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第62話

『なあ、ポテトしなしな』 「俺何回も言ったろ。しなしなになるから寝る前に食えって」 『知らねえし…』 と、ポテトを食うシバは文句を言う割にはご機嫌で きっともう満足できるくらいには甘えたのだろう それなら、切り出してもいいかな… と、シバの様子を伺うと あむ、とダブルチーズバーガーにかぶりついていた うん、ご機嫌 と、シバの口の横についたケチャップを指で拭ってやって舐めとる 「うまい?」 『まぁまぁ…で、何見てんの、さっきから』 と、俺が見ていた事に気付いていたらしく 聞いてくるから まぁ、いつまでも隠しておく程の問題じゃないよな……と、ゆっくり口を開く 「シバ、俺出張いってくる」 『いつ?』 「明日の夕方から明後日」 『なんで、おれ明日休みだしお前明日半休って言ってたじゃん』 「うん、だから昼過ぎまでは家にいるって」 『なんで、おれは?』 「連れていこうと思ってたのにお前明後日自分で送迎入れたじゃん」 『だって知らなかったんだもん』 「留守番できる?」 『………そんぐらいできるけど』 と、言う割にはまたしてもものすごく 不機嫌顔になってしまった 「シバ、ごめんって。一緒に行きたかったよな」 『べつにそんなんじゃねえし』 「シバ」 『るすばんくらい、できるって』 そんな話をした後だからか 変な時間に寝たからかは分からないが シバはあの後寝れなくなったようで ずっとテレビを見ていたから 俺も付き合って夜更かしをする まぁ、明日の移動時間に寝ればいいか 『なぁ、どこ行くの、出張』 「箱根。近いだろ」 『温泉あるとこじゃん』 「知ってんの」 『バカにしてんじゃん』 「悪いって」 『…ヤナギさんと行くの?』 「まぁ、そうだな」 『……ふーん』 「なんで怒んだよ」 『怒ってないし、』 と、言いながらも明らかに不機嫌だ 『温泉まんじゅう』 「ん?」 『買ってきて。たくさん。あとなんか美味しいやつ』 「わかったって。全部買ってくる」 『約束な』 「ほら、シバ。抱っこ」 と、シバを抱き上げると 抱き着いてグリグリと頭を擦り付けてくる 『なぁ』 「なに、」 『お前はおれのだからな』 「なにそれ」 『うわき、すんな』 「何言ってんの?する訳ねえじゃん」 たかが、1泊の出張だ 大袈裟だ、それにこんな目が離せない 飼い犬がいるのに おれが浮気なんてする暇ないだろ ◇◆ 電車の時間が14時前だから 都心駅でシバと飯食ってから行くことにした 「ほら、シバ。急いで、メシ食う時間無くなるぞ」 と、夜更かしをしたせいで朝ダラダラしすぎて 家を出る時間がギリギリになっていた とりあえず先に荷物を持って玄関に行った時だ ようやくシバがリビングから出てきて よし、行くか、と荷物を持って立ち上がり、ドアに手をかけた時だ 『っあ、』 「なに、」 と、振り向くと バシャバシャ、と水が零れるような音 『んんん、おしっこ、漏れたぁ』 と、シバのがまさかのおもらしをしたのだ もうあと靴を履いて家を出るだけだったのに 「はぁ、なんで、」 『……だって、おまえが、急かすから』 こりゃだめだな、と 荷物を置いて靴を脱いだ 『んん、ぜんぶでた、』 「はぁ、でちゃったな、」 『んんん、もうやだぁ、』 「ここ、片付けるから風呂はいってこれるか?」 『……うん、』 とりあえずタオル、と タオルを持って来て 服をぬがし腰にタオルを巻いて 脚を拭いてやる シバ、意外にこういうおもらしは少ねえんだけど おねしょとか、超時間トイレに行けなくて漏らす事はあるが 家でいつでもトイレに行けるタイミングで漏らす事は少ない この前甘えたい時わざと漏らしたりしたけど…… 今回はわざとって感じでも無さそうだし、 寂しくて漏らしたかな ゆっくり飯食おうと思ってたけどこれは ちゃちゃっと食えるところだな、 それか諦めて電車で弁当かな 床を拭いて汚れ物を洗面台で 濯ぎ、洗濯機に突っ込み乾燥までして回す その間にシバは風呂から出てきたが 腰にタオルを巻いたまま落ち込んでいた 「シバ、ズボンどれにする」 『なぁ、』 「なに、」 『さっき、きゅうに漏れてやだったから、』 「うん、」 『おむつ、はいてく』 「そうか、」 と、おむつを履かせて おむつを履いてても分からないようにゆるいシルエットのズボンを履かせてやる 自分からおむつ履くって言うのは珍しい、 結構落ち込んでるようだ ほらいくぞ、と 靴も出してやると 履かせて、と言うから履かせて 紐も結んでやると ようやくちょっとだけ元気になる 『なぁ、ご飯食べる時間無くなった?』 「駅までタクシーで行くか。そしたら食えるから」 『うん』 と、家のすぐ近くの大通りに出て タクシーを拾って乗ると シバはピッタリと横にくっつくから 可愛くて 腰に手を回してやる 「シバ、何食う?」 『んんん、うどん』 「うどん?食いたいの?」 『うん、天ぷらのったやつ』 と、うどんを食うことに決定して うどんならさっさと食えるからちょうど良かった 確か駅構内にもうどんあったし 「シバ、ちゃんと鍵もってきたよな?」 『持ってきた、』 「帰りの電車賃、…いや、帰りもタクシー使っていいから」 『普通に電車で帰れるけど』 「いいから。帰りもタクシーで帰れよ」 『んー、わかった』 「財布は?持ってきた?」 『いや、持ってきてねえ』 「ええ、じゃあこれ、金渡しとくから」 と、財布から1万円出して持たせてやる 大丈夫かな、こいつ 財布も持たないで出てくるとか 『交通ICなら持ってるけど』 「じゃあ定期ケースに入れとけ、落とすから」 『……わかったよ』 と、言われた通り定期ケースに入れたシバ あー、心配だ やっぱり日程ずらしたくなってきた いや、今からでも遅くねえからシバの方を連れてくか?代わりの送迎手配して……

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