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105 再会

 剛毅と靖幸に挟まれるように俺は座っている。  靖幸は剛毅に無視された事にムッとしたまま俺から少し体を離すと、マサからドリンクをもらい一人飲み始めた。 「剛君、だったよね? 久しぶり。何? この美人と知り合いなんだ」 「……靖幸さんに手、出さないでください」  剛毅は隣の靖幸に聞こえないように俺の耳元で小さな声でそう囁く。 「うん? 何で? どうしよっかな……」  きっと剛毅は靖幸に気があるから、俺が靖幸に目をつけていることが許せないのだろう。  最初はちょっと揶揄ってみたかっただけ……  でもまさかその後自分の心境がああも変化するなんてこの時には夢にも思わなかった── 「安田さん……俺じゃダメ? 今日はそのつもりでこの店に来たんだ」 「うん……わかった。いいよ」  セックスの相手を探しにこの店に寄ったところでまさかの俺との再会。そしてこの靖幸とかいう男に俺が近づくのを嫌がっているのが丸わかりで面白いと思ってしまった。  あの時「二度と会わない」なんて豪語していたくせに、また俺と寝る事で俺のこの靖幸という男への興味を逸らそうと必死なのが笑える。靖幸にとって剛毅は恋愛対象にすら入っていないというのに、そんな事もわからないのだろうか?  いや──  きっとわかっているけど、どうしようもないのだろう。 「マスター、この人……安田さんの分は俺にツケといて……」 「え……? 剛ちゃん? ちょっと? もう行くの?」  マサも剛毅の行動に戸惑っているようだった。剛毅は靖幸の顔を見る事なく立ち上がり、俺はというと、見せつけるようにして剛毅の肩を抱いてやった。ちらりと靖幸の顔を盗み見ると、恐らく違った意味でムッとした表情をしているのが見えた。  よく利用するホテルに向かう道中、今頃少しは靖幸にもこの意味がわかっただろうかと俺は思いを馳せる。そうでもなけりゃ、この剛毅の行動も虚しいだけだ。俺のことを嫌っているはずの剛毅がここまでしたのに、何も気付かれないなんて虚しいを通り越して哀れだと思ってしまった。  店を出てからというもの、剛毅はひと言も発する事なく俺に肩を抱かれたままホテルまで歩いた。 「どういう風の吹き回し? 剛君、俺NGじゃなかったの?」  ホテルに入り、早速ムスッとしたままの剛毅に俺は跨る。半ばヤケになり「好きにしろ」なんて言う剛毅のご要望通りに俺は手持ちの拘束具で剛毅をベッドに括り付けた。  目隠しをしてやったのは俺の優しさ。相手が見えない方が剛毅にとって良いだろうとの配慮だ。それに一度体を交えてわかっている。コイツも酷くされた方が感じるタイプだ。 「………… 」 「あ……そっか。これ付けてたら喋れないよね……ふふ、でも取ってあげなーい。大丈夫だよ、安心してね。今日はあんまり痛くしないから……」  ボールギャグを噛ませたその頬に、俺は軽くキスを落とした。

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