくれるといいな。 「お蕎麦まだぁ?」  待ちくたびれたのか、俺のところまで来てうなじにキスをしてくる優吾さんはちょっと幼く見えて可笑しい。こんな意外な優吾さんの表情も、これから一緒に過ごしていく過程でたくさん見られるのかな、と思うとわくわくした。 「お待たせしました、早く食べよ」  真新しいテーブルで茹で上がった蕎麦を二人で向かい合って食べ、それから一緒にシャワーを浴びた。  シャワーの後、少し仕事を片付けるという優吾さんを一階に残し、明日の朝早く仕事に出る俺は先に休ませてもらった。流石に疲れていたのか、ベッドに入るなり俺はすぐに寝入り、気持ちよく朝まで眠った。  翌朝、セットしていたアラームの前に目が覚める。初めて優吾さんと新居で迎える朝。でも横で眠っているはずの優吾さんの姿はなく、俺は一気に心細さに襲われた。  なんでいないんだろう? 優吾さんは今日は仕事は休みで朝寝坊出来るはずだからゆっくり寝ているものだと思っていた。朝起きたら寝ている優吾さんを起こさないようにそっとベッドから出て、こっそりキスしちゃおう、なんて思ってたのに、何で優吾さんここで寝てないの?  不安と不満な複雑な気持ちで俺は着替えをすませ、急いで階下へ降りた。

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