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60 ちゃんと答えて

「怒るなって、おしっこしてる公敬君すごく可愛かったよ?」  可愛いってどうなの?  俺は優吾さんに放尿シーンを見られ精神的ダメージを隠せない。人として終わってしまった気分に言葉も出ない。おしっこするところを見られるのがこんなにも恥ずかしくて情けない気分になるなんて想像以上で、俺は心の底から落ち込んだ。 「なんとか言ってよ、ねえ公敬君? 黙っちゃっててもこうやってベッドに入るんだからいいんだよね? 抱くよ? もう俺我慢できないから……」  俺がさっきから黙り込んでるのも御構い無しにベラベラと機嫌よく喋っている優吾さんにちょっと呆れる。スルスルと優吾さんの手が俺の肌に直接触れ、その熱にじんわりと体が疼いた。  毎度毎度、俺も大概だ……  優吾さんに触れられ、そんな気分じゃなかったというのにすぐに反応してしまう体。どんなに酷いことをされても不安な気持ちにさせられても、こうやって触れられるだけでこんなになってしまう自分が情けない。俺に跨るこの人は俺がこんな気持ちでいるなんて少しも分かっていないんだろうな。 「優吾さん。昨日は誰と一緒だったの?」  唾液が溢れるほどの長いキスの後、唇が離れていくのがもどかしかった。ゆっくりと愛撫しながら、これでもかというくらいの長いキス。優吾さんとのキスは大好きなのに、どうしても昨晩の嗅ぎ慣れない香水の匂いを思い出してしまう。今優吾さんがいつも以上に俺に優しく触れるのはきっと後ろめたい事でもあるんだと勘ぐってしまった。 「……どうしたの? 君がこういう事聞くの珍しいね」  目も合わせず、俺の乳首を舌で舐りながらサラッと言う。久し振りの感覚にピクッと体が震えた。優吾さんの言う通り、俺からこういう質問をするのはほとんどない。それは自信があるからなどではなく、怖いから…… 「相変わらず感じやすいね。ここ、こうされるの好きだよね? どう? 可愛い声聞かせて……」  俺の質問に答えない。 「いや……だ、はぐらかさないでちゃんと答えてよ……昨日は誰と一緒だったんだよ。言えねえのかよ」  俺の胸に顔を埋め舌を動かす優吾さんの頭をぎこちなく撫でながらもう一度聞いてみる。俺が引き下がらずまだ同じことを言うことに苛ついたのか、優吾さんは少しきつく俺の乳首を指で抓った。いきなりの刺激に思わず声が溢れた。 「別にはぐらかしてなんかないよ? なんだよ、橋本と一緒だって言っただろ? 勿論仕事仲間も一緒だったから女もいたし橋本以外の男もいたけど、それが何?」 「……何でもない。ごめん」  優吾さんの怖い顔に鼻の奥がツンとする。すぐに泣きたくなるのも女々しくて大っ嫌いだ。くだらない事を聞いてしまって雰囲気を壊した、と申し訳ない気持ちになってしまい咄嗟に謝ったけど、よく考えたら俺は少しも悪くない。久し振りに会うという約束を破って飲みに行き、ご機嫌に酔っ払って女の匂いを纏って帰ってきたんだ。そんなの不安に思わない方がおかしい。  俺が怒られるような形になって何となく腑に落ちないけど、俺の質問に答えてスッキリしたのか優吾さんはそのまま俺の下着を剥ぎ取り足の間に入ってきた。 「もうこれ以上お預けは無し! はい……早く足開いて、俺にケツ見せて…」 「あっ……や……」  少し乱暴に優吾さんに足を掴まれ開かされた。グイッと押し上げられ、そのまま躊躇なく優吾さんは俺の尻に顔を埋める。こんなところを舐められるのは何度やられても恥ずかしくて抵抗があり、どうしても一度優吾さんの頭を押してしまう。 「だめ……いいの、俺がこうしたいんだから。公敬君のここ、ちゃんと舐めさせてよ」  こう言葉に出されると余計に恥ずかしく顔が火照る。恥ずかしさも勿論あるけど、少し抵抗して優吾さんが強引になるのが実はちょっと嬉しくて、興奮が増すからわざと抵抗してるところもあった。もしかしたらそんな俺も優吾さんはお見通しなのかもしれない。  軽く指を突き入れられ、いつものように「四つん這いになれ」と命令される。俺は言う通りに体勢を変え、そのまま枕に顔を埋めて優しく蠢く優吾さんの指を受け入れた。

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