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61 いつもと違う

 久しぶりの優吾さんとのセックス。この日の優吾さんはいつになく優しくて、そして感情的だった。  正直少し強引で乱暴なのも嫌いじゃない。付き合い始めは悲しかったり恥ずかしかったりもしたけど、こうやって長く優吾さんと一緒にいるうちにわかってきたんだ。    この人は俺のことをこうやって試すようにして安心してるんだと……  現にどんなに酷くされても俺が優吾さんの事を大好きなのは変わらないし、見えない相手に嫉妬したり不安になったりしている。俺の中のほとんどをこの人が占めているのだから、嫌いになんてなれるはずもない。  でも今日のこれにはちょっと戸惑う。  優しい言葉に長くねっとりとしたセックス。何度も何度もキスをせがまれ、何度も何度も「好きか?」と聞かれた。答えたくても優吾さんの執拗な腰の動きに俺はどうしようもなく喘ぐことしか出来ず、それが優吾さんを苛つかせてしまったのかもしれない。最中頬を叩かれることも初めてだった。突然叩かれたことに驚き、すぐに「愛してる」と伝えると、優吾さんはハッとした表情を見せ、叩いた頬を撫でてくれた。「ごめんな。愛してる……」と俺に言う優吾さんは何故だか悲痛にも見え、辛くなった。  一度俺の中で果てると、ゴムを外してそのままもう一度俺の中へ侵入してきた。続けて二度するなんてことも初めてだけど、俺はこんなにも情熱的で感情的になっている優吾さんに酔ってしまい、されるがまま俺からも求めてしまった。 「本当にごめんね……ちょっと気持ちが昂ぶっちゃった。そのままにしてたらお腹痛くなっちゃうかもだから俺にきれいにさせて……」  二度目に優吾さんが俺の中で果て、息を切らしながらそう言った。俺はというと、既に優吾さんに突かれながらイってしまって、喘ぎ声なんだか呻き声なんだかよくわからない声を漏らしながら込み上げてくる快感に何が何だかわからなくなってしまっていた。今までに感じたことのない強烈な余韻に浸り、じわりと広がっていく尻の感覚に、二度目に侵入された時にはゴムをしていなかったと気がつくのに時間がかかった。  きれいにさせて? 優吾さんは俺の中に指を入れ、掻き出すようにして中を弄る。恥ずかしくて嫌だったけど、このまま優吾さんから離れて一人トイレに向かうのもそれはそれで嫌だった。 「ん……」  俺は横になったまま優吾さんに背を向ける。膝を曲げ、気持ち尻を突き出すようにして再度優吾さんの指を受け入れた。ゆっくりと掻き回すように優吾さんの指が俺の中で蠢き、何度か出入りを繰り返した。そして「大して出てないから……」と呟いた優吾さんは、すぐにその指を抜いて俺の尻にキスをした。 「はい、おしまい。痛くなかった? 大丈夫?」 「……… 」  優吾さんが優しいのは嬉しい。嬉しいけど、俺が執拗に昨晩の事を聞いてしまった事でこういう態度を見せているのなら複雑な気持ちだった。いつもの気まぐれならそれでいい。俺が優吾さんに振り回されている方がいい……  事が終わって冷静になってる自分がいる。  俺に何度も「好きか?」なんて、聞かなくてもわかってほしかった。俺の知っている優吾さんはあんなに不安そうに愛を確認しないし、あんな風に俺を抱かない。自信がなさそうで余裕のない優吾さんははっきり言ってあまり見たくなかった。優吾さんは何でもできて、頼れるいい男なんだから。 「俺は優吾さんのことが大好きだよ? 何か不安? 俺、優吾さんいなくちゃ……生きていけないから。心配しないで」  我ながらよく言ったもんだ。大袈裟だったかな? と思ったけど、でもこれが俺の本心。重くて引かれるのが嫌だからここまでの事はほとんど口にはしなかったけど。 「はは……公敬君てば大袈裟。ありがとうね。俺も好きだよ、愛してる」  俺がぎゅっと抱きつくと優吾さんはいつもの優吾さんの表情に戻ったみたいだった。そもそもいつもと様子が違って見えたのは俺の気のせいだったのかもしれない。 「優吾さん。俺、もうちょっとこうしていたい。疲れたから一緒に二度寝しよ?」  今日はいい天気だ。窓越しからでも強い日差しなのがわかる。折角の休み、時間を有意義に使いたいけど、俺はこうやって優吾さんと一緒にもう少しだけ微睡んでいたかった。  朝から好きな人とセックスして、時間を気にせず二人で眠る。腹が減ったら出掛ければいい。  こういうのが幸せなんだよね?

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