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第116話

「急で悪いんだが熱出ちまってさ、」 「ええ、珍しい。大丈夫ですか?」 「うん、悪い。今日頼むな」 と、寝室に戻ってヤナギに電話をする 「シバ、休むって言ってるけど行かせようと考えてるから」 「大丈夫ですか?」 「まぁ、シバにはちゃんと着替えも持たせたし。言い聞かせとく。もしもの事あったらヤナギ頼むな?」 「……じゃなくて、社長の方ですよ」 「あー、それはまぁ。薬飲んで大人しくしてるわ」 「1人だと不便だと思うし、シバくんお休みしてもいいですけど」 「シバは休もうかなって言ってたんだけどさー、」 「社長もシバくんが1人で会社来るよりは家にいた方が安心じゃないっすか?」 「………確かに、いや、でもなあ、」 そう言われてみればそうだな、 シバ1人で会社なんて行かせたことねえからな…… いや、別々に時間ずらして出勤とかはした事あるけど。 丸一日シバだけってのはないよな うちに居たらおもらししても片付けてやれるし… 「……いや、でもそれって……社会人として、というか社長としてどうなんだ?それにシバだってちゃんと働けるだろ、うーん、」 甘やかしすぎというか 逆に言えば甘えすぎというか そのときだ シバの足音がして ガチャり、とドアが音を鳴らす シバ来るか、と 「ヤナギ、ちょっと待ってて」 と、電話を伏せてベッドに置く 『なあ、おれ行くけど』 と、着替えて様子を伺いに来たシバ 「行くか?」 『だって行った方がいいんだろ?』 「……いや、迷ってる」 『…おまえは、きもちわるくない?』 「気持ち悪くないよ」 『頭いてえ?』 「まぁ、言われてみればちょっとな」 『あつい?さむい?』 「今はちょっと熱いな」 着替えてるってことは、行く気だろうな そうだよな、行かせるか 俺社長だし 「シバ、おむつ履いてる?」 『うん』 「今日はおしっこ早めにいけよ。失敗しても俺キレイにしてやれないから」 『大丈夫だって、そんなん』 「おしっこは?ちゃんとした?」 『さっきもれちゃったからもうでない』 「…そうだな、」 『しんぱいしすぎ、』 「………じゃあネクタイ持っといで、巻いてやるから」 『うん』 と、俺の様子を伺いに来たらしいシバは すぐにネクタイを取りに向かう シバが部屋を出ていったのを確認して もう一度電話を手に取る 「ヤナギ、シバ今日行く事にしたからフォロー頼むな」 「……わかりました、まぁ今日、週の中日で忙しくないんで大丈夫そうだったら半休とかで帰ってもらいますね」 「おー、ありがとな」 「はい。あと、社長」 「なんだ?」 「電話…ミュートとかにしないと、会話全部聞こえるから気をつけた方がいいっすよ」 「………次から気を付ける」 「はい。じゃあお大事に」 「おー。なんかあったら連絡して」 「はーい、また明日」 と、ヤナギは電話を切った そのタイミングで、シバが戻ってきて ネクタイを俺に渡してくる 『これにする』 「うん」 と、シバにネクタイをして 「ヤナギに確認したら、今日あんま忙しくないから大丈夫そうだったら半休にしてくれるって」 『じゃあ終わったらすぐ帰ってくる』 「うん」 『なあ』 「なに、」 『おまえ、1人で寂しくねえの?おれ、熱でてる時ひとりやだけど』 「うーん、まぁ、そうだなー」 いや、俺も一人暮らし歴長いからな、 今更感はある 『なんかあったらすぐおれに連絡して』 「わかってるよ」 『あと、なんか欲しいもの。メールしといて。帰り買ってくるから』 「おお。助かる。ありがとな」 『うん』 と、ネクタイを巻き終わっても シバは中々部屋から出ていこうとしないと 「…シバ」 『んんん、行きたくなくなってきた、さびしい』 「なんでお前が寂しがるんだよ」 と、思わず笑ってしまう 『だってえ、』 「じゃあシバ。行く前に少しだけ抱っこさせて」 『うん、』 と、シバは頷き ベッドに座る俺の上に跨る よしよし、と背中を撫でると シバはぎゅっと俺に抱きついてきた そして、ぐすり、と少しだけ鼻を鳴らす 「泣いてんの?」 『……泣いてねえし』 「シバ行っちゃうの俺さびしいかも」 『……なんで今更そういう事いうの』 「…冗談だって。ほら、俺のために働いといで」 と、ぽんぽんと背中を叩く 『キスして』 「……うつったら困るだろ、」 『んんん、おまえのせいでさびしくなってきた』 「ごめんて、シバ。ほら、行っといで」 と、おでこにキスをすると うううん、と否定とも肯定とも言えない返事をして ゆっくりと、俺の上から降りる 玄関まで行くか、と ベッドから降りる 『…寝てろよ』 「シバ見送ったら寝るから」 『ちゃんと薬飲めよ』 「わかってるよ」 玄関まで行きシバが靴を履くのを見届ける 『なんかあったらぜったい連絡しろよ』 「わかったって。ほら、行ってらっしゃい」 『うん、いってくる、』 と、会社に行くだけなのに 妙に送り出すのに時間がかかってしまった 玄関のドアが閉まったのを見届けると 冷蔵から水を出しベッドに戻る シバを送り出し 一先ず安心したのか どっと疲れたというか 体調が悪いのを自覚したのか 身体が一気に重くなる 「あー、だる、」 と、直ぐに寝そうになる はやく治したいから病院行くべきかともおもったが もうだるくて動く気にもなれない 薬飲むのもだりぃ、 シバ早くかえってこねえかなあ

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