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第9話 記憶<殺したい記憶>

 ロウが学校に通い始めてから、一か月が経とうとしていた。   「ぅ。うぁ。うぅ。」  夢を見る。忌々しい夢。心を、身体を犯された記憶。じわじわと身体を蝕んでいく記憶。 「従え、レイ。お前は所詮天使。私たちの道具として産み落としたモノだ。道具に意思は要らぬ。」  脳内で声が反響する。頭が、割れそうなほどに痛い。気持ちが悪い。 (触るな、放せ。気持ち悪い。)  肌に、異質なものが這う。上へ、下へ。身体中を弄られ、ナカへと侵入される。 (嫌だ。嫌だ。嫌だ。)  口は煩いからと塞がれた。動く必要がないからと手や足は拘束具で固定された。 『 だ れ か 助 け て 』 「 っ!?」  そう叫ぶと同時に、目を覚ました。 「…夢見が悪いなあ。まさかとは思うけど、ここ探知されてたりするのかな。」  もし神に探知されていたとしたらそれは最悪だ。あいつらがロウの存在を知った時どうするのか。いずれにしろ良いことは起きない。天使であれば、上級くらいまでなら追い払えるからまあある程度はマシだが。ロウを逃がすくらいの時間なら稼げる。 「気持ち悪い。」 すべては夢のせいだ。嫌なことを思い出したし、汗が肌に纏わりついて気持ちが悪い。ぐしょぐしょだ。 「シャワー浴びよう。」 そう呟いて、バスルームへと足を運んだ。 「ん…。」 冷水を流して、頭からつま先まで丁寧に洗っていく。まだ気持ちが悪い。 「はあ。ロウのこと守らなきゃいけないのに、一番自分の事情に振り回されてるのって僕なんだよね。」 情けない。これからもっと、やることがあるというのに。 「…仕事しよ。」 タオルで水を拭き取り、再び自室へと向かった。

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