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第44話

「あ、社長。すみません、シバくんのトイレ…結局漏らさせちゃって」 「いや、気にすんな。あいつが言えなかったのが悪いんだろ」 と、クリーニング室に行った帰りにヤナギに会い謝られる 「シバくん、落ち込んでました?大丈夫ですか?」 「あー、ちょっとなぁ。虐めすぎて泣かしちまった」 「はぁ?何やってんすかマジで」 「いや、もう機嫌取っといたから。あと30分くらいしたら仕事戻すから」 「はぁ、俺シバくんのお守りちょっと今日は無理かもー」 「なんで、」 「だって、泣いてたんでしょ?絶対落ち込んでんじゃないっすか。ただでさえ朔弥くんにからかわれて不機嫌だったのに。かわいそー」 「そうなの?」 「まぁ、でもシバくん人見知りだけど朔弥くんとは普通に喋ってたから送迎すんなら朔弥くんがいいと思うっすよー」 「へえ、考えとく」 朔弥くんはシバとちがうタイプだ 多分、漏らすことにそんな抵抗がなく 自ら楽しんでおもらしするようなタイプだ まぁ、仕事だと割り切ってさっぱりやっているんだろ そして誰に対しても 同じような飄々とした態度で接してくる それが良かったのだろう まぁ、シバは嫌がっていたようだが 「シバくんキャストやればいいのにー。いい感じでしたよ、車で」 「見たの、シバが漏らしてるとこ」 「まぁ、そりゃ見ましたけど」 「忘れろ。もったいない」 「なんすかそれ」 俺がシバにキャストなんてやらせるわけがない もったいない、シバのあんな顔 俺以外が見るなんて ヤナギにだって見せたくないんだ、本当は 「あ、」 「なんすか、」 「シバ、お前に漏らしたのバレてねえと思ってるから知らないふりしてやって」 「あー、その件に関しては大丈夫っす」 「じゃあシバのとこ戻るわ」 「あー、社長」 「なに、」 「勃起させたままうろつかないで下さいね、他の社員困ると思うんで…」 「うっせえ、」 しょうがねえだろ さすがにこのまま最後までやっちまうのは 仕事中だし…シバ戻せなくなるだろ どうにか社長室からでて気分を落ち着かせているのだ タバコを1本吸って帰ろう 社長室に戻ると シバは寝そうになっていて おれがここから出ていった時のままだった 「シバ、あとちょっとしたら仕事戻ろうな」 『…うん、………ねえ』 「なに、」 『たんぽぽコーヒーって、なに?』 「え?」 『おれに飲ませたって』 「あー、……」 『いつ』 「……いつだったかなー?」 『最低、無断でそんなことするって』 「だって言ったらお前飲まないだろー?」 『そりゃそうだろ』 と、よいしょ、と起き上がるから スーツを履かせてやろうと ソファにかけていたスーツを取ると 履かせて、と脚を出すから 脚からスーツを通してやる 『なあ、』 裾から足が出ると その足をぴん、と伸ばしてくる 「なに」 『たってんの、どうしたの?』 と、その足をおれの股間に伸ばし すり、と足の指で硬さを確認してくる 「勃ってねえよ」 『なんで、さっき勃ってたのたな』 「タバコ吸って収めてきた」 『気持ちよくしてくれても良かったのに』 と、足の裏ですりすりとおれの股間を擦ってくる 「シバ」 『なに、』 「どエロい顔すんな、仕事中だろ」 『どえろいって、どんな顔してる、おれ』 「仕事戻せない顔、」 と、シバの隣に腰を下ろし 膝にシバを乗せると 首に腕を回して俺に抱きつき 首筋にスリスリと頭を擦り付けてくる 「シバ」 腰をさすってやると シバは少しだけ顔をあげ ちゅ、ちゅ、と 子供みたいなキスをしてくる 『ん、むっ、ちゅ、』 「シバ、だめだ、我慢できなくなんだろ」 『おれは、がまんできない、っんん、ちゅうして、』 しょうがねえな、と 唇にキスをしてやると はぐはぐ、と口を開けて 俺の唇を噛んでくる 『んむ、っ、んんっ』 その時だ ドアの外で バサバサっと音がして 俺もシバも固まる 唇を離し そっ、とシバを横に置き 大人しくしてろよ、とジェスチャーで伝え ドアを開ける 「…なにやってんの?」 「いや、ぶちまけちゃって」 と、ドアの隙間から覗くと ヤナギが書類をぶちまけていた 「なに、なんか用だった?」 「いえ、本当に通った時にぶちまけただけです。なんも聞いてません」 「そ、そうか?」 気まずい、これ、絶対聞いてたやつ 「あー、今日はもうシバ帰そうかな〜……俺も、続きは家でやるし」 「そうっすね、その方がいいと思いますよ………あ、変な意味じゃなくてシバくん疲れてるだろうし……」 「あー、うん。そうだよな。シバにはたいした給料出してないしなー。うん。帰す、今日は帰すわ」 「あー、はい。じゃあお疲れ様って言っといてくださーい」 と、ヤナギに手を振ってドアを閉める 「よし、帰るか、シバ」 『いいの、ヤナギさん仕事してんのに』 「いいんだよ。さっきも言ったけどお前にはたいした給料出してねえし。あんまり働かれたらもっと出さなきゃ労働基準法とかに引っかかりかねないしな」 『ふーん?』 と、わからない、と首を傾げるシバ シバはだいたい平均して週4くらいで働いてる といってもやることが多い時はちょっと多めに出勤させて少ない時は休ませたり 一応書面上では時短勤務の契約社員だ まぁ、シバも成り行きで働いているだけだから とりあえずはこの形で雇っている事になってはいるが… 「なぁ、そう言えばお前って、なんかやりたいことないんだっけ」 『うん、特にない』 「ふーん、」 まぁ、別にいいけど。 働かなくてもいいって俺は思ってるくらいだし 「帰り社用車で帰るか。おまえの運転で」 『なんで、』 「俺の車、左ハンドルだから運転しにくいだろ」 『ふーん、なんで俺が運転するの?』 「練習」 わからない、と首を傾げるシバ 俺は、シバを正式に雇っても、 逆に働くのを辞めてもいいと思ってる ただ、シバがどう思ってんのか考えた事なかったな ここで働いてていいのか、こいつ 他に、やりてえ事ねえの?

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