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第85話

「つか、お前また深夜帯入れてんの。なんで」 『……お金、貯めようと思って。いいよ。今日はちゃんとタクシーで帰るから先寝てて』 と、シバは申し訳なさそうに言う 「……じゃあ俺の車置いてくからお前それで帰ってこい」 『お前は、どーすんの、帰り』 「今日は元からヤナギと視察予定あったからそのまま電車で帰るか適当に送ってもらうし」 『ふーん、』 と、シバは不機嫌に言った 「なに、なんで不機嫌なんだよ」 と、ぐりぐりと頭を撫でる 『お前の車ハンドル左だからやっぱりやだ』 「ええ、そろそろ慣れれば。俺の車の運転」 『俺乗るのこっちだからいいし』 助手席で、少しだけシートベルトを握った なんだよ、かわいいやつ 「シバ、あんまり遅い時間入れんなよ。社長としては助かるけど」 『なんで?』 「だってお前最近帰ったらすぐ寝るじゃん」 『そうだけど』 「ぜんぜんエッチなことしてねえだろ?」 『明日は入れてないから……明後日休みだし』 と、シバは少しもじっとしながら言った なんだこれ、かわいいんだが…… ◇◆ 『んんん、』 と、翌日 朝からシバがぐずっていた おねしょもしてないのに 朝からこんなに不機嫌な事は珍しい 連日の深夜帯の勤務で疲れているのだろうか 「どうした、体調わるい?」 『んんん、なんか、だるい』 「大丈夫か?休む?」 『行くけど、』 シャワー浴びてくる、とフラフラしながらシャワーに向かうシバ 気圧か? 雨とかは降ってねえけど 本当にシャワー浴びたのかってくらい 一瞬で出てきて ソファに腰を下ろした 「顔色良くねえなあ」 『んんん、だるいだけ。シャワー浴びたらちょっとマシになった』 「ええ?本当に平気か?」 『んんん、なんか重いだけ。大丈夫』 「重い?」 『身体がおもい』 「ええ、本当に大丈夫かよ」 今日はゆっくりさせてやろ、と 朝飯は家で食うことにして 冷蔵庫を開ける 「シバ、朝飯何食いたい?」 『んんん、あんまりお腹すいてない』 「ええ、なんで。とりあえずゼリーだけ食っとけ」 と、栄養ゼリー飲料を渡すと それを咥えながら のろのろと着替えはじめた 俺も適当に朝飯は済ませ シバには途中で腹減った時ようになんか食いもん持たせとこうかな、と健康補助食品を 出しておく 『なぁ、ネクタイして』 と、シバが今日のネクタイを選んで持ってきたから 結ぼうと シバの首にネクタイを回す 「やっぱりお前顔赤くね?」 『…赤くねえよ』 「熱は」 『ねえもん』 と、ぷん、とそっぽを向く やっぱりちょい不機嫌だな 甘やかしてやろ、と ネクタイを結んだあと おでこに手を当て 熱が無いか確認しそのままぐしゃぐしゃと頭を撫でてやる うん、熱はなさそうだな するとシバは ふぅ、と少し力の抜けたなんだか泣きそうな表情を見せる 「だっこ?」 と、手を広げて聞いてやると 手のなかに飛び込んで来て 首に腕を回し いつものように身体をぐりぐりと擦り付けながら匂いを嗅いでくる よしよし、と背中を撫でてやった時だ ぷしゃっ、と下半身に何やら温もり 『わっ、』 「え?」 シバは驚いた様に俺から離れて数歩後ずさる 後ずさったらシバの股間は濡れていて ちなみにシバがくっ付いていた俺の太ももも濡れていて、 さらに ちょろちょろ、と水が零れる 「漏れたか?」 『んんん、なんで、』 「やっぱり調子悪いか?」 と、聞いてもシバは首を横に振る 意図せぬおもらしに今にも泣きそうな顔をしていた 「洗ってやるから、」 『…自分でできる、』 「そうか?じゃああんまり時間ないから俺ここ片付けるけど。本当に仕事行けるか?」 『うん、』 と、シバは少し項垂れながらシャワーを浴びに向かう おれはまだ着替えて無かったから良かったが スーツにおもらししちゃったから、 ちゃんと処理しなきゃな、と思いつつも そんな時間がないから とりあえずシバのスーツは水につけておいて 後でクリーニング出すしかねえな 俺は濡らしたタオルで体を拭き 身支度も整えた というかそこまで今回は量も漏らさなかったようだ なんだろ、嬉ションかな 触ってた時だし 急いで出てきたシバは ワイシャツも濡らしてしまったらしく インナーのシャツだけで バタバタと新しいワイシャツやスーツを出す 『なぁ、……おむつ履かせて』 「…心配か?」 と、用意した着替えを手に持って 俺の元へおずおずとやってきて 落ち込んだ顔で聞いてくるから そう聞くと こくん、と頷くから 薄型のおむつを履かせてやろうと 片足ずつおむつを通して 上げていくと 少しだけどシバの物が勃起している事に気付く うーん、時間ないよな、と 気付かない振りをしてそのまま上までおむつを上げスーツも履かせてやって もう一度ネクタイを結び直す 『おれ、おしっこしたくなかったのに漏れた、』 「疲れてんのかもな。帰ったらゆっくりしよ」 と、シバの頭を撫でてやると こくん、と頷く まぁついこの間まで 寝たい時に寝てたような生活してたしな… ここ数日のオーバーワークで休みの前に少しガタが来たのかもしれない 今日は残業なしでサッサと帰った方がいいな 会社に行く道中も シバは窓の外をずっと眺めていて元気が無かった 身体のだるさも多少あるようだが それよりさっきの失敗で少し落ち込んでいるのだろう 会社につきエレベーターに乗るまで シバはほとんど話さなくて 「シバ、バッグに健康補助食品入れとくから腹減ったら食えよ」 『んんんー』 と、気のない返事をするシバの頭を撫でてやって 「あと、おもらししたらすぐ俺のところ来いよ。替えてやるから。今日薄型だからいつもよりは許容量ねえぞ」 と、耳元で伝えると 恥ずかしいのか顔を赤らめてこくん、と頷いた じゃあ仕事がんばれ、と手を振って送り出したが心配だ、これは 「あー、社長、おはようございます」 と、社長室に行くと ヤナギが来て コーヒーを入れてくれる 「おー、」 「社長が犬の話ばっかりするんで俺もついに犬買っちゃいましたよー。見ます?ポメ」 と、携帯をパカパカさせながら上機嫌だが 申し訳ないが俺は少し上の空だった 「ヤナギー」 「なんすか?」 「なんかだるそうに唸っててさー。食欲もあんまねえみたいだし、いきなり漏らしたりもしたんだけどなんだと思う?熱は多分ねえんだよなあ」 「あー、それ発情期じゃないっすか?」 「発情期?」 なんだそれ、 「わんちゃんだっけ、猫ちゃんだっけ。発情期そんな感じで大変そうですよねー。うちのはまだ来てないから去勢するか迷い中っす。あれ、社長、ペット飼いだした……あー、いや、なんもないっすー」 と、ここまで来て ヤナギの話に上の空だった事に後悔した 「ヤナギー、ヤナギのペットの写真見せてもらおうかなー、なんて」 「あー、はい。めっちゃかわいいっすよー。オスのポメラニアンで名前はアサリ。略してあーちゃんっていうんですー」 と、少し目を逸らしながら携帯の画面を見せてくれた いや、うん、 さすがに発情期はねえだろ。 犬みたいだけど一応人間だし……

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