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「で。ご希望は?」
指を口から出して 指先をカリッと噛む。
涼は顔を更に赤らめながら 眉間に皺を寄せ
照れと欲の狭間でしばし悩むと
「・・全部。」
小さい声でそう言った。
はい。
「かしこまりました。」
ちゃんと甘やかして 嫌な事吹き飛ばしてあげる。
泣きたいなら快感に耐えきれないって
泣かせてあげる。
何だったか忘れるくらい。
いっぱい泣かせてあげるからね。
涼の濡れた指を拭き 煮物を冷蔵庫に仕舞うと
片付けは明日にしてカウンターを出る。
新は俯く涼介をひょいと抱き上げると
店の電気を消して 階段を上がっていった。
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