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第56話
「シバ、起きねえの」
『んんん、』
翌朝、仕事に行く前にシバを起こそうとするが
シバは一向に起きてこなかった
昨日夜寝れてなかったからな
のそのそと起き上がってきたシバはそのままソファに座ってぐでっとしていた
『雨降ってる?』
と、言われ
窓の外を見ると
雨が降っていて
「降ってるぞ」
と、いうとシバはため息を吐いて
ソファのクッションに寄りかかる
元気ないな、
「なに、体調悪い?」
『……ねむいだけ』
と、シバは言うけど
勝手におでこに手を当てる
「熱はねえな」
と、特に熱くはないな
シバの言う通り眠いだけか、と思ったが
シバはすぐにソファに丸まって寝た
「頭いてえの?」
『……うん』
季節の変わり目だしなぁ、
シバがさっき確認してきた通り雨も降っていた
こいつたまに気圧に負けるんだよなあ
「薬飲む?」
『……どうせ効かないから飲まない』
みず、と冷蔵庫から水を出してゆっくりと飲みはじめるけど
相当だるいらしく
水を飲むのもやめてソファに丸まった
早めに治ればいいが1日ぐでっとしてそうだな、これは
もうすぐシバを正社員にしようとしていたこのタイミングでの体調不良、
ゆっくりできるのは本当あと数日だった
休むか、俺も
と、ヤナギに
シバが調子悪そうだから休む
と、連絡を入れて
俺も今日は休みにする事にした
まぁまともに休んでなかったしな、ここ最近。
昨日半休しようとしたけど結局ほぼフルタイムで出たし
「シバ、なんか買ってくるか?食いたいもんとかある?」
『ない、』
どの体勢がいいのか
シバはソファの上でゆっくりごろごろと動き、
楽な体勢を探していた
結構辛そうだな、今回
『お前、会社は』
「んー、休み」
『会社行くからおきてたんじゃねえの』
「いやべつに。目が覚めただけ。元から今日休みの予定だったし」
『ふーん』
と、シバはソファでまたうつ伏せで丸くなった
そんな体勢逆につらそうだけど
シバの動きはそこで止まったから楽なんだろう
「水飲んどけよ」
『……飲ませて』
と、いうシバに水の入ったペットボトルを蓋を開けて渡すが
するりと手からペットボトルを落とし
シバの服を濡らし
ゆかに水が零れる
「あー、何やってんだよ」
『…だって』
「なに、力入んなかったか?」
『ちがうけど……』
「手滑った?」
と、ペットボトルを拾い上げる
「ほら、濡れてると冷えるだろ。先着替えてこい」
『………やだ』
「は?」
と、とりあえず足元がビシャビシャになるから
床の水の上にタオルを落として吸水させてたら
シバは濡れているスウェットのまま動こうとしない
「なに、頭痛くて動けねえの?」
『…ちがうけど』
「じゃあさっさと着替えてこいよ」
『………やだって』
「なに、シバどうした」
『なんでおれが着替えに行かなきゃなんねえの』
「なんでって濡れてんだろ」
体調が悪いせいか
ものすごく不機嫌なシバは
よくわからない駄々をこねだした
『だからやだ』
「じゃあ持ってきてやるから着替えるぞ」
『……うん』
と、シバは頷いたから
シバの引き出しを開けて
新しいスウェットを取り出し
ついでに床拭く用のクイックルワイパー見たいのも持ってリビングに戻る
「ほら、持ってきてやったからさっさと着替えな」
と、渡して
床の水をクイックルワイパーで拭いていく
『…やだ』
「はあ?何が嫌なんだよ」
『なんで床なんて拭いてんだよ』
「お前が水こぼしたからだろ」
なにやら今日は頭痛より
機嫌の方が重症のようだ
やだやだ、とシバはクッションに顔を埋める
そして、
じゅわ、とお尻を濡らし始めた
まもなくして
せっかく俺が拭いた床に
びしゃびしゃと水が溢れ出す
「あー、バカ、何漏らしてんだよ」
