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86 ホテル

 ついアキラと一緒に店を出てしまった。なんだかんだ言ってしっかり口説かれてんじゃん俺……  少し心配そうにこちらを見ていたマサを気にしつつ、俺はアキラに肩を抱かれて歩き出した。 「いい……んだよね?」  肩を抱くアキラが遠慮気味に俺に聞く。もう目の前にはホテル。ここで「NO」と言うのは野暮だろうと俺は小さく頷いた。  部屋に入るとすぐに俺は抱きしめられた。知らない匂い、知らない温もり……  自分からついて来たものの、この先のことがイメージし難い。やっぱり場所も場所だし、アキラは俺を抱きたいのだろう。そういう目的でここに来たんだ。 「シャワー、先にどうぞ」  アキラに言われ、俺はバスルームに向かった。人と体を交えるのなんて何年振りだ? しかも俺は優吾さんしか知らない。この人は俺のことをどう思って誘ったのだろうか。好意? それとも性処理がしたかっただけ? 誰でもよかったのかな。  俺は複雑な気持ちで体を清め、一応受け入れる準備をしてから部屋に戻った。 「緊張してるの?」  アキラもシャワーを済ませベッドに腰掛ける。俺はアキラに腰を抱かれながら緊張で体が固まってしまっていた。 「もしかしてさ……その別れた彼氏以外やってないの? 別れた後、セックスは?」  言いにくいことをストレートに聞かれてしまい返事に困る。アキラはそんな俺の頬に顔をすり寄せ「どうなの?」と優しく微笑む。どうせわかる事。別に隠すようなことでもない。俺は意を決して「うん」と小さく頷いた。 「そっか……やっぱり」  アキラはそう言うと、ゆっくりとその場で俺をベッドに押し倒した。肌着の中に手を滑り込ませ脇腹を撫でる。思いの外その手は冷くて、俺は思わずビクッと震えてしまった。 「……キスはしても?」  アキラは俺の乳首を優しく捏ねながら頬に唇を寄せ聞いてくる。この人は俺に気を遣ってこんな風に接してくれてるのかと思ったら嬉しくて、アキラの優しさにホッとした。 「いいよ……キスして」  俺はアキラの首に腕を回し、自ら受け入れるように顔を寄せる。アキラのキスはとても優しくて遠慮気味に舐る舌に焦ったさすら覚えた。どのくらいキスをしてるのだろう……最初は遠慮気味だったアキラの舌は、唇を重ね続けるうちに段々と荒々しくなっていく。その舌が俺の口内を舐る度、その舌が俺の上顎を掠める度に、知らなかった快感が俺を襲う。びりっとその快感が刺す度に、勝手に涙が込み上げてくる。気持ちがいいのに、すごく変な気分だった。 ……こんなキス、俺は知らない。  体の力が抜けていく。まだキスしかしてないのに、俺はどうしちゃったんだろう。絡まるアキラの舌に引き寄せられるように、俺は自然に舌を差し出す。アキラは俺の舌を緩々と吸い上げるように舐るから、溢れた涙と一緒に唾液も溢れた。

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