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第3話 記憶<深まる仲>
それからというものの、悪魔に、少しだけ近づくことを許された。最初のうちこそ警戒されてはいたが、今では談笑しながら一緒に食事をするくらいの仲にはなっていた。ちなみに、悪魔の名前はロウで、八歳だった。
「なあ。」
「うん?」
ついさっきまで笑って話をしていたロウが、急に真剣な表情に、眼差しになって言った。
「もう俺たち、会うのやめにしないか?」
「え?」
衝撃の一言だった。だって、少しは仲良くなれたのだと思っていた。
(本当は、信用されていなかった?)
「な、なんで?」
混乱する頭を抱えたまま、噛み合わなくなった歯を食いしばって尋ねる。
「だって、レイは天使だろ。悪魔の俺と一緒にいたらまずいんじゃないのか?」
(ああ、なんだ。そういうことか。)
僕は心の中でほっ、とため息をつく。嫌われているわけじゃない。気遣ってくれているのだ。なら、何も問題はない。
「じゃあ、人間界で一緒に暮らそ?」
「……は?」
僕がそう言うと、ロウはひどく間の抜けた顔をしていた。まあそれもそうか。少し唐突すぎたかもしれない。
「ロウ…今すごく間抜けな顔してるよ?」
「へっ?」
僕が指摘すると、ロウはわちゃわちゃと慌てだし、自分の顔をいじって百面相している。僕がにこにこしてその様子を眺めていたら、顔を真っ赤にして、すぐにやめちゃったんだけど。
「…本気なのか?」
僕のを真っ直ぐに見つめて、ロウは問う。
「うん、本気だよ。……いや?」
ロウが嫌なのならば無理強いする気はない。これは僕の我儘だから。そういう意味を込めて、尋ねてみた。
「…レイが、いいなら。」
ぽつり、と、呟くような声で聞こえたそれは、とても嬉しいものだった。
「じゃあ家は僕が手配しておくから、明後日、またこの場所で待ち合わせね。」
「ああ。」
一人浮き足立ちながら、僕はその場を去った。
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