「ワンちゃん何食うー？」 『……ハンバーグ』 「オレはオムライスにしよー」 と、2人でファミレスに来ていた 「ドリンクバー取ってくるけど何がいい？」 『……野菜ジュース』 「りょうかーい」 と、ドリンクバーを取りに行ってくれる 早く帰りたかったのに ヤナギさんに連絡したらご飯食べてきていいよー、と言われたから 仕方なくそのまま2人でご飯に向かったのだ 「はー、酒飲みたいけどワンちゃん車だからお酒は今度にしようね」 『え、行かないけど』 「なんで？行くっしょ、普通」 『え？なんで、よくわかんないけど』 「えー、うそ。ワンちゃんって友達いないの？」 『うん、べつにいないけど』 「あ…え、なんかごめん」 なんで、こいつはおれと飲みに行くつもりなんだ？ものすごく意味がわからない 『べつに、困ってない』 「ワンちゃん友達いなくてお休みの日とかなにしてんの」 そう言われていつもの休みの日にのことを考える 特に、何にもしてないな DVD見てる日もあれば みなちゃんと話している時もある あとは、ちょっと前までは教習所に行ってたけど 今はとくに行かないから あいつに付き合ってどっかに連れてかれたりだ 『えー、べつに、普通に寝てたり、飼い主とどっかいったり』 「……え？なんて？」 『だから普通に寝てたりどっか連れてかれたりだって』 「じゃなくて、なに？飼い主？」 『あぁ、おれ、ペットだから』 「ん？んんん？ペット？」 と、わからないと言ったような顔で見てくる 『うん、おれ社長の家に住んでて、ペットだから』 「え？なんで？」 『なんで？えー？拾われたから？』 「んんん、よくわかんないわ、なにそれ」 なんでだ、 普通に 言葉の通りなのに 『そのままだよ』 「ふーん、ワンちゃん、社長のワンちゃんだったの？」 『……そうだけど』 「だから、オレにワンちゃんって言われんのやなの？」 『それは普通にやだ』 「ワンちゃんなんて名前なの？」 『……しば、いおり』 「うーん…じゃあいおりんだね！」 『は、え？』 「これからオレ、ワンちゃんの事いおりんって呼ぶからいおりんもオレのことあきらって呼んでいいよ」 『あきら……なんで？』 「あー、オレの名前、新月 彰っていう名前だから。いおりんはオレの弟だからあきらかあきらお兄ちゃんって呼んでね」 『いやいやいや、弟じゃねえし』 「でさあー、いおりんはペットだからこの会社で働いてんのね？」 『そうだけど、』 この人、あんまりおれの話聞かないな、 弟じゃないって言ったのもスルーされてどんどん次の話題に切り替わっていって 俺はついて行くのに精一杯だった 「なるほどねー、だからいおりんはキャストじゃなくて裏方なんだ」 『それは、おれがやだから』 「だって、いおりん膀胱ゆるそうだしキャストやったらぴったりじゃん。顔いいし。オレの次ぐらいに」 『べつに、』 膀胱ゆるくない、と言いたかったけど さっきのあのお風呂場での惨事のせいでなんにも言えなかった いや、あれはこいつのせいだし 『あきら……くんは、なんでこの仕事やってんの』 「あー、オレ、バイなんだけどね」 『えっと、うん』 「まぁ、あと顔がいいから向いてるかなって」 『え？いや、うん？顔だけだったら、他にお店あるでしょ？』 「いや、あと普通に最近オレの中でプチブームだったんだよね。おもらしオナニー」 『え、すきなの、漏らすの』 「うん。おしっこはね、嫌いじゃないよー。我慢して出すのきもちーし、ここ、接触はほぼ無しじゃん？だからちょうどいいかなって」 『へえ、』 「いおりんは好きじゃないの？おもらしすんの」 『嫌に決まってんじゃん』 「へえ、変なの」 と、言われたけど おれからしたらお前の方が変なやつな気がしてならない 「いおりんは？ゲイ？バイ？」 と、ハンバーグとオムライスが運ばれてきたタイミングで普通にそんな事聞いてくるから店員さんがおれらの顔を交互に見た 『え、おれ、どっちでも、ないけど』 「え？なんで？ストレートなの？なのに社長に飼われてんの？」 『ストレート？』 「あれ？いおりんって好きな人とかできたことあるの？」 『しらない、』 「え？ないの？」 『昔、親友だと思ってた男友達に告白されたけど友達としかみれなくて、断ったことがあるから、ゲイとかじゃない』 「それはさー、その友達の事が単純に友達としてしか見れなかっただけで恋愛対象が男か女かは別問題だと思うけど」 そんなの、よくわかんない なんだ、愛だの恋だの なんでそんな話を聞きたがるんだろ 「え？つかゲイでもないのに社長に飼われてんの？エッチな事されたりしない？」 『あいつは…おれがいやだって言ったらしない、』 「じゃあ普通に居候させてもらってるだけなの？」 『そうだけど』 「へえ、社長、いおりんの事大事にしてんだね」 『…そうなのかな、』 「なんで？大事にされてないって思うことあるの？」 『いや、そういう訳じゃないけど』 「絶対いおりんの事大事にしてるって！いおりんが大事だから、いおりんにキャストさせないんでしょ？いおりんが嫌がるだろうし、ほかの人にいおりんがおもらししてるかわいい顔見せたくないんだよ」 『そうなのかな、』 そんな事、 あいつはおれに一言も言ったことがない 「絶対そうだって、社長いおりんの事好きなんでしょ？」 『それは……ちがうと思うけど』 「なんで？」 『あいつ、おれより信頼してる人、いるし』 「え？そうなの？だれ？」 『……ヤナギさん』 「ヤナギさんって、柳瀬さん？」 『うん』 「そーなの？オレ柳瀬さんが会社にいるところはほとんど見たことないからさー」 『ヤナギさんは……おれより仕事ちゃんとできるし、信頼してるって、右腕だって言ってたから、あいつが』 「仕事での話じゃないの？」 『…そうかもしれないけど、』 あいつが 信頼してるっていうのを聞いたのが初めてだったんだ おれのことは そんなこと言ったことないのに おれはしょせん、あいつにとって ただの飼い犬で、暇つぶしで これから先、 あいつがずっと一緒にいるのは きっと、信頼してるヤナギさんなんだ 『おれはあいつのペットでしか無いから』 「だったらペット辞めたらいいんじゃないの？」 『やめる？』 「だっていおりん、社長に認められたいって思ってたら、ペットしてたら無理じゃない？」 『そうか、？』 「ペットやめて、1人前になったら、社長もいおりんの事信頼してるって言ってくれんじゃない？」 そうなのかな、 おれが、ペットやめたら おれのこと所有部じゃなくて ちゃんと、おれのこと見てくれんのかな 頭の中でぐるぐる考えてしまって 「まぁ、社長からしたらいまでも充分いおりんのこと好きで大事にしてると思うけど」 と、いう あきらくんの言葉は聞いてなかった