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71 知らない顔
一方的に激しく突かれ乱暴に扱われているというのに、酷く感じてしまっている自分に酔ってしまった。俺がいやらしく喘げば喘ぐほど優吾さんも息が荒く興奮してくれているのがわかり、もっと……もっとと求めてしまう。今までこんなに奥まで突いてくれたことがあっただろうか。自分を支えている足にも力が入らなくなってくる。疲労からなのか、感じすぎておかしくなってしまったのか、尻と太腿が痙攣を起こし始めて恐怖すら覚えた。
「優吾さん……ダメっ、もう ……俺……あっ! ああ!……変! なんか……やだ……待って、そんなにしないで、イっちゃう! あ……まだ……やだ……ああ!」
俺の反応を見て、優吾さんはわざと声を荒らげ乱暴に尻を叩く。「イけよ! ほら! イっちまえ!」と、益々激しくなる腰の動きに俺は悲鳴のような喘ぎ声しか出せない。前を弄ってないのに呆気なく吐精して、情けなくもそのまま一気に力が抜けてしまった。
テーブルから崩れ落ちるようにして床に突っ伏した俺に優吾さんは「まだ終わってねえよ」と冷たく言い放ち、仰向けに寝かされた俺の中にまた入ってきた。もう力が入らずグズグズな俺に構わずに思いのまま腰を振るから、硬い床が背中にあたって少し痛かった。
ここで初めて優吾さんの顔を見ることができたけど、その表情は俺の知っている優吾さんの顔ではなく、やっぱり見なければよかったと後悔した。
ことが終わり、特に何も語ることなく優吾さんはさっさと着替えを取りに行き、身支度を整えるとそのまま家を出て行ってしまった。俺は脱ぎ捨てられているコーヒーで汚れてしまった優吾さんのズボンを拾い上げ、洗面所に持っていこうとのろのろと歩き始める。
いいんだこれで……
初めからわかっていたはず。もう優吾さんは俺のものじゃないんだから。
「あ……やだ」
ぬろっとした感触に思わず立ち止まり、尻を押さえた。そういえば優吾さんゴムをしていなかったっけ……
「あ……あっ……だめ……やだ」
一気にまた悲しくなる。
もし俺が女なら……これで妊娠することが出来るのに。
子を授かることが出来たなら、優吾さんを失わなくてすむかもしれないのに。繋ぎ止めることが出来るのに……
「出るな……やだ……優吾さん、うっ……」
しゃがみ込み泣き続けていると力が入ってしまうのか、勝手に零れ落ちていく優吾さんの種を俺は手で虚しく押さえつける。
こんな事をしても何の意味もない。
妊娠だってしやしない。それでも優吾さんが残してくれたと思ったらどうしてもそれを出してしまうのが嫌だった。
冷たい床の上で、俺はいつまでも立ち上がることができなかった。
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