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第18話 記憶<新たな出会い ロウ>
『レイ!』
叫びは届かず、祈りは届かず、俺は魔界にある森の奥地に転送された。
「レイ…。」
レイの、あの天使の笑顔を守りたかった。ずっと傍で見つめていたかった。それは嘘じゃない。でも、
「俺が欲しかったのは、あんな悲しそうな顔じゃないんだよ、レイ…」
(あんな、苦しそうな、泣き出しそうな顔じゃないんだよ。)
レイのあんな顔は初めて見たかもしれない。いつも優しく微笑んでいたから。
【ケタケタ。ケタケタ。子供ダ。子供ガイル。美味ソウ。美味ソウ。】
長らく人間の土地にいてその匂いが染みついた俺に、魔物たちが集まってくる。
「…煩い。消えろ。」
その耳障りな声が、弱っていた気に触れる。
「すべて。」
その日、その森のすべての魔物たちが、一匹の悪魔の手によって屠られた。
「レイ……」
来る日も来る日も、その悪魔は迫りくる魔の者達を屠り続けた。ただ一人、愛しい天使の事を思って。
「君、面白いね。最近ここらで有名になってるよ。どんな魔であろうと、命乞いをしようと、冷酷に狩って狩っていく悪魔がいるって。」
ある日、肌の浅黒い男が目の前に現れた。
「…誰だ。」
ああ、煩い。煩い。すべてが煩わしい。レイに、会いたい。
「俺はルシファー。魔界を統べる魔王だよ。君、強いでしょう。暫く俺のところで働いてよ。」
男が意気揚々と話す。が、その気配は黒く、禍々しく、一瞬で今の俺では到底敵わないことを悟れた。
「…それで俺に何のメリットが?」
早く。早く。生き急がなくては。死に急がなくては。レイを、取り戻さなくては。
「逆に何してほしい?」
にんまりと自称魔王が笑って、そう尋ねてくる。
「…天界への門、お前なら開けるか。」
天界に続く時空を掴むのは、天界にルーツをもつ者にしかできない。だから、魔の者で天界を開けるのは堕天してきた元天使の高位悪魔や、神だけだ。もしくは天の者と契を交わし、半天半魔となった者か。
「それは…どうして?」
自称魔王はやはり余裕を崩さず尋ねてくる。
「取り戻したい天使がいる。あれは、俺のものだ。」
そう、レイは天界の物ではのではない。ましてや神の玩具でもない。俺のものだ。
「…うん、やっぱり君、面白い。うん、いいよ。繋げてあげよう。強くなってたら100年後くらいにでも繋げてあげる。ま、今のままじゃあ神には敵わないだろうから、精々力を磨いておくんだね。じゃあ、これからよろしく。」
そう言って差し出された手にあったのは、毒なのか、それとも甘い蜜だったのか。この時の俺に知る由は無かった。
「……ああ。」
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