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97 燻っていた本心
「んっ……マサ、気持ちいい……んっ……あ……もう、大丈夫……ありがとう……」
すっかり復活した俺はマサの頬を撫で顔を上げさせた。顔を紅潮させ潤んだ瞳で俺を見る姿に欲情する。このまま強く抱いて啼かせてみたい……こいつはどんな風に俺に抱かれるのだろうと興奮した。
唇を避け、あちらこちらにキスを落とす。その度にマサは切ない声を漏らした。
「ごめんな……もう大丈夫。なあ……挿れたい、いい? 」
「うん、ありがと」
覚悟を決めたようにマサは一度小さく頷く。後ろ向きにさせ、俺はマサの尻を撫でながらゆっくりとその中に挿入させていった。
「あ……んっ、凄い……」
俺に押されるようにしてマサは前のめりになり、苦しそうにそう言った。俺はというと初めての感覚に只々興奮しきりで、マサの中の熱っぽさに動けずにいた。
「安田さん?……大丈夫だよ。動いて……」
「う……ん、ちょっと待って、気持ちい……」
動いたらイってしまいそうだった。マサに「可愛い」と笑われても言い返す余裕もなく、俺は一呼吸置いてからゆっくり腰を動かした。
「あっ……ああ、安田さん……もっと、もっと強くて大丈夫……やだ、ゆっくり……もどかしいから」
マサの腰が早く動けと言わんばかりにユラユラと動く。マサは初めてだけどずっと自分でアナルを使って自慰をしてきたから遠慮はいらないと喘ぎ喘ぎそう言った。マサは背後から突かれるのがもどかしくなったのか、体を起こすなり俺を押し倒して馬乗りになった。自ら気持ちの良い場所を探りながら俺の上で悩ましく腰をくねらすマサに、俺は自分ではどうする事もできず、マサの太腿に手を置きされるがまま快感を与えられ続けた。
結局俺が気を使って丁寧に……なんて思っていたけど、終始マサのペースで俺は呆気なくマサの中に吐精し、力尽きてしまった。マサを啼かせてみたいなんて思っていたのに、俺の方が情けなく喘がされてイかされてしまった……
自己嫌悪……
いつもいつも、俺は相手の望むように抱かれ、自分から積極的に行為をしてこなかった。欲はしっかりあるくせに、それでも相手に行動を委ねる……自分のペースではなく相手の欲求に身を委ねていたところが多かった。
いつも受け身……
肉体的にも精神的にも、俺ははずっとそうだったんだとマサとのセックスでわかってしまった。セックスのことだけじゃない。日頃の事でさえそうだ。優吾さんとの別れだって、今こうして一人でいる事だって、全ては優吾さんのせい、あんなことがなければ、出会っていなければ、俺は辛い思いなんかしないで幸せになれていたかもしれない。見ないふりをしていたけれどそんな思いが心の奥底で燻っていた。
「安田さん? どうしたの? ……ごめん、嫌だった? それとも感無量?」
放心状態の俺にマサが不安そうな顔をして覗き込んできた。側から見たら童貞消失で放心しているようにも見えるのだろう…… ちょっと揶揄い混じりな物言いにも聞こえるマサの言葉に、俺は小さく首を振る。
「なんかさ……俺、ダメだな……って思ってさ」
「は? 何が? 気持ちよかったよ? え? 泣いてんの? 大丈夫?」
マサだって初めてだったくせに、何この余裕な感じ。
マサだって最初泣きそうになってたくせにさ……
俺は童貞を卒業云々よりも、今までの自分の生き方、考え方に色々と思わされるところがあり少し凹んだ。
「安田さんの賢者タイム、酷く壮大だね」
俺が今感じていたことをマサに打ち明けたら、マサはそう言って俺の事を笑い飛ばした。
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