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第10話 記憶<知覚 ロウ>
最近、レイの体調が物凄く悪そうだ。朝から顔を真っ青にしていたし、体中が汗でぐっしょりと濡れていた。
「何でもなければいいけど…」
レイは、ここ最近悪夢にうなされているようだった。一度寝室を覗いてみたが、本当に苦しそうだった。泣いて、呻いて、確か、誰かの名前を呼んでいた気がする。
「……?」
何故か心が重くなる。呼ばれた誰かのことを考えると、黒い何かが心の中で渦巻く感覚がする。
「…これは、嫉妬?」
あてはある感情の名前がそれしか思いつかない。でも何故?確かに俺はレイのことが好きだが、それはあくまでも家族や育ての親としての感情のはずだ。でも、もしかしたら、
「俺は、レイのことが、恋愛感情で好き…?」
俺とレイは一緒にいる時間が長すぎたのかもしれない。だからこそ、気づかなかったのかもしれない。当然のことだと思って、ありもしないと思っていたのかもしれない。
(もともと他人なのに?)
なぜこんな簡単なことに気づけなかったのだろう。
「…どうしよう。」
気づいてしまわない方がよかったのかもしれない。だって、好きな人が目の前で無防備な格好をし続けるなんて、両思いでもない限りただの拷問だ。
「…ま、なるようになるか。」
たとえこの思いが伝えられないものだとしても、やることは変わらない。ただ、レイを守る。それだけのこと。
「ロウ、起きてたの。おはよう。」
レイが、いつものように優しい笑顔をこちらに向けてそう言う。
「ああ、おはよう、レイ。」
この笑顔を守りたい。ずっと傍で見守っていたい。そう、思っていたのに、俺は……。
「 ぁっ。ロウっ。」
どうして今、目に涙を潤ませ、怯えた声で俺の名前を呼ぶこいつを、組み敷いているのだろう。
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