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第165話
送迎待機時間に
ホームページのリニューアルの仕事をしていて
案が2つあったから
あいつにどっちがいいか聞きに行こうとしていた
………あと、パンツ、濡れたから替えて欲しかった
なんか、ヒートテック着てなくていつもより寒いからか、我慢が出来なかった…
しかし、
会社に戻ると
あいつとヤナギさんと瀧さんが話していて
どうしよう、後にしようか
近くで待っていたが
どうやら今話しかけても大丈夫そうな内容の話をしていたから
『えっと、』
「おお、シバ」
「あ、シバくん、おかえり」
「何か合ったかな?」
と、みんなが同時に振り返って
『えっと、』
「あ、誰かに用かな?」
と、ヤナギさんに言われて
うん、と頷く
あいつに、聞きたかったけど
みんながおれのことみてくるから
いや、あいつに用事あったけど
会社だから、
ヤナギさんと瀧さんの前で
いつも呼んでるみたいに
おまえとか、飼い主とか、呼べなくて、
『……えっと、久我さんに、』
と、どうにか口にする
「………………ん?俺?」
と、あいつは
少しヤナギさんと瀧さんの顔を見た後に
自分が呼ばれた事に気付いた
「社長に用事?ごめんごめん、邪魔しちゃって」
と、ヤナギさんは言ったけど
「え?え?な、なに?なんなの?」
『えっと、このホームページのやつ、見て欲しくて。送迎中にやってたから、あと、ちょっと……』
と、パソコンを渡して見てもらう
「え?ホームページのやつ?…は??」
『えっと、……あと、』
と、パンツ、替えたいのに
ヤナギさんとか瀧さんの前でそんな事言えなくてどうしよう、とちらっと見るけど
俺の視線に気付いてくれなくて、
どうしよう
パンツ、濡れて気持ち悪いし
早く替えないとスーツに染みてしまうかもしれない
『なぁ、』
「どうした?」
と、パソコンを見ながらこたえておれの事を見てくれない
『なぁ、あの、』
「あー、社長、シバくん今送迎終わってきたばっかりでこれから休憩入ってもらうんで社長室で続き見てもらっていいですか?」
「あぁ、そっか。シバ、社長室行くぞ」
『……うん、』
と、後ろをついて
社長室に行く途中で
ようやく2人きりになれて
『なぁ、』
と、パンツ替えてって言おうと声をかけるけど
「なに?さっきの、久我さんって」
『……おまえ、久我さんだろ、』
「…そうだけど、」
と、今更そんな所を突っ込まれる
『ねえ、』
「なに?」
『……パンツ、濡れた』
「あー、なに?漏らしちゃってたか。ごめんごめん、気づかなかった」
『も、らしては、ない』
「パンツ濡れちゃっただけ?」
うん、と頷くと
『ぱんつ、』
「替えてやるから、」
と、社長室に入って
とりあえずパソコンを置いて
ベルトを外される
『いつも、もうちょっとがまんできるのに、』
「ちょっと濡れちゃってんな」
『ヒートテック、ぬいだら、寒くて、』
「あー、そうだったな、今日ヒートテック抜いじゃったから」
『太ったから、』
「だから言うほど太ってねえから大丈夫だって。あー、ちょっとズボンの染みちゃったな」
と、ズボンはソファの端っこにかけて
パンツも脱がせてくれた
「シバ、着替え、何がいい?」
『大人用のパンツ』
本当はちょっと心配だったけど、
このスーツだとそれ以外のパンツを履くともこもこしちゃうから
大人用のパンツを履きたかった
下半身がパンツだけになると
お気に入りのパンツが濡れてしまってるのが見えて少し悲しくなる
せっかくかっこいいパンツにしたのに
こんなんじゃ、いつまで経っても大人になれないんじゃないかって
この前会ったちっちゃい赤ちゃんと
同じになっちゃう、
大人になったら、
ヤナギさんみたいに
ずっとこいつの隣にいられるのに
パンツを脱がされて
タオルで濡れてしまった所を拭いてくれる
「グレーのやつしか持ってきてないけどいい?」
と、聞かれて頷くけど
グレーのパンツはあんまり好きじゃない、
青とか紺のやつの方がカッコイイから好きなのに
『…、』
「シバ、どうした?」
『……、ぐれーのやつ、すきじゃない、』
と、本当に嫌なのはそんな事じゃないのに
自分が失敗した事が嫌なのに、
「うーん、どうする?大人用のパンツ、これしか持ってないから」
駄々を捏ねているって自分でもわかってるのに、悲しくて甘やかして欲しくて甘えてしまう
『だって、』
「シバ、今すぐお着替えできたら時間あるからちょっと抱っこできるけどどうする?」
そう言われたら
だっこがしたくなって
『だっこする、』
と、いうと
脚からグレーのパンツを履かせてくれて
すぐに抱っこしてくれた
『だっこ、すき』
「うん、知ってる」
と、よしよしとおれの尻を撫でてくる
『なに、』
「いや、シバのお尻モチモチしてんなって」
『そうなのかな…もち、もち?』
なに、もちもちって
やっぱり太ったのかな、
「シバ、ちょっと立って後ろ向いて」
『やだ。まだだっこ』
だっこ、 いっぱいしたいのに
もちもちっていっぱいお尻触ってくる
おれは背中よしよしして欲しいのに、
『ちょっと、ちゃんとよしよしして。お尻ずっとさわるな、』
「あー、ごめんごめん」
ようやくおれの背中をよしよししてくれてきもちよくなる
好き、と体をすりすりさせると
「祈織、」
と、突然耳元で言われて
ぞわぞわぞわってした感じが
背中から走って、
よしよししてくれているあいつの手も
そのぞわぞわぞわを手伝う
『なまえ、』
「シバ?」
『じゃなくて、』
「祈織」
『それ、』
「祈織、かわいい」
と、よしよししてくれると
好きがどうしようもなくなって
でも、おれはなんて言えばいいかわからなくて
身体をすりすりさせることしかできなかった
『なぁ、おれ、おまえのこと、』
「なに?……祈織、お前も俺の名前呼んで」
『………くがさん、』
「…久我さんかよ、」
『だって、』
おれは、
「よし、シバ。だっこ一旦終わりにしようか。シバのズボンシミになっちゃうから乾かしてやんなきゃ」
『……やだ、』
「家帰ったらいっぱいよしよししようなー」
『えっと、くがさん、』
「なに、シバ」
もっと、よしよししたかったけど
仕事中だって事を思い出した
『おれ、さっき急いでトイレいったのに…、寒くて、いつもより我慢できなかった』
「パンツ濡れたらまた替えてやるから大丈夫だよ。あとカイロ貼っとくか。コンビニに買いに行こ」
よし、とおれを下ろすと
おしっこが染みてしまったスーツを
濡らしたタオルでトントンして
キレイにしてくれる
こいつ、おれが困ったらすぐ助けてくれんだな
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