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第4話
「じゃあ、また明日……明日も持ってきますから。そのときはよろしくお願いします……」
ふらふらしながら、玉井が準備室を出て行った。
眠気でふらふらしているのか、ショックでふらふらしているのか分からない。ただ準備室から出て行くときに、棚にぶつかってよろめいたのがなんとも哀れだった。
……しまったな。
口元に手を当てて、自分の失言を後悔する。
いくら偏屈で、頑固で、人嫌いな自分でも、後悔しないわけがない。玉井は、睡眠時間すら削って、必死に回答を作ってきているのに。
机の上には、玉井が忘れていった原稿用紙がある。いつもは持って帰るのに、今日は持って帰るのを忘れてしまっている。それだけ心に余裕がなかったということなのか……
──私に一体どうしろというんだ。
苛立たしいのか、腹立たしいのか、とにかくお門違いな焦燥感に駆られながら、机の上の原稿を手にとる。
そこには、相変わらず、綺麗な文字が並んでいた。
……理由は、たくさんある。そのうちの数点、特に重要だと思われるものを挙げたい。
・白衣が似合う
・横顔が知的で才気走っている
・指の関節が出ているところがセクシーである
・見透かすような迫力のある目
・耳の形
しかしながら、これらはすべて容姿に限った点である。ビジュアル的な要素は、初見の印象に大きく影響するが、それらだけではこの論述を完成しえない。何より重要なのは、その内面的な要素である。
外面的な要素と内面的な要素は密接に関係し、その関係性を説明することは、論述を論述足らしめるにもっとも重要だと考える。
では、私の思う内面的な要素を列挙していく。
・仕事に対してとても真剣
・受け入れられないとしながらも、同性愛を伝える私に激しい嫌悪を見せずに接する
・度重なるアプローチにも嫌悪の念を見せない
・早合点しがちな私を切り捨てることなく根気よく説明してくれる
・会話してくれる
・やさしい
・相手してくれる
・きれい
・
……最後のほうの記述列挙、力尽きた感じが漂っているな。
藤代は頭に手を当てて、長いため息をひとつ、ついた。
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