9 / 27
第9話 記憶<殺したい記憶>
ロウが学校に通い始めてから、一か月が経とうとしていた。
「ぅ。うぁ。うぅ。」
夢を見る。忌々しい夢。心を、身体を犯された記憶。じわじわと身体を蝕んでいく記憶。
「従え、レイ。お前は所詮天使。私たちの道具として産み落としたモノだ。道具に意思は要らぬ。」
脳内で声が反響する。頭が、割れそうなほどに痛い。気持ちが悪い。
(触るな、放せ。気持ち悪い。)
肌に、異質なものが這う。上へ、下へ。身体中を弄られ、ナカへと侵入される。
(嫌だ。嫌だ。嫌だ。)
口は煩いからと塞がれた。動く必要がないからと手や足は拘束具で固定された。
『 だ れ か 助 け て 』
「 っ!?」
そう叫ぶと同時に、目を覚ました。
「…夢見が悪いなあ。まさかとは思うけど、ここ探知されてたりするのかな。」
もし神に探知されていたとしたらそれは最悪だ。あいつらがロウの存在を知った時どうするのか。いずれにしろ良いことは起きない。天使であれば、上級くらいまでなら追い払えるからまあある程度はマシだが。ロウを逃がすくらいの時間なら稼げる。
「気持ち悪い。」
すべては夢のせいだ。嫌なことを思い出したし、汗が肌に纏わりついて気持ちが悪い。ぐしょぐしょだ。
「シャワー浴びよう。」
そう呟いて、バスルームへと足を運んだ。
「ん…。」
冷水を流して、頭からつま先まで丁寧に洗っていく。夢の感触が残っていてまだ気持ちが悪い。
「はあ。ロウのこと守らなきゃいけないのに、一番自分の事情に振り回されてるのって僕なんだよね。」
情けない。これからもっと、やることがあるというのに。
「…仕事しよ。」
タオルで水を拭き取り、再び自室へと向かった。
ともだちにシェアしよう!