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115 ここにはない気持ち

「剛君、やっと起きたね。おはよう」  ぐっすりと眠っていた剛毅が目を覚ます。部屋の外の明るさがわからないようカーテンを閉めきり、逃げられないように足枷まで着けてしまった。  これじゃあ監禁と同じじゃないか……  自分でも何をやっているのか分かっている。でも側にいてほしいと思ってしまった。 「……すみません。俺、疲れてたのかな。ぐっすっり寝ちゃって、どうやってここまできたのかもわからなくて……」  俺の顔をじっと見つめる剛毅の表情は少し怯えているように見える。少し飲んだだけで意識をなくす程疲れていたなんて、剛毅だって思っちゃいないだろう。自身の違和感に怯えた顔をしながら俺の顔色を窺っているのがよく分かった。 「そりゃ眠っちゃうよね。ごめんね、ゆっくりしてもらいたくてちょっと薬盛っちゃった……」  俺の言葉に明らかに動揺をしている剛毅に俺は続ける。 「あ、心配しないで。ただの眠剤だから」  頬を撫でようと伸ばした俺の手を、剛毅は咄嗟に手で払った。 「何? そんな顔すんなよ……爆睡してる剛君ここまで運んで着替えさせるの意外に大変だったんだぞ。どうせすぐに脱がすのによ……」  払われた手に剛毅の拒絶の意を感じ、俺は自分勝手に腹を立てる。  俺を利用しようと可愛く近づいてきたのはお前の方だろう? ここまで呑気について来ておいて今更俺を否定するなと、腹の奥から沸沸と湧き上がる黒い感情を抑えることができなくなった。 「あ……あの……これ、足の……」 「……ああ、剛君こうしないと帰っちゃうだろ? 夜は長いし、楽しませろよ」  怒りと焦り、愛おしさと、ごちゃ混ぜになった自分の感情をどう処理したらいいのかわからない。思わず掴んだ剛毅の顎を引き寄せ、強引にキスをしながら押し倒した。 「いつもみたいにお前は感じてればいいから。俺の言うことを聞けば酷くはしないよ」  相変わらずの怯えた表情が気に入らない。剛毅にのしかかり、体重をかけていく。顎を掴んでいた手はいつの間にか喉元にあり、剛毅の顔は苦しそうに歪んでいった。 「安田さん……苦……しい、や……やめて」  微かに聞こえたその声に俺は体を離す。涙を流しゲホゲホとむせ込んでいる剛毅を見ながら、その頬にキスをして抱きしめた。  俺は何をやってるのだろう。苦しめたくないのに、強引なことはしたくないのに、反対のことばかりしてしまう。 「俺のところにおいで……気持ちいい事いっぱいしてあげる。可愛がってあげるから……ずっとここにいな」  剛毅の服を脱がしながら露わになっていく肌に、俺は優しくキスを落とした。  苦痛に顔を歪めるのを見て欲情する。  嫌がりながらもされるがままに体を差し出されれば、完全に拒否されたわけじゃないと安心できる。でも、お互い寄り添い「恋人」という関係が築けるのなら、こんな風に乱暴に確認することはしなくてもいいんだと嬉しくなった。  俺は出来る限り優しく剛毅に触れる。丁寧に触れて快楽を与え、俺のところに来てほしいと願いながら、芯を持ち固く勃ちあがり始めた剛毅のペニスに口付ける。   「……何でこんな事するんだ? 安田さんらしくないよね? 俺は恋人じゃないんだから、安田さんの好きなように酷くすりゃいいのに……」  戸惑う剛毅はそんな俺の気持ちはわからない。  体は俺の好きなようにさせているのに、剛毅の気持ちはここにはなかった。

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