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第24話 微睡の向こう
「ん……。」
意識が現実世界へと浮上する。
「ここは…ロウの部屋、かな。」
整えられた部屋。何もない、生活感のない無機質な部屋。
「んっ…」
少しふらつく身体を支えながら、ゆっくりと起き上がる。
「酷いことしちゃったからなぁ…」
力が無かった。創造主に対抗できるだけの力が。ロウに辛い思いをさせてしまった。自分の名前を呼ぶロウを突き放し、生き残れるかもわからないような土地へと転移させた。
「まあ、生き残れるだろうとは思ってたけど…」
それでも、酷い事だ。
「………。」
ロウの気配が近づいてくる。狭間からではない。徒歩で来ている。
「レイ!」
バンッっと、勢いよく扉が開かれる。
「ロウ…」
気付いた時には、ロウの腕の中に身体が収まっていた。
「ふふ、かっこいい顔が台無しだよ、ロウ。」
ロウは、泣きそうな顔をしていた。今にも、泣きじゃくりそうな顔。
「そんな顔しないで、ロウ。大丈夫だよ。僕はちゃんとここにいる。」
その存在を確かめるように、ロウは僕の身体に触れる。
「ちゃんと、君のところに帰ってきたんだよ、ロウ。」
そんな仕草が可愛くて、ロウの右の手のひらを頬にあてる。
「ほら、ちゃんといるでしょ?」
おぼつかない動きで左手を持ってくるロウを瞳に捉えて、右の手のひらに口づけていく。
「この体温も、声も、体も、感触も、全部本物だよ。」
ちゅ。ちゅ。ちゅ。唇と唾液の弾ける音が、部屋に響く。
「なんなら、確かめてみる?」
唇を落とした先で、ロウの指を軽くかじってみせる。
「ロウならいいよ。好き。愛してる。いくらでも犯して、壊して、好きにして欲しいと自分から思ってしまうくらいには。」
戸惑う両手を捕まえて、片方は手を絡めもう片方は心臓に触れさせる。
「ねえ、ロウ。好きだよ。愛してる。」
ちゅ、と、繋いだ手に口づける。
「!」
ぼふん、という音とともに、先程まで眠っていたベッドへと押し倒される。
「あまり煽らないで、レイ…大切にしたい。」
いつかの罪悪感なのだろうか。欲情をしているものの、それを遮る苦しそうな、泣きそうな顔で言われる。
「煽ってるんだよ。ね、ロウ。本人が良いって、欲しいって言ってるんだよ。大人しく煽られてくれたり…しない?」
解けた手をロウの首へと回し、抱き着く形になる。
「…それは、聞き方が狡い。」
少し拗ねたようにロウが言う。
「こんな僕は嫌い?」
悪戯気味にそう尋ねてみる。
「そんなわけないだろ。」
躊躇なくそう言って、ロウは僕を組み敷いた。
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