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106 再び交わる

 身体中をロープで縛り、下着越しに僅かに主張している中心部を撫でる。目隠しとボールギャグで表情はわかりにくい。それでも不快感と快感の間で剛毅がもがいている姿は見ていて俺も興奮した。  こんな事までして、そんなにあのノンケがいいのか……  少しでも見込みがあってどうにかなりたいとでも思っているのか? 仮にどうにかなれたとしても、あんなすました男に入れ込んだところで捨てられるのがオチだ。若いから……経験が少ないからそんなこともわからないのか。  剛毅は前に会った時、目をキラキラさせて自分の恋愛観を語っていた。そう、よく覚えていた。そりゃ誰もが一度は憧れる、わからないでもない話。  それでも俺はこういう奴を見いているとイライラしてしょうがなかった。  やっかみ? 妬み?……いや、現実を見ろって話だ。  ノンケじゃなくても平気で裏切り女と結婚するんだ。ノンケなら尚更。上手くいったところで行き着くのは意図しない「別れ」だ。  傷付くのは剛毅の方── 「ねえ、そんなにあの美人に俺が近付くのが嫌だったの? 剛君俺の事 嫌いでしょ?」  耳元で囁くと、ムクリと剛毅の中心部が主張する。こんな状態にされても興奮し痴態を晒す。股間に這わせたロープが軽く食い込むようにグッと引っ張り、俺は徐々に芯を持ち固くなっていくペニスを強めに撫でた。 「あ……違うね。嫌いだけど気持ちいい事は好きなんだよね……酷くされてもほら、もう勃ってきた。お前はほんとどうしようもない子だね……」  わざとらしくセリフを吐く。こんな事、毎回毎回俺は何をやっているんだと思いながら淫猥な行為に耽っている。散々な酷い行為をしても、大抵の奴は快感に顔を歪めながら、恍惚とした表情すら見せる。そして俺の事を求めてくれる。  不毛だと思いながら、俺もこうやって相手を求めて一時の快楽を貪っているんだ。  哀れだと思って剛毅を抱く。  その場限りのセックスの相手。一度目はあっても二度目はなかったはずなのに、剛毅とこうやって再び体を交える。お互い快楽を貪り、何も考えずただ己の欲を吐き出す行為のはずだった。  自分もその行為をする事で、深みに堕ちないよう慰めていた。  ただそれだけだったはずなのに……  俺はまた愚かにも求めてはいけないものを求めてしまった。

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