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第161話
「お、社長さんが来たぞ!」
「いや、その呼び方やめてくださいよ」
連れられて来た
町内会の集まりとかいうやつ
室内に入ると
お酒の匂いがして
わ、とちょっとくらっとする
中にいた人達は
みんなすべからず酔っ払いで
すでにどんちゃん騒ぎだ
「次男坊がきたぞー!」
「あ、シバくーん!」
と、みーちゃんが後ろにいる俺を見つけて手を振る
『みーちゃん、』
「お、誰だ誰だ?新入りか?」
「誰でもいいや!飲め飲め!」
と、みーちゃんの隣のおじさんに腕を引かれ
あいつはお父さんの隣で、このまえのお肉屋さんのおじさんに連れていかれていた
「ほら、飲め飲め」
「俺車なんで」
と、あいつは断っていて
おれも飲め飲めって言われたけど
『おれ、ちょっとしか飲めなくて』
「まぁ今日は祝いの席だ!ちょっとでもいいから飲め!」
と、お猪口を渡されて
底にとくとくと透明の液体を継がれる
『これ、なに?』
「日本酒よー、飲んだ事ないの?」
『ない、』
「ちょっとだけ飲んでみたら?無理だったら残していいから」
と、みーちゃんに言われ
ちょぴっと口をつけると
『んん、?』
甘いような苦いような味で
よくわからない、とくい、とお猪口の半分くらい飲むと
またふわっと甘い味にピリッとした辛さ
そしてじわ、と舌の奥の方が痺れるような感覚にアルコールの匂いが鼻から抜け
喉の奥が熱くなる
『おさけだ、』
俺が今まで飲んだお酒より
お酒って感じの味でちょっびっくりする
「うまいだろ?今日のために最高の日本酒開けたんだ!」
「齋藤さんは酒屋さんなんだよ、今日のために1番いいお酒持ってきてくれたんだって」
『そうなんだ、…、おいしいです』
と、本当はお酒の味とかよくわからないけど
美味しいお酒なんだ、とおいしいです、と伝える
けど、お猪口に残ったあと半分のんで大丈夫かな、とあいつに飲んでもらおうかな、と
ちらっとあいつの方を見るけど
なんか話してて、
今は話せないや、とちょっと待ってる
ちょっと飲んだだけなのに
なんかすこしポカポカする
「シバくんジュースの方がいいかな?オレンジジュースあるよ」
と、みーちゃんがジュースをくれて
身体が熱かったからそれをもらって飲むと
安心する味で
冷たくてスッキリしたから
もう一度お猪口をもって中味を全部飲めた
けど、しばらくして
おしっこしたくなってきちゃった、
どうしよう、とちらっとあいつを見ると
目が合って
でも、あいつは他の人にひっきりなしに話しかけられていて
ちょっとまってな、と手で静止されたから待っていた
けど、
お酒飲んだからか
なんかいつもよりおしっこがすぐに溜まるような気がして
もじ、と少しだけ
腰を揺らす
おしっこしたい、我慢できない
もう待てない、と
襖を開けて部屋の外に出た
でも、頭がふわふわするから1人でトイレになんか行きたくなくて、
あいつに連れてってもらいたいし、
もうおしっこも我慢したくないから
その場で座って
『んんッ、』
お腹の下にちょっとだけ力を入れて
ちょろっと少しだけおしっこを出す
……わかってる、お父さんと会うのだってあいつは久しぶりだし、他の人のことだって邪険にできないのだってもちろんわかってる。
そんなことして欲しくないし
しょうがないのだってわかってるけど…
おれの事ずっと構ってくれないのが嫌になって
おれ、みーちゃんしか知ってる人いないし
ちょろ、ちょろ、
じょわ、
と、すこしずつおしっこが出る量が増えているのがわかる
パンツの中だって
最初は先っぽのところが少しじわってしただけだったのに
どんどんじゅわわわ、と音をさせて温かいのが広がっていって
最後は
しゃあぁ、と少しパンツの中で音がして
『ん、ぜんぶ、でた、』
と、1人で呟いた
パットをしてたからそれが全部吸収してくれた、
おれ、わざとパンツの中におしっこした
そのままちょっとぼーっとしてたけど
寒い空気だったから
パンツの中も
ちょっとずつおしっこが冷めていって
おしりの方から冷たくなる
気持ち悪い、ともじっと腰を揺らした時だ
「シバ、ここにいたか」
と、襖が開いて
ようやく出てきたあいつ
『待て、やめた』
「待て?」
『おまえやっただろ?おまえの飼い犬に。待てって』
「…いや、ちょっと抜けらんなかったから」
『うん、わかってるから平気だけど…おれは待てできなかった』
「シバ、さびしかった?ここで何してたの?」
『…、おしっこ、してた』
「おしっこ?出ちゃった?ごめんなー、トイレ行きたかったのか」
『……、出ちゃったんじゃない』
「ん?なんで?おしっこ出ちゃったんだろ?」
『ちがう、』
と、いうおれの足の間に手を持ってきて
もにゅもにゅされるから
なかから
ぐしゅ、ぐちゅ、と濡れた音がする
「出てんじゃん」
『うん……だから、おしっこ出ちゃったんじゃない』
「は?」
『出ちゃったんじゃなくて、自分でここでおしっこした。こっちきて、ひとりになって、我慢するのやめてお腹の下のところ力入れておしっこ出した』
「…トイレどこかわかんなかったもんな」
『ちがくて…、なんかわかんないけど、わざと、した』
「シバ、ごめんなー、構ってやらなかったしな。もう帰ろうか。あんまりこっちいると帰るの遅くなっちゃうし」
『……、いいよ、お父さんと、あったの久しぶりじゃん。もっとお話してていいよ』
「いや、もういいや。みんな酔っ払いだし。また来ればいいだけの話じゃん」
『…、おれのせいでおまえががまんすんのやだけど』
「我慢なんてしてねえよ。単純にもう帰る時間だし。それに俺今は、シバよしよししたくなったの我慢してるんだけど?」
『なに、それ』
「俺に我慢させんのやなんだろ?行こ、シバ」
と、腕を引いて経たせてくれる
なんで、
そんなおれが我慢できないことばっかりいうんだろ、こいつ
「それに見合い話ばっかり持ってこられて本気でそろそろ逃げたかったしな」
『すんの、おみあい、』
こいつ、社長だしな、
やっぱり、そういうのした方がいいのかもしれないけど
おれはすっげえもやもやするし
嫌でなんか息がしにくくなるような感覚がした
「するわけねえだろ」
『…ふーん、』
「そんなんするぐらいならシバずっとよしよししてる方が楽しいし」
『…お前は、それでいいの?』
「それがいいんだよ」
と、おれの頭を撫でてくれた
1度襖を開けて
帰りますと挨拶だけして車に向かう事にした
おれが、初詣でしたお祈り
こいつに内緒にしてまで、
神頼みするしかないような事、
こいつと、ずっとこのままでいたい
っておれしかうれしくなくて
おれの事しか考えてないお祈りだけど
お祈りした事を人に言ったら叶わなくなるって
誰が言ったかわからないことだって守るくらいおれは叶えたくて
だから
初詣でしたお祈りは
こいつには絶対におしえてやらない
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