8 / 180

第8話

「買い物行くぞ」 と、部屋でごろごろしていたら 俺の飼い主が不意に口を開いた 『俺も行くの?』 「お前の物買いに行くんだよ」 『俺の?なに』 「箸とか茶碗とか」 『ええ、べつに何でもいいんだけど』 使えれば 「あー、シバは犬だから箸なんて必要ないか?」 『……箸は使うし』 「犬の餌皿買ってくるぞ」 『…わかったよ、いけばいいんだろ』 と、しかたなく起き上がり 顔を洗いにいく 「そう言えばお前服もあんま持ってねえよな」 『別にそんなにいらねえ。スウェットあればいいし』 「お前みたいなスウェットのガキ連れ歩くこっちの身にもなれよ。下手すりゃ捕まるって」 と、着替えないで行こうとした俺に 適当に服を渡してくる こいつは本当に変な奴だ 気まぐれで俺を飼うって決めて いや、まずなんだよ。 人間飼うって それで、 躾っていって意地悪する事もあれば 急にこうやって人間扱いしてくる 「なあ、シバ」 『なに』 「好きな物買ってやるから買い物の後ちょっとだけ仕事付き合って」 『なんで、』 「欲しいもんねえの?」 『ない』 「ブランドもんの時計は?」 『別に必要ない』 「ゲームは」 『いらない』 「自転車」 『出かけねえし』 「ええ、あ、あれは」 『なに』 「抱き枕」 『………』 なんで、俺が抱き枕に目付けてたこと知ってんだよ いや、別に寂しいとかじゃねえし ただ、家にいる時間が長い分 大きい枕が欲しかったというか 今は抱き枕がないから寝る時は 布団を丸めて足の間に挟んだりしてるけど 「すっげえ触り心地がいいやつ買ってやるよ。まぁ俺もマットレスあたらしくしようと思ってたからちょうどいいし」 と、余計な言葉が聞こえたけど 無視して 『仕事って、何手伝うの?』 「いや、簡単な事だよ。モニター的な?」 『モニター?』 「で、枕いるのかいらないのか」 『いる』 「よし行くか。着替えろー」 と、言われしかたなく着替えて 飼い主の運転する車に乗り込んだ 行先はホームセンターとかだろう 『枕は』 「先に箸とかな」 と、言われ 色とか別になんでもよかったから あいつが選んだやつに じゃあそれ。と頷く そして、寝具のフロアに行き 『おっきいの買ってくれんの』 「あぁ、好きなの選べよ」 よっしゃ、と 枕コーナーの 見本品を見る 身体にそうような曲線のやつに 動物の形、 長方形の四角いやつ あとは硬いのだったり 柔らかいのだったり もぎゅもぎゅ、と何個か触って持って 『これにする』 と曲線の大きめサイズ どちらかと言えば柔らかめの低反発のやつを選んだ だって、この柔らかさ めっちゃ手に吸い付くもちもちだし もうこれしかないって思った 「それな」 と、商品の札を取り 飼い主はベッドのコーナーに向かう 『ベッド買うの?マットレスだけじゃねえの?』 多分、マットレスに関しては俺が汚したから 「いや、いまセミダブルサイズなんだけどでかくしようかなって」 『ふーん』 「ダブルとクイーン、どっちがいい?」 と、ベッドのコーナーで俺に聞いてくるけど 『いや、どっちでもいいし。ダブルでいいんじゃね』 あんま大きいとあのドアとか入らなそうだし、と適当に答えた お前のベッドとか俺関係ねえし 枕さえあれば俺はいい 「いや、狭くねえかな」 『いや、さすがに大丈夫だろ』 いくら身長が高めとはいえ さすがにダブルのサイズがあればいいんじゃないのか 「いや、男ふたりだとなぁ。やっぱりクイーンにするか」 と、商品の札を取った 『……は?』 「なんだよ」 『なに、男ふたりって』 「いや、お前も寝るだろ。ずっとソファで寝てるのも疲れるし」 『いや、俺枕さえあればなんでもいい』 「遠慮すんなって」 と、飼い主は俺のことを無視して さっさとレジに向かう そういやこいつは金は持ってんだよな 一応社長だし その割に自分で作って料理したりと 豪遊のような生活はしていない ある程度自分で家事もしたりしてたし 『なあ』 「なに?」 『炊飯器も買って』 「は、なんで」 『ご飯ぐらいなら俺炊けるし。当番だったし』 「当番?」 『前住んでた探偵事務所。ご飯当番だった』 「ふーん、まぁそれもいいかもな」 と、寝具コーナーでお会計を済ませると 俺の枕はまさかの在庫無しで ベッドと一緒に後日発送になったから 俺はもう何もかもどうでも良くなって さっさと帰りたかった 「膨れんなよ」 『もうあのまくらで寝るシュミレーションしてたんだけど』 「明後日来るって言ってんだから2日くらい我慢しろよ。ほら、炊飯どれがいい?」 と、言われたけど 炊飯器の性能なんてわかんない上に何もかもどうでもよかったから 『おすすめのやつ』 と、適当に選んでさっさと帰ろうと思った 炊飯器なんか、急ぎじゃないのに それは在庫があったから持って帰ることになって車に積む 「なんか腹減ったな…ってここら辺ファーストフードしかなえな。どうするシバ」 『なんでもいい』 「マッ〇とサ〇ウェイどっちがいい?」 『さぶ〇ぇいってなに』 「知んねえの?サンドイッチやさん」 『しんない』 「ふーん、じゃあそっちにするか。野菜食べる機会すくねえし」 と、地下鉄じゃないさぶう〇いに向かい メニューの写真を見る 本当だ、サンドイッチだ でも想像してたのと違ってバケットサンドだ 「どれがいい?」 と、言われても分からなかった 『わかんねえ』 「じゃあ俺と同じのでいいか?」 と、言われうなずくと 飼い主はレジにむかっていく 「ローストチキン2つで」 「パンの種類はどうされますか」 「ハニーオーツで」 「野菜はすべて入れてよろしいですか?」 「シバ、こんなかで食べれない野菜あるか?」 と、指さされた写真を見て 『玉ねぎやだ』 「じゃあひとつは玉ねぎ抜いてください」 「ドレッシングは如何なさいますか?」 「ハニーマスタードで」 と、よくわかんないやり取りをしていて おれはポテトと飲み物を注文してもらったから先に椅子に座って待っている すると しばらくすると トレーを持って俺の前に座った飼い主 「ほら」 と、渡されたサンドイッチを受け取ってかぶりつく 『……うま』 ハニーマスタードって 初めて食ったけど 甘くて酸っぱくて よくわかんない味でうまい 「お、うまい?よかったじゃん」 と、飼い主もサンドイッチにかぶりついた そういや、こいつと外で飯食ったの初めてだな

ともだちにシェアしよう!