『しらない』
あー、もう
ソファカバーも洗濯だな、こりゃ
ぐすぐす、とクッションの隙間から
鼻をすする音が聞こえるから
もう今日ダメだな、こいつ
「シバ、起きろって」
『やだ』
「冷えるだろ、着替えろ」
『やだ』
「なんで」
『……なんでおまえがやってくんねえの』
「なんでって、」
それは…
シバの世話を控えるようにしてたから
シバだって俺がやらなければ自分でできるだろうし
『床なんか拭いてないでおれの事甘やかせよ』
そういうとシバはまたクッションに顔を埋めた
「シーバ、ごめん」
たしかに甘やかさないようにしていた
しかし、体調が悪いんだからシバだって甘やかされたいに決まっていた
『やだ、』
「泣いてんの」
『やだ、』
と、やだの一点張りだけど
「シバ、おもらししちゃったからキレイにしような」
『してない、』
いや、それはしてるだろ
シバの身体を起こし
シバの顔を見ようとするが
クッションに顔を埋めていて顔を見せない
ちゅ、とクッションから見えている耳とおでこにだけキスをして
シバのスウェットに手をかける
「お風呂がいい?タオルで拭いて欲しい?」
『…ふいてほしい』
「タオルな。あったかいタオルで拭いてやるから」
と、シバのスウェットと下着をまとめて脱がし
べしょり、と床の水溜まりの上に落とす
とりあえず乾いたタオルでシバの下半身を拭いて腰にタオルを巻いてやって
1度タオル用のお湯を取りにキッチンに向かうけど
『どこいくの、』
と、クッションから覗き込むシバ
「お湯、とってくるだけ」
『はやくして、』
「じゃあすぐ帰ってくるから」
と、洗面器とタオルだけ持ってリビングに戻り
ウォーターサーバーのお湯と少しの水で
温度を調整し
タオルを濡らしてシバの太ももから拭いてやる
「キレイになって気持ちいいだろ」
と、太もも
お尻
そして中心でふにゃりとしているシバの大事なところもしっかりと拭いてやる
全部キレイに拭いたあと
赤ちゃんにしてやろ、と
シバにテープタイプのおむつを付ける
『な、にやってんの』
と、違和感を感じたのか
クッションを外して俺の手元を見ていた
「甘やかしてんの」
『やだ、なに、』
と、テープタイプは以前おねしょが酷くなった時に使用していたが起きている時に履かされるのは慣れなくてとまどうシバ
「甘やかして欲しいんだろ、シバ」
『…だって、』
「ほら、寒くなるから早くスウェット履くぞ」
と、むりやりスウェットを履かせて
ようやくクッションを離したから
「シバ、バンザイ」
と、先程水をこぼして濡らした上も脱がせて替えてやる
「シバ、どうする、ソファとベットどっちがいい?」
『……ここがいい』
「じゃあカバーだけ剥がすから待てるか?」
と、いうと頷いたから
シバがよごしたソファのカバーを剥がし
床の水溜まりも処理して
汚したものを洗って洗濯機に突っ込む
ちょっと時間がかかってしまったからシバは怒っているかもしれない
しかし、ソファでぐでっと待っていたシバは
落ち着いたのか
怒っていなくて、じっと俺の事を見てくるから
抱っこしてやろ、とソファに座り膝の上に乗せる
よしよし、と背中を撫でてやると
ぐで、と俺に身体をあずけてきた
『なんで意地悪したの』
「してねえよ?」
『してたし。最近。抱っこしねえし、アタマも拭いてくんねえし、全部自分でやれって言うじゃん。さっきもおれ置いて買い物行こうとしたじゃん』
「甘やかしすぎだと思ったんだよ」
『足りない。もっと』
と、俺の首筋にグリグリと頭を擦り付けてくる
もう甘え癖も甘やかし癖も治すことは無理そうだと悟った
まぁ、なるようになるだろ
いいか、お互いストレス溜まるぐらいなら
思う存分甘やかすか
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