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第158話
『もうあける?』
「あと30分くらい」
そばを食って
こたつで年末番組を見ながら寝かけていたシバを1度部屋に連れて行って
年越しはもう
諦め寝させようとしていたが
直前でシバが何とか目を覚まし
まぁ、このままゆっくりだな、と思っていたが
外から
ドンっと大きな音が聞こえた
『なに?』
「花火だよ」
『花火?』
「ここら辺、年越しの瞬間上がるんだよ、それでいまは年越し30分前の合図の花火」
『へええ、見える?』
「あー、ここ建物あるからあんまり見えねえんだよな」
『そっか、』
と、ちょっと残念な顔をするシバ
「見に行くか?ここから10分くらい歩いた高台のとこ、見やすいし神社も近いからそのまま初詣行ってもいいし」
『へええ、いく』
と、シバは立ち上がる
完全に起きたようだな
「ん、じゃあおしっこしてから着替えて行こ。外寒いし、冷えるから」
と、シバは自らさっさとトイレに行って
俺はシバに何着せようと服を出す
冷えるからヒートテック上下着せようと
すぐに戻ってきたシバの顔を見ると
『おしっこしてきた』
「沢山出た?」
『うん』
と、あのまま寝てたらおねしょ確定だったな、と思いながらも
シバのスウェットを脱がすと
先程シバがうとうとしている間に履かせた
パットを入れてもこもこなおねしょパンツ
このままでもいいか、と
シバにバレないうちに
さっさとヒートテックを履かせてズボンも履かせて隠す
ちょいお尻もこもこしてるけどコート着せるから大丈夫だろう
上もバンザーイと当たり前のように脱がされにきて
ヒートテックやニットを着せてコートを着せてマフラーを巻く
『あつい』
「外は寒いんだよ」
と、俺も着替えてコートを着て荷物を持つ
「ちょっと父さんたちに出ること言ってくる」
と、先にシバに靴を履かせて待たせて
リビングにいるミサと父さんに声をかける
「シバ花火見たいって言ってるから行ってくる。そのまま初詣もしてるから」
「ええ?寒いからシバくん寒くないようにしてあげないとダメだよ、お兄ちゃん」
「カイロ貼ったか?」
「貼ってねえ、持ってねえし」
と、カイロをもらって
貼るタイプはシバの腹に貼って
持つやつはとりあえず俺のポケットに突っ込んでおく
『さむ』
と、白い息を吐く
「だから外寒いって言ったろ?大丈夫?」
『大丈夫、行こ。早くしないと間に合わない』
いこ、とシバの1歩前を歩くと
シバも着いてきて高台に向かう
都心部と違ってここら辺は夜歩いてる人もすくねえな
該当もすくねえし
せっかくの高台の広場なのに
辺りは暗いからか、それともみんな家で歌番組やらお笑いやらカウントダウンを見ているのか人がいなくて
ポツンとあるベンチに並んで座る
「あと5分もないな。結構ギリギリ」
と、花火が上がるであろう方向を見ていると
『なあ、』
と、ふいにシバが口を開くから
「どうした?」
と、聞くと
『おれ、手が寒いんだけど』
と、もじっと言う
「手袋は?持ってこなかったの?」
『うん、持ってきてない』
と、袖を伸ばすシバ
あんだけ寒いって言ったのにと思いつつ
「ええ、じゃあカイロあるけど」
と、ポケットを漁ってシバに渡すと
『……おまえ、モテないの?』
と、よくわかんない事を言ってきた
「ある程度モテるけど。社長だし」
『そういう意味じゃねえもん』
と、もじ、と手を差し出してくるシバ
だからその手にカイロを乗せてやると
ふん、とそれを受け取って手ごとポケットに入れる
「シバ、もう一個」
と、ゴソゴソとポケットを漁ると
シバは反対の手を出してくるから
その手を掴んで引っ張ってやる
『…、なに、』
「1個しか持ってねえからな」
と、そのままシバと手を繋ぎポケットに入れた
『……へえ、』
と、シバは嬉しそうに少し空いていた間を詰めて俺にピッタリとくっついた
「お前こっちの方がいいだろ」
と、聞くと
シバは
ふっ、と笑った
『あたりまえじゃん』
スリスリ、とポケットの中でシバの指先を触ると
俺の手より少し冷たかったシバの手は
次第に温まって同じ体温になる
『なぁ、』
「どうした?」
『ちゅうして』
「………外だろ?」
『いいじゃん。誰もいないし……今年終わるし、』
すりすり、と肩を揺らしておねだりしてくるから
そんな可愛い事されたら俺だってキスしたくなる
「ちょっとだけな」
と、シバの顎に手をかけて
上を向かせて
少しだけど唇を触れさせる
するとその瞬間
バンと大きな音がして、
ぷちゅ、と名残惜しい音がして
唇が離れ
2人して顔を上げると
『…花火、』
「明けたな、」
と、続けて打ち上がる花火
年越しの瞬間キスしちまったじゃねえかよ……
ベタすぎるというか、
恥ずかしすぎんだろ、そんなん
と、俺は口元を覆い
さりげなくシバを見ると
シバは嬉しそうに花火を見上げていた
口空いてるし
「シバ、」
『なに?』
「あけましておめでとう」
『おめでとう、』
と、ポケットの中で握る手に少しだけ力がこめられた
『……なぁ、』
「なに?」
『もういっかい、キスして……今年最初だし、』
と、かわいい顔で俺の事を見てくるから
すぐに唇に触れ
くちゅ、とさっきより少しだけ深めにキスをするともっと、と言う目で見てくるけど
「初詣行こ」
と、シバの頭を撫で立ち上がった
いや、これ以上しちゃうと我慢できねえし、俺も
『いく、』
と、シバもすぐに立ち上がり
すりすり、とポケットの中で手を動かした
神社の方に向かうと
さっきまではあんまり人がいなかったのに
さすがにここら辺で中々大きい神社なだけあって人が多い
「シバ、甘酒とか飲む?」
『おれ、甘酒飲んだことない』
「え?そうなのか?じゃあちょっと飲んでみるか。飲めなかったら俺飲むし」
と、町内会の屋台で甘酒を買ってやりシバに渡す
「熱いからちゃんとフーフーしろよ」
『うん』
と、頷きふーふーと息を吹きかけ
ちょびっとだけ飲む
「熱い?大丈夫?」
『…あまい、』
「甘酒だからな、どう?飲める?」
うん、と頷いたから
そのまま端っこに寄って飲むことにする
『これ、お酒なの?酔う?』
「酔わねえよ、温かいからアルコール飛んでる」
『ふーん、?じゃあおねしょ大丈夫かな?全部飲んでいい?』
「いいよ。大丈夫」
と、いうと小さめの紙コップだったからシバも、すぐに飲み終わり
まぁ……アルコール関係なく最近おねしょしてるし……
御参りしよ、とちょっと混んでる列に並び順番を待つ
『なぁ、おれ財布持ってきてないからお金ちょうだい』
「おお、はい」
と、適当に財布から金を出して渡すが
『なんでお札なんだよ!ふつう5円』
「あぁ、賽銭のこと?」
『うん、投げるやつ』
なるほど、と財布を明けて小銭を見るが
「あー、あった、あった、5円」
と、5円をシバの手に奥が
「1枚しかない」
『ええ、どうすんの』
「じゃあこっちと交換。ご縁100倍の500円な」
と、5円を受け取って500円玉を渡すと
『えええ、』
と、少し不満げ
『おれこれでココア飲みたい』
「ココアなら後で買ってやるからいいじゃん」
『ええ、じゃあなげちゃう』
と、手の中で500円を回す
そして俺たちの順番が回ってきて
「シバ、二礼二拍手一礼な」
と、賽銭を投げ入れ
二礼二拍手、としてから
まぁ健康やら会社の安泰やら
シバのおねしょが治りますようにと祈る
まぁ実際はお願い事するより普段の感謝をするのが正しいらしいけど。
お参りを済ませた
「なにお願いしたの?」
『ええ、言わねえ』
「なんで?教えろよ」
『やだ。教えると叶わなくなるんだよ』
「へえ、」
『お前は?なんてお願いしたの?』
と、自分は教えてくれないくせに俺には聞いてくる
「シバのおねしょが治りますようにって」
『……そんなの神頼みなんてしなくてもすぐなおるし』
と、ふんっとそっぽを向く
シバなにお願いしたんだろ、
俺にしたらシバのおねしょ結構神頼み事案なんだけど
シバからしたらもっと重要な事があるらしい
そんな神頼みするほど叶えたいことってあんのかな
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