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第89話

スーパーに行くと ジャーマンポテトの材料や 適当に食材をカゴに詰めていく 『なあ、お菓子買う』 「子供かよ。2つまでな」 俺の了承を得ると シバはお菓子コーナーに向かった そして暫くすると 卵型のチョコレートの中にフィギュアが入ってるお菓子を2つ持ってきてカゴに入れる 「なに、これ欲しいの?」 と、1つ手に取って見る 『うん』 「お前ゲームやるっけ?」 と、パッケージのゲームキャラを見ながら聞くと 『最近やんねえけど友達いる頃はやってた』 と、言われ 何ともせつない気持ちになり パッケージの赤いシャツにオーバーオールを着ているおじさんを見つめてしまった 今度ゲーム買ってやるかな…… 「他は?欲しいもん」 『んん、とくに』 じゃあ後は適当に酒とツマミ 健康補助食品か、と カゴに入れていく 『おれも酒飲む』 「なんで」 『大人だから』 ってお前酒飲むとすぐ寝るしおねしょすんじゃん… 「じゃあアルコール弱めのな」 と、弱めのカクテルを選びカゴに入れる まぁ今後付き合いとかで飲む機会も増えるかも知んねえし、それまでにはある程度慣れといた方がいいよな レジに向かうとシバはちょろちょろと退屈そうに俺の周りを歩く そして、時折膝をもぞっと擦り合わせる事に気づいた そういや家出る前にトイレ行かせなかったな 「シバ、トイレは?行きたくなりそうだったら今のうちに行っておきな」 『うん、行ってくる』 と、素直にトイレに向かったと思ったら すぐにシバは帰ってきた 「なに、出なかった?」 『入んなかった』 なんで、と聞こうとしたタイミングで レジの順番が回ってきて とりあえずカードで支払う レジを終え 袋詰めを開始したタイミングで シバは俺の顔をじっとみた 「どうした?」 『…なぁ、おしっこしたいから着いてきて』 「ええ、なんで。ちょい待って。我慢できる?」 と、聞くと うん、と頷くから順番とか気にせず急いで袋に食材を詰める 「なに、行ったんじゃねえの?」 『行ったけど…なんか暗くて1人ではいるのやだったんだもん』 と、もじもじと膝を擦り合わせる コンビニとか 外のトイレは結構普通に入るが ここのトイレは怖かったのだろうか、 あんまり怖がりじゃねえから そういうの気にしないと思ってたんだが 「暗いトイレ怖えの?」 『……うーん、なんか』 と、言ってシバがポケットに手を突っ込むのが見える 結構ギリギリのやつだな、これ ようやく袋詰めを終わらせ シバの腕を引くと 一瞬ビクリとする 『っ、』 「…悪い、大丈夫?」 『んんん、』 大丈夫かわからないが 猶予が無いことは分かって そのままシバの腕を引いてトイレに向かう 「シバ、もうちょい我慢な」 『うん、』 「ほら、誰もいないから抑えときな」 『んんん、』 と、否定とも肯定とも取れる返事をするシバ ようやくトイレに付くと シバは急いで 便器の前に立ち しょろしょろとおしっこを出し始めた トイレの中も人がいないし 確かに薄暗くてちょっと入りにくい雰囲気かもな まぁとりあえず間に合ったか 『…ふぅ、』 「大丈夫か?間に合った?」 『パンツ、ちょっとだけ濡れた』 「見せて、」 と、シバのスウェットのウエストのゴムを引いて中を見ると 下着の前部分に5センチほどのシミがある あー、またチビったか 「我慢出来る?帰るまで」 『うん』 と、我慢させることにし 車に向かう事にした まぁ家まで車で5分程の距離だ 帰ったらとりあえずこのまま風呂入れるか 落ち込んでいるのかずっと黙っていたシバは 車に乗るとようやく口を開く 『おれさ、』 「うん、なに?」 『高校、1年の時』 「うん、」 『理科の授業でね、B棟の隅っこの教室使ってたんだけど』 と 、B棟はよくわからないが 多分普段のクラスの教室があるのと別の棟なのだろう 『それで、授業のあと、おしっこしたくなっちゃって、そのままB棟の理科室の近くのトイレ行ったんだけどね』 「うん」 と、なんの話しをしているのだろうと思いながらも 運転しつつ耳を傾ける 『そのトイレ、B棟のトイレだから日当たり悪くて薄暗くてね。使う人も少なかったんだけど。そこでさ、あっちゃったんだよね……』 と、不意に怖い話が始まった 「……何に、」 『おれ、我慢できなくて、今日みたいにちょっとだけちびっちゃってて……とにかく急いで入って、トイレの前に立っておしっこしてたのね』 「……うん、それで?」 『そしたら、いきなり、後ろの個室が開いて』 と、シバは はぁ、と息を吐く 「うん、」 『……歴史の、男の先生出てきた』 「え、は?」 『それでね、おれのおしっこしてるところ、じーっとみて、でも、おれおしっこしてるから動けないじゃん?』 「…あ、ああ」 『それでね、おれのちんぽ持ってる手に先生が手重ねてきて…「ちびっちゃったね」って言われたんだよね』 「…………」 『だからおれ、ああいう暗いトイレ怖いんだよね、』 と、衝撃的すぎる ある意味怖い話を聞かされ なんだか凄くげんなりしてしまう 「それって……最早、性被害だろ」 『うーん、あの頃はよくわかんなかったけどそうだよね』 「誰にも言わなかったのか?」 『いや、おれちびったじゃん?誰かにばれんの恥ずかしくて……いま、初めてこの話した』 「シバ、これからはなんかあったらすぐ俺に言えよ」 『いや、そんななんもないって。滅多に』 「…だとしても」 顔がよすぎんのも やっぱり大変なんだな、 「あと暗いトイレもう行かなくていいから」 『……行かなくていいって』 「俺と一緒じゃない時は入らない事」 『心配しすぎだし』 と、シバは笑った んだよ、 そんな話聞かされたら心配すんだろう この前だって痴漢にあったばっかりだっていうのに

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