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ランチは子連れのお客さんも来るし ご近所さんやリーマンもと客層が幅広い。 スパイスはある程度本格的に効かせつつ 家カレーに近い親しみやすさを追求した味にした所 結構どの世代でも喜んでくれるようになった。 前はそんな事考えもしなかったけどね。 わーい!とガキの様に喜びながら クルクルとフォークを動かし 口に入れる。 ん。と涼は目を見開いた。 「あれ。ちょっと変えた?」 ・・流石に鋭いな。 涼は自分で全く気づいていないけど味覚が敏感。 「うん。少しスパイスの配合と ソースのベースに使う野菜の種類をね。」 あー。やっぱり。とうんうん頷きながら 「前のでもすげえ旨かったのに もっと旨い。」 パクパクと勢いよく食べ進める。 「新は偉いよなぁ。毎日やってる事でも こうやって試行錯誤してさ。俺なんかと大違い。」 何か思い出したのか はぁ。とため息をついた。 「そうかな。涼の方が凄いと思うけど。」 カウンターに肘をつき 反対の手を伸ばして ツンとおでこを突く。 「涼が直すべきは 俺なんかって思うとこかな。 全然そんな事無いのに。俺が真面目に仕事に 取り組む様になったのだって涼のおかげなんだよ。」 涼が普段どう仕事をしているか。 話を聞く限りだったとしても 努力を惜しまず 頑張っているのは わかっているつもり。 そんな涼と出会ってから 俺の世界はガラッと変わった。 涼は へ? とフォークを持ったまま 首を傾げる。 最近 ロクな事がなく いつもより 更にネガティブ気味だけど。 涼は本来そうじゃない。 涼を好きになった時の事を思い返した。

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