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嫉妬

「ただいま・・っと。」 いつもの通り 店のドアを開け 中に入ると カウンターに座るお客さん全員の視線が 向けられ ギョッと涼介は固まった。 毎度の事だけど。 やっぱ慣れない。 「おかえり。」 カウンターの中から新がニコッと微笑む。 その優しい笑みが気に入らなかったのか ジロジロと女性客三名が俺を値踏みすると 興味なさげにプイっと視線を外し 新へのアピールを再開した。 「ねえ。マスター。だから今度一緒に行こうよぉ。 すごく美味しいんだって。その店。」 「好きだって言ってたから 調べたんだよ。 ねー。マミ。」 「そうそう。ワインもいいのがあるんですって。 行きましょうよ。ね!」 ああ。 また誘われてんのか。 これもよく見る光景。。 なかなか落ちない敵に一旦共闘を組み プライベートで接点を作ってから 骨肉の争いが 始まる・・みたいな。 まあね。 新はとにかくモテる。 男も女も。 ゲイバレしてるって言っても 元々はバイだった みたいだし。隠してないってだけで 実際把握してるのは一部の古参の常連だけ。 少し長めの黒髪に 黒縁の眼鏡をかけていて 身なりには意外と無頓着。 だけど シャープな顎筋に パーツも綺麗に整っていて ちゃんとすれば芸能人でも通るくらいの いわゆるイケメン。 背も高いし 足も長い。 モテない訳が無いんですよ。 そりゃそうだ。 自分でもわかんないしなぁ。。 なんで新が俺みたいなのと一緒に居てくれるのか。

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