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51 そんなの知らない
「じゃ、ベッドでいい子にして待ってて」
優吾さんに腰を掴まれキスをされ、グイッと抱き寄せられる強引さにドキッとする。俺は小さく「うん」と返事をするのがやっとで、そそくさと二階の寝室にあがった。
なんでこんなにドキドキしちゃうんだろう。
優吾さんのあの目に見つめられるとどうにも弱い。でも心地よい緊張感で別に嫌なわけじゃない。俺ばっかり優吾さんに対してドキドキさせられてるという事が悔しいけど、言われた通りにベッドに腰掛け優吾さんが来るのを待った。
「はい、お待たせ。ちゃんといい子で待ってたかな?」
寝室のドアが開き、優吾さんが和かに入ってくる。ちゃんといい子に……って、まるで子ども扱いだ。
「ほら、ちょっとどいてね……はい、公敬君こっち座って……」
優吾さんは入ってくるなり手に持っていた大判のタオルをベッドに敷き、俺をその上に座らせた。
「ん? なに? ちょっとなんなの?」
「はい、公敬君バンザーイってして。うんそう、お利口さん」
楽しそうな優吾さんに釣られて言う通りに万歳をしたら、何かを手首に装着された。両手首に巻かれているベルトの様なもの。それぞれに長い紐みたいなものがぶら下がっていた。
「何? 優吾さんこれ……」
不安になり優吾さんの顔を見たけど、優吾さんは黙ったままその紐をグイッと引っ張りヘッドボードのところに取り付けた。
「はい、ゴローんね」
不安そうな俺なんか御構い無しに、優吾さんはそう言ってまた楽しげに俺の事を押し倒す。俺が横たわったらそのままその紐を引くようにして固定してしまい、優吾さんの言う通りの万歳の体勢で俺はベッドに捕まえられてしまった。
「ちょっと! 何? やだ、優吾さん?」
嫌な予感しかしない。このパターン……優吾さん怒ってる?
「公敬君、変な奴にホイホイついて行っちゃってさ、あの時俺が迎えに行かなかったらこうなってたんだよ? わかる? 睡眠薬飲まされて、眠ってる間にあの奥の部屋に連れ込まれて……一体どんなことされちゃってたんだろうねぇ?」
優吾さんが俺の顔を掴んでキスをした。
まただ……掴まれた頬が痛い。
「そんなの俺、知らないし。何もされないよ? 優吾さん心配しすぎだってば……」
「やだやだ、あの店そういうところだよ? 奥に部屋あったの見えなかった? だから心配なんだよ……公敬君みたいな男の子でも、知らない人にいやらしいことされちゃうことだってあるんだから。それに俺はまだ怒ってるんだからね……って嘘。もう怒ってないけど、真っ赤な顔して公敬君にあんな風に誘われたら、苛め倒したくなっちゃうだろ?」
そう言って優吾さんは身動きが取れない俺の上に馬乗りになり、楽しそうに俺の体を弄り始めた。
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