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第169話
「…えっと、シバくん。我慢できなかったら無理しなくていいからね?」
『…んんっ、でも、っ、』
と、半泣きのシバくんを見て非情に困っているのは俺、柳瀬翔太郎、通称ヤナギだ。
なぜ、こんな事態に陥っているかというと
遡ること30分前
シバくんとコスプレの衣装管理の仕事をしていて、とりあえず在庫を確認しに倉庫に行った時だ
確認をしていたら
何やらゴトン、と変な音がドアの方でして
なんだ?と振り返って気付いた
『なんか、ドア』
「あれ?何あれ、ドアノブ」
と、何故かドアが壊れドアノブが床に落ちていた
捻って開けるタイプのドアノブだった為
中から開けることが出来ず
誰かに連絡をしようとしたのに
まさかの2人とも携帯をディスクに置いてきてしまっていた
仕方なく、倉庫で誰かが来るのを待っていた
まぁ、昼休みにシバくんいなかったら社長が探してくれるはず、と楽観的に考えながら
倉庫の前に人が通る気配を探っていたが
30分経った現在
楽観的な事は言ってられなくなっていた
閉じ込められてすぐ
シバくんがソワソワしていると思っていたが
10分くらい経ったあたりから明らかに様子がおかしい
そして15分経った頃にはシバくんはぎゅっとポケットの辺りを握っていて
これはもう、あれしかない、と血の気が引いた
「…シバくん、もしかして、体調とか」
『えっと、ちょっと…おしっ、…トイレに、』
だよねえ
やっぱりそれだよねえ
おしっこ漏れちゃいそうなんだよねえ…
あー、もう早く社長来いよお、と頭の中で思わず叫ぶ
「えっと、大丈夫?我慢できるかな?あ、今おむつとか履いてたりは?」
『……はいて、ないです、』
履いてないのかあ
最後の希望が今消え去った
シバくんはもじもじと膝を擦り合わせていて
時折中心を掠める
「えっと、とりあえず楽な姿勢で待ってて大丈夫だから」
と、ここで冒頭に戻る
シバくんはもう我慢の限界で体育座りで座り込んで自分の中心を握りこんでいた
紺色のスーツの股間部分はうっすらと色を濃く変えていて限界、というかもうほぼアウトだと言うことがわかる
ここまで来たらしかたないから
もう諦めるしかないのに
シバくんは必死にもじもじと耐えていて
見ている俺も辛くなる
『っあっ、』
というシバくんの声と
ぴちゃ、と小さな水音がして
シバくんの太ももの下に小さな水たまりができる
あぁ、出ちゃってる
『で、ちゃっ、』
「シバくん、もうしょうがないから出しちゃって大丈夫だよ?閉じ込められちゃったから仕方ないし…開いたらすぐ清掃の人も呼ぶから」
『で、でも、』
「もうお腹も辛いでしょ?大丈夫だよ、誰にも言わないし」
『や、でも、っぅ、ぁっぁっ、』
ぶんぶん、と首を振るシバくん
しかし、ぴちゃぴちゃとちいさな水の音が響いて水たまりをどんどん広げていく
1度出始めてしまったのは止まることがなく
しゅううう、という音をさせ
全て出してしまったのか
ふるっと身体を震わせるシバくん
おお、生で仕事以外のおもらし初めてみた
いや、シバくんの
モニターのやつとか、
あ、あとおむつの中に漏らしちゃったのは見たことあるけど…
なんていうか、リアルに服びしょびしょにしておもらししちゃう姿って、初めて見た
『っんん、でちゃ、っ、た、』
「あー、えっと…タオルとか…ないよねえ、…冷えちゃうかな、どうしよ」
『おれ、お、しっこ、…がまんできなくて、』
「えっと、しょうがないよ、閉じ込められちゃったし」
と、どうしようもなく励ますけど
くすんくすん、とシバくんは泣き始めてしまって途方に暮れる
「なんか拭くものないかなあ、」
と、ごそごそ倉庫を見るが
コスプレ倉庫にはそういうものも無くて
俺も泣きたくなってしまう
その時だ
廊下の方から足音がして
「あ、人が!」
通る、そうだ、このタイミングでドアを叩けば閉じ込められていることに気づいて開けてもらえるかも、とドアを叩こうとした
しかし、
いや、誰だかわからないのに呼ぶのはどうなのだろうか
シバくんおもらししちゃってるし…
こんな姿、シバくんだって社長以外に見られたくないだろう
いや、でもこのチャンス逃したら……
「シバくん、ちょっと隠れててね」
と、シバくんの下半身にジャケットを掛けて隠して
『え?』
ドンドンっとドアを内側から叩く
「すみませーん、誰かー!」
と、声をかけると
足音が近付いてきて部屋の前で止まるのがわかる
そして、
ガチャり、と外側からドアが開くと
「なに?なにやってんの?」
「しゃ、社長」
と、ドアを開けたのは
どうやらシバくんの行方を探しに来た社長らしくてため息が出た
「なにやってんの…?って後ろいんのシバ?こんなところに居たか」
『……ぁ、えっと、』
「ドア壊れて閉じ込められちゃって…」
「あぁ、本当だ、壊れちまってんな。どうした、これ」
「わかんないっす。そんなことより、」
と、少し社長に近づき
こそ、と小声で伝える
「シバくん、おもらししちゃって、」
「おお、迷惑かけたな。とりあえずヤナギは清掃の人呼んどいて。俺はシバ回収して、多分今日は帰るわ」
「…りょうかいっすー、」
と、安心のため息が出た
社長はドアを閉まらないように固定し、
「シバ、大変だったな」
と、俺のジャケットを取ってシバくんの手を引いて立たせて上げていた
『おれ、おしっこ、もれちゃった、』
「俺が早く来てやれば良かったな、ごめんなー、シバ。キレイにしに行こ」
と、社長は自分が濡れるのも気にせずシバくんを抱き上げて
シバくんはぐすぐす泣きながら
社長にぴったりくっついて社長の胸に顔を埋めていた
さて、邪魔者はとっとと退散して清掃の人でも呼んでこようかな
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