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87 面影が重なる
「泣いてるの? やっぱり嫌だったかい?」
アキラの唇が離れ、俺の涙を指先で拭いながら心配そうに聞いてくる。ハの字に垂れた眉毛がちょっと可愛い。どんだけ俺のことが心配なんだよ……
全然嫌じゃないし、むしろこの人に抱いてもらえるのなら、と思うとそれだけで興奮してきて恥ずかしいくらいなのに、俺が泣いてしまったからこの人はこんなにも心配してくれてるんだ。
優しい……
「ごめん。嫌じゃない。アキラさん……キスが上手だから凄く、その……気持ちが良かった。だから、もっとして。もっと気持ちよくして……」
やっぱり相手が歳上だと俺は幾分素直になれるんだと思う。どうしても甘えてしまいたくなる。たとえこの人に乱暴にされても、きっと俺はそれを受け入れて素直に許せてしまうのだろう。おねだりに答えてもらえると愛情を感じる。乱暴に酷くされても、その人に本性を曝け出してもらえてる、と喜びを感じることができる。優吾さんの時がそうだった。どんなことをされてもそれは俺に対する愛情なのかと思っていた。もしかしたら違っていたのかもしれないけど、別れてしまってはそれはもうわからないことだった。
アキラはどんなセックスをするんだろう。
「君は煽るのが上手だね……」
アキラの手が下半身に伸びてくる。もう既にそこは恥ずかしいくらいに勃ち上がっている。下着の上からアキラの手がそこに触れ「いいね」と呟きグニグニと握った。
「そろそろ脱いで……俺に見せて。脱がせてほしい? 自分で脱ぐ?」
「脱がせて……」
俺は子どものようにバンザイをしてアキラにシャツを脱がせてもらう。もちろん下着もアキラにあっという間に脱がされてしまった。
知らない人の前で、俺は一糸纏わぬ無防備な姿を晒してる。無駄な贅肉もなく、とりあえず見苦しさはないと思う。でも特別鍛えているわけでもないし、体に気を使ってるわけでもない。じっと見られて恥ずかしかった。アキラは下着のシャツにパンツ姿。俺だけ裸でフェアじゃない。
「いい体……舐めまわしたくなる」
アキラはそう言うと、俺の首筋から順に下の方へと舌を這わせた。
まるで初めてのようにドキドキする。勝手に喘ぎ声が漏れてしまう。恥ずかしくて思わず手で口元を押さえると、ふふっと笑ってアキラはその手を強く握った。
「こういうの、興奮するのわかっててやってるの?」
グッと両手首を掴まれ上に上げさせられる。その強い力に手首に痛みが走るほど。両手を拘束され、そのまま勃起したペニスを扱かれる。アキラの力強さと強引な愛撫に、俺は優吾さんの面影を重ねてしまった。
「あっ……待って、あっ……ダメ……気持ちい」
俺は優吾さんを意識した途端に吐精感がこみ上げ、情けなくあっという間にイッてしまった。
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