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第6話

なんだよ、この部屋 物は出しっぱなし 台所は焦げくさい ゴミ箱もたおれてるし 俺が朝家を出た時より汚くなっていた 「シバ、なんだあれ」 『料理、作った』 「は?」 『ん、』 と、冷蔵庫から出した ケシズミを俺の前に置いたシバ 「なんだ、これ」 『見てわかんねえの?玉子焼きだけど』 「玉子焼き!?」 『なんだよ、その反応』 いや、俺の知ってる玉子焼きと 随分かけ離れてたから 「味見した?」 『してねえ。隠し味入れたから当ててみて』 馬鹿じゃねえの 隠し味もなにもケシズミじゃん 食えんのか、これ そして玉子焼きなら冷蔵庫でカチカチにしないで欲しかった じ、と見てるシバの期待の目から逃れらなくて しかたなく 端っこを少しだけ箸で切って 口に運ぶと ジャリってした 殻入ってんじゃん そして 「イカの塩辛」 『よく分かったじゃん。隠し味』 「隠れてねえよ!全面に出てるっつうの」 『ふーん、うまい?』 「くそまずい」 『んだよ、せっかく作ってやったのに』 と、シバはケシズミをゴミ箱に投げ捨てた 「なんで急に料理なんかした?」 まず、と口の中の味を消したくて 冷蔵庫にからビールをだして ぐびぐびっと数口煽る 『べつに。手伝ってやろうと思って』 「おまえはペットだから俺に飼われてたらいいんだよ」 と、言うと やはり不満そうな顔をする 『ペットってなに。俺人間だけど』 「だって、いやなんだろ?仕事手伝うの。ヒモになろうにも料理も掃除もできねえし、ペットとして俺に可愛がられるしかねえじゃん」 『…できてんだろ、料理』 「自分であのケシズミ食ってから言え」 と、いうと やっぱり不機嫌そうな顔を俺に向ける 「シバ、来い」 と、ゴミ箱の所にいるシバを呼ぶと 不本意、って顔を全面に出して おれの前に来たから 「お座り」 と、命令をすると ゆっくりと、俺の目の前に腰を下ろし 下から睨んでくる 「いい子だ」 と、シバの頭を撫でてやると ふん、とそっぽを向いた 「シバ」 『ん、だよ』 「飯、何か食う?」 『……くう』 「なんかあるっけ」 なんかあったっけ、と ビールはそこら辺に置いて 冷蔵庫を開ける 『なに?作んの?』 と、ぴょこんと立ちあがり 俺の横から冷蔵庫の中を覗いた 「腹減ったんだよ」 『俺の作った玉子焼き、まだある』 と、言われて見ると 冷蔵庫の中にはまだケシズミが入っていた 「どんだけ作ったんだよって玉子1パック使ったか!?卵全部ねえ!」 『味付け、調整してたら卵全部なくなった』 「…味見してねえんだろ」 『してないけど』 はぁ、とため息を吐いて 適当に冷蔵庫の中身でジャーマンポテトを作る事に決めて 冷蔵庫からブロックベーコンとじゃがいも 玉ねぎを出す 『何作んの』 「ジャーマンポテト。つまみにいいだろ」 『じゃーまんぽてと』 「なに、知らねえの」 『しらない。なにそれ』 「お前も手伝え」 『しょうがねえな』 と、俺のすぐ横に立った 「じゃあとりあえずベーコン、切れるか」 『包丁やだ』 「……じゃがいも洗っといて」 『あらう、』 と、じゃがいもを流しに置いて スポンジに洗剤を付けるシバ 「何やってんだよ」 『あらう』 「ばかかよ…もうこれ持って向こう行っとけ」 と、飲みかけのビールを渡して リビングに座らせる こいつ、家事能力ないとかいう問題じゃねえな… それでよく料理とか掃除するって言ったもんだ 腹減った、さっさと作ろ、と じゃがいもを洗い 調理を進めた 「シバ、できたぞ」 『んー、いいにおい、する』 と、シバは俺の元に駆け寄って手元を覗き込むと 「腹減ってんの、お前も」 『へってる、これ、しゃーまん?き〇ぐ?』 「ジャーマンポテトな」 ほい、と食卓にそれを置いて こいつの箸とかない事に気付いて 適当にフォークを渡す 『くってい?』 と、何故か俺のすぐ隣に座り フォークを握るシバ 「いいよ、つか近くね?反対側座れよ」 そんな腹減ってんの、と 俺は机の反対側に置いてある麦酒を飲もうと手を伸ばす シバは先にジャーマンポテトを食い始めていた 『ふーん、』 「先食うなよ」 まぁいいか、と おれは ちょっとぬるくなってしまったかと後悔しつつ 缶を持ち上げた 「ん?んんん?」 『うん、まぁまぁうまいじゃん。この、じゃーまん、』 「……シバ、これは?」 『けちけちすんなよ』 と、ジャーマンポテトを頬張りながら 言ったシバ おれはまだ数口しか飲んでなかったのに ビールは空っぽになってた 「じゃねえよ。飲んだのかよ」 『ジンジャエール?』 「は?ビールだよ!飲んだことねえの?」 なんだよ、ジンジャエールって お前舌まで馬鹿なのかよ 『のんだことねえにきまってんじゃん』 「へえ、ビールじゃなくて梅酒派とか?」 『おれまだじゅうきゅうだし。さけのんじゃだめじゃん。あたりまえだろ』 「は、え?は!?」 と、ようやく気付いた なんか距離が近い事や いつもより頭が悪そうな滑舌 「お前、酔っ払ってんの!?」 『なんでだよ?』 顔赤えし つかお前 「未成年だったのかよ……」 いや、若いとは思ってたけど まさか未成年とは思わなかった 『なあ、もっとなんか食う』 「は、…あ!全部食いやがった!」 とんでもねえ駄犬拾っちまったな…

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