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第156話

「え、なんかイケメンがいるんだけど」 と、昼飯のチャーハンを食ってると いきなり帰ってきた ミサがどさり、と荷物を落とした 「あらミーちゃんおかえり。連絡してくれたら迎えに行ったのに。お兄ちゃんが」 「なんで俺なんだよ」 「いいじゃない。車乗ってきてんだから」 「え、なんで大晦日にイケメンいんの?え、ちょ、天国?わたし年越せないの?」 と、俺らの言葉なんか耳に入っていないミサは じろじろとシバを見るから シバは もぐ、と口にチャーハンを含んだまま固まってる 「ちょ、ミサ。やめろ」 「え、何このイケメン。どこから降りてきたの?」 「シバくんよー。ほら、シバくん、玉子スープできたわよ」 と、シバにスープを出す母さん ようやくごきゅん、とチャーハンを飲み込んだシバ 恐らく今口に入ってたやつあんまり噛んでない そして、ごし、と口元を拭き 『………し、ば、いおりです、』 と、ようやく口にした自己紹介 「どうしたの、これ」 「ミサ、これじゃないだろ」 「だからシバくんよ、ミーちゃんにも言ったでしょ?お兄ちゃんが預かってる子連れてくるって」 「え?お母さん子供って言ってたじゃん!思ってたのより15歳くらい上なんだけど!しかもイケメンだし」 「どんだけ子供想像してたんだよ……兄貴達にも言ったけどなんで俺がそんな子供預からなきゃいけねえんだって」 「いや、お兄ちゃんの事だから昔の女の子供とか…」 『むか、し、のおんな、』 「……やめろ、」 なんてこと言うんだ 俺は案外真面目だし 「ほら、シバ、スープのみな」 と、スープを飲ませようと はらぺこあ〇むしの子供用スプーンじゃなくて 大きなスプーンを渡す こく、と頷きスープを飲もうとするが ミサはしゅぱ、とシバの隣に腰を下ろし ぐい、とシバの肩を掴み 自分の方を向かせほっぺたを両手で挟み マジマジと見る 「……すっごい顔してる。え?毛穴とかどこやってんの?なんで無いの?つか何歳なの?」 『にじゅう、』 「コラ、ミサ!シバいじめんな!」 「へええ、」 と、ミサはフニフニとシバのほっぺたをつまむから シバはビクッと肩をゆらす、 『……みーちゃん、』 「……なんか私の名前呼んだ?私やっぱり今日でおしまいなの?召されるの?」 と、そのままフニフニとシバのほっぺたをつまみながらいうから シバが視線を泳がす 『……あ、きら、くん、みたい、』 「………だれ?あきらくんって」 「………同じ会社のいじめっ子」 「………いじめっ、こ?」 と、パチンっとシバのほっぺたを離したから あう、とシバはほっぺたを撫でる 「ほら、ミーちゃんもご飯食べるなら早く荷物置いて来なさい!」 と、母さんの言葉でミサは荷物を置きにフラフラとリビングから出ていって シバはポカン、と口を半開きにして俺の顔を見る 「シバ、ごめん。驚いたな?」 ほら、食いな、と半開きの口に チャーハンを突っ込んでやると ようやく食べ始めた しかし、しばらくして ミサが戻ってきて シバの隣に腰を下ろすと ピクっとまたシバの肩が動く 「…え?お兄ちゃんが一緒に住んでるの?毎日こんなイケメン見てよく生きてるわね……」 と、やっぱりまだ混乱していた 『しば…いおり、です。急に来て、ごめんなさい、』 「こちらこそ帰ってきてごめんなさい」 「落ち着け?ミサ」 「…正直ちょっとまだ落ち着けないけど」 「シバが驚いてるから」 「えっと、シバくん?」 『はい、』 「ミニトマト食べるわよね?ほら、沢山おたべ」 と、サラダのミニトマトをシバに取り分けるミサ なんでうちのやつらはみんなシバに食わせようとすんだよ、 シバは言われた通りミニトマトを食べて 1度スプーンを置く 『えっと、みーちゃん…?』 「なに、?」 『あきらくん、いじめっ子じゃなくて…いや、いじめっ子だけど、そういう意味じゃなくて、あきらくん、おれの友達…です、』 「そうなの?それで、なんで︎︎︎︎私がそのあきらくんみたいなの?」 『…距離の詰め方がえげつないから、』 「……それ、なんかどっちもどっちっていうか?」 『…え、なんか、ごめん、』 「ようやくちょっと落ち着いてきた…シバくん、ごめんね、驚かせて」 と、ミサは出されたチャーハンを食べ始めた 「ほら、もっとミニトマト食べて」 と、シバのお皿にまたミニトマトをのせるミサ 『そんなトマトばっかり食べれない、』 と、珍しく抵抗を見せ トマトを乗せようとするミサの手を止めたシバ お、断れるのか 「ミニトマトおいしいでしょ?」 『おいしいけどトマトいっぱい食うと寒くなんじゃん』 「…天使、」 『え、いや、』 と、視線で助けを求めてくるシバ 一足先に食べ終わった 俺とシバは 「シバ着替えて出かけよー」 と、シバを着替えさせて 買い物という名の避難をする事にした 「シバごめんな?驚いたよな?」 『うん、びっくりしたけど…平気』 「あいつちょっと遠慮ねえって言うか」 突拍子ないというか シバが言ったあきらくんみたいっていうのはそういうところだろうか 『あれだな、みーちゃんはあんまり似てないね、お兄さんとはそっくりなのに』 「ミサは母さん似だからなー」 ずっと部屋着というか スウェットと俺のジャージを履いていたシバは 出かけることになってようやく着替えて 外出する前にトイレに行かせる 『どこ行くの?』 「買い物。年越しそば買っておせち取りに行く」 『へええ、』 「シバは?どっか行きたいところある?」 と、聞くと ふるふると首を振る 「…本当に買い物だけだから留守番するか?」 と、念の為に聞くと すごい勢いで首を横に振った まぁ、そりゃそうか 普段の家だとダラダラしてなんもない時は買い物だけだと留守番しながらテレビを見てたりするがさすがにそうは行かないらしい まぁ、家に置いてくとミサに何されるかわかったもんじゃねえしな 「ミサ怖いもんなー」 『……こわくは、無いけど。うちの姉ちゃん達とちがってびっくりした』 なるほど、 シバが家を出て行き倒れた理由か そしてミサ相手には抵抗したりとか 敬語じゃなくて過度に人見知って無い感じがしたのも納得する 普通に母さんと同じようにミーちゃんって呼ぶし ミサほどじゃないにしても女の子たちはシバの事をほうっておかないだろう あれ、シバって実は女の扱いとか慣れてんのか? 年上には可愛がられるし 歳が近いミサみたいなのには遠慮しないけど させたいようにさせるし 「シバって、」 『なに?』 「女、苦手じゃねえの?」 『んん?別に普通。ただ、なんだろ、他の人がいうみたいなかわいい女の子ってのはよくわかんない。姉ちゃん達見て育ってるから』 「………なるほど」 姉ちゃん達、 まぁ、俺もミサを見てるからなんとなくわかるが 思春期の男子特有の女子に対する幻想とかとくに無くここまできたんだろう ……結局、 シバって男と女どっちが好きなんだ?

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