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第106話

『なぁあ、』 「なに、」 『おれ、おねしょ、止まらなくなった』 と、寒くなってきたからか 毎日シバはおねしょをするようになり 夜中に目を覚まして落ち込んでいた そう言えば去年もこの時期あたりしょっちゅうおねしょしてたよなー 季節の変わり目の、寒くなってきた時期 俺の誕生日辺りからだな、ちょうど 「シバ、夜水分控えて寝る前ちゃんとトイレいったりすれば治るから。あと朝、ちゃんと起きてトイレ行け」 と、頭を撫でる おむつは履かせたくないのに シバは夜になると不安になり 勝手におむつを履くようになって 毎回おむつにおねしょをする まぁ、片付けは楽だが おむつ癖が悪化してる気もする 夜中に起こされ シバの下半身を拭いてやって 朝まではテープタイプのおむつを付けてやる 朝もう一度濡れていることもあれば せっかく目を覚ましたのにそのままおむつにしたりするから余計治らないんだろうけど シバは朝が滅法弱いから 起き上がるのがめんどくさいのかそのままする事も増えているようで、 ベッドの外が寒いから余計出たく無いと 起きてるか起きてないかわからないような状態でおしっこ、する、と呟いてそのままおしっこを漏らす その度に俺は少し怒り、 シバはシャワー浴びた後ようやく冷静になり落ち着くのだ 「今日はちゃんと起きてトイレ行けよ」 と、新しいおむつをつけおわり ぽんぽん、と叩くと 顔を赤くする 『あさ、寒いんだもん』 「じゃあ部屋暖かくしとくから」 と、エアコンをセットして今日はちゃんと朝行くことを祈る あまりに治らないようなら 夜中のおねしょが1回になったらパンツ履かせるか… 『うん、おきる、』 と、今は起きる気があるようでとりあえず安心して再び眠る事にした ◇◆ 「ほら、シバ。そろそろ起きねえと間に合わねえよ」 と、シバの事を起こし股間を撫でてみるとカサっと音がして今日は2回目のおねしょをしていなかったことがわかる 『んんん、おきる、』 と、目を擦って起き上がり ぼー、と壁を眺めていた 「起きたらはやくトイレ行って準備しな」 『なんか、あったかい、』 「なにが?部屋?昨日夜中エアコンセットしただろ、朝寒いとお前起きられねえから」 『んんん、おしっこ、する、』 「おしっこ出んの?はやくトイレ行け、そこですんなよ?」 『んんん、やだ、ここで、おしっこしたい、』 と、再びその場に横になる 「は?ちゃんとトイレ行くって約束しただろ」 『や、』 と、抱き枕に抱きついた 「シバ、そこでおしっこしたら怒るぞ」 『んんん、やだ、おこんないで、』 と、ぐすぐすと泣き出し 1度身体がぴくりと震え力を抜いたから 恐らくおしっこをし始めた 「シバ、おい、そこですんなって言ったよな?おい、聞いてんの?」 『んんっ、おしっこ、した、』 「シバ、おしっこしたじゃねえよ。そこでしたら怒るって言ったろ?俺替えてやんねえから自分でどうにかしろ」 と、言い残し ため息を吐いてリビングに先に向かう 言い過ぎたか、とも思ったが ちゃんとそこでしたら怒るって言ったしな…と もやもやと考える いや、怒った方がちゃんとトイレ行くようにするかもしんねえし と、俺ものろのろと会社に行く準備を始め 髭をそっていると もじもじとシバが起きてきた 『なぁあ、おしっこでちゃったから、はずして』 「シバ、俺ちゃんと言ったよな?」 『……だって、おしっこしたかったんだもん、』 「シバがわざとおしっこ漏らしたんだから自分でどうにかしな、俺も自分の準備あるし」 『んんん、なんで、』 と、俺の後ろの床にぺたん、と座って駄々を捏ねているが 髭を剃り終わり 歯を磨いていると シバは不思議そうに俺の事を見てくる 『なぁあ、お風呂入るからはずして』 「やだよ、自分ではずしな」 『なんで、?』 「怒ってんだよ、シバ」 『……やだ、』 「やだじゃねえの」 んんん、と床にごろごろと転がり 泣きそうに目を擦るシバ 「シバがわざとおむつでおしっこするから怒ってんだよ、俺は。夜に約束しただろ」 『だって、』 「だって、なに?」 『んんん、』 「シバ、間に合わなくなるからシャワー浴びてこい」 『はずして、おむつ、』 と、ぐすぐすと泣き出して これは本当に遅刻するな、と諦めて シバのおむつを外してやると ぐすぐすも泣きながらシャワーに向かうから ため息を吐いて おむつを処理して とりあえず今日はシバの好きなフレンチトーストでも食ってから行くか、と朝飯を作るのを諦めた シャワーから出てもシバは落ち込んでいて 1人で黙々と髪を乾かしてセットして 着替え始める 「シバ、ネクタイどれにすんの」 『……これ、』 と、控えめに渡してきたから それを巻いてやる間も シバは落ち込んで下を向いてる 怒りすぎたかな、 いや、 今回は俺もちゃんと言ったし…… 「朝飯、外で食ってこ」 『…うん、』 と、お互い準備を整えて 家を出て車に乗り 出発してもシバはずっと無言で ぐすぐすと鼻を啜ってる フレンチトースト食ったら機嫌直るかな、と フレンチトーストの店に来ても シバはずっと無言で 「フレンチトーストでいいか?」 と、聞くと ふるふると首を横にふる 「なに、何がいいんだよ」 『しょくよくない、いらない』 と、マスターにとりあえず 俺のモーニングプレートと 「じゃあとりあえずこいつは何かカロリーあって温かい飲み物だけ」 と、マスターにお任せして注文する 「……シバ、いつまでそうしてんだよ」 シバは待っている間も おしぼりをころころさせていて 時折泣きそうな顔で俺の事を見る 『だって、』 「俺、怒るって言ったのにシバがわざと漏らしたんだろ」 『……それは、』 「夜もちゃんと約束したよな?」 『した、』 「覚えてるなら守らなきゃダメだろ」 と、ついにシバほぼろぼろと大粒の涙を流した あー、もう、外なのに ほら、ととりあえず手を伸ばし ハンカチで涙を拭いてやると シバはハンカチを受け取り自分でぐしゃぐしゃと涙を拭いた 『なぁ、おれ、もうしないからおこんないで』 「……わかったよ、もう泣くなよ」 『んんん、ごめんなさい、』 と、シバが謝るから 怒りすぎたか、とぐしぐしと頭を撫でてやる ようやくシバが落ち着いた所で 「お待たせしました、モーニングプレートのコーヒーセットと、」 と、マスターの弟子の男の子が食事を運んできて 「あとこちら、ココアです。苦手じゃなかったら付属のジンジャーソース入れると温まるので落ち着くと思いますよ」 と、シバの前にココアを置いた 「ありがとう」 「はい、ごゆっくり」 と、人の良さそうな笑顔を見せて行ったけど シバはずっと下を向いていた 「お前ジンジャー大丈夫だよな?いれる?」 と、シバが頷いたのを確認して ジンジャーソースを入れて混ぜてシバに渡すと 『おれ、おまえにおこられると、どうしていいかわかんなくなる、』 「シバ、悪いことしたらちゃんと謝れば俺もいつまでも怒んねえから」 『うん、ごめんなさい、』 シバは1口ココアをのんで ふぅ、と小さく息を吐いた ようやく、落ち着いたか、と 俺も安心してモーニングプレートを食べ始めた

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