13 / 27

第13話 記憶<切れる糸 ロウ>

「そろそろ離れ時かなあ。」  レイの部屋の前を通った時、確かにそう聞こえた。 (……え?)  耳を疑った。聞き間違いだと思った。でも、すぐにそうではないのだと冷静になった。扉の前で耳を澄まして、中の音を聞く。 「…く来てよ、ミカエル。」  あまりよく聞こえなかったが、最後、その部分だけははっきりと聞こえた。 「は…?」  ミカエルとは誰のことだろうか。恋人だろうか。友人だろうか。  いや、そんなことよりも、 「離れる…?」  俺から、レイが? 「そんなの、だめだ。」  だめ。だめ。そんなことは許さない。俺からレイが離れていくなんて、あってはならない。 「そんなこと、許さない。」  気づくと、レイの部屋の扉は開いていた。 「へ、ロウ?どうしたの?何かあった?」  レイがいつものような優しい笑みを浮かべて近づいてくる。 「………。」  俺はそんなレイに噛みつき、ベッドへと押し倒した。 (俺から離れようとなんてするなら、忘れられない痕を残してやる。)  渦巻いた毒が、今、身体中に廻った。

ともだちにシェアしよう